おまけ①19-20話のシルク目線
少し早く起きて、準備をする。
少し早く教室へ行き、自習をする。
これが僕の『ホートラン学園』での日課だ。
今日も教室で自習をしていると、ルナちゃんの起きる声が聞こえた。
僕は耳がとても良いから、広範囲の声を拾うことができる。
だから、毎日騒がしい日々を送っているんだけど、好きな子の声を逃さなくて良いのは、ありがたい。
耳に意識を集中しない限り、そこまで声は大きくないよ。
でもルナちゃん、なんかちょっと元気ないかも。
って、こんな盗み聞きみたいなの、よくないよね…
「ねぇ、ルナ・ピラフィルさんだよね?俺、同じ1年のクララ・ガトラー。よろしく!」
ん?
男…?
僕は思わず、耳をピンと伸ばしてしまう。
「そうだよ。クララくんね、よろしく。」
え、待って…
僕は思わず教室を飛び出して、ルナちゃんの方へ向かう。
「ルナちゃんって、『ミンフィーユ王国』の子だよね?俺も同じだよ。だから、親近感湧いちゃって、声かけちゃった。」
その間も会話は聞こえており、どんどん大きくなっていく。
ダメだ…!
2人の姿が見えたところで息を整える。
平然をよそおって近づく。
「それでね、1個聞きたいことあってさ…」
「ルナちゃん、おはよう。」
男子生徒の声をかき消すように、挨拶する。
ごめんよ。
ルナちゃんだけは渡せないんだ。
「あぁ、シルク先輩。おはようございます。」
「うわ!シルク先輩だぁ…おはようございます!」
男子生徒も丁寧に挨拶してくれる。
「おはよう。君は、ルナちゃんの何かな?」
大人気もなく、聞いてしまう。
1つしか歳は変わらないし、これくらい良いよね?
「えっと、友達です!」
ちょっと言い淀んだな…
念の為、警戒しておくか。
「そっか。ルナちゃん、借りてもいいかな?」
「どうぞ!」
意外と素直に応じてくれる。
「ありがとう。」
とりあえず、2人きりになれそうなところに連れていく。
僕専用の生徒会室だ。
無駄に敷地が広いから、生徒会棟が建てられており、個別の部屋も用意されている。
ここなら、誰にも邪魔されない。
「ルナちゃん、ここ座っていいよ。」
ルナちゃんをソファーに座らせて、僕も隣に座る。
今までで1番近い距離にドキドキする。
もうちょっと欲張ってもいいよね?
僕は、ルナちゃんの肩にもたれかかる。
ルナちゃんの肩がビクッとした。
それがまたかわいい。
「ルナちゃんが知らない男と一緒にいる声がして、焦っちゃった。なんでか、わかる?」
ルナちゃんの肩から伝わる熱が心地よい。
「ルナちゃんのことが、大切だからだよ。」
ちょっとキザすぎたかな?
こんなセリフ初めてだから、照れる…
ルナちゃんの顔、見たくなってきちゃった。
僕は立ち上がって、ルナちゃんの顔を覗き込む。
「意味わかってる?」
ルナちゃんは無反応のまま固まってる。
本当にかわいいな。
「あはは、こんなこと言われても困っちゃうよね。さ、授業に遅れないように教室行こうか。」
2人でルナちゃんの教室がある1年棟に向かう。
講堂のあたりで、ルナちゃんが急に立ち止まる。
「もう迷子にならないので、大丈夫です。」
あれ?
「心配だからじゃなくて、一緒にいたいからだよ。」
もしかして、僕の気持ちが伝わっていない?
本当に、おもしろくて目が離せないな。
この子は。
8話でスティ目線を書いたのが楽しかったので、他の子も書きたいな~と思って、シルク目線書いてみました!
これから、キリが良い話数の間に「おまけ」としてたまに挟んでいきます。




