208話
翌朝。
ツバサは女子寮の前で号泣していた。
「どうしたの?誰に何されたの?」
私は心配で駆け寄る。
「るなぁ…やっぱり、るいとでーととかいやだよ…」
おい、そんなんで朝から泣くな。
「ツバサも決めたことでしょ?」
「そうだけど…でも、やだぁ…」
え、ばぶい…
「とりあえず、泣き止も?おいで。」
「るなぁ…」
ツバサはヨタヨタと抱きついてきた。
なんか、転んだ後の3歳児みたい…
「授業出られそう?」
「むり…」
そんな即答しないでよ。
昨日の決意はなんだったの?
「我慢できるかっこいい人は、どこいったの?」
「がまんしない…かわいくていいもん…」
あぁ、恐れていたことが起きてしまった…
かわいいを自覚するのが、ちょっと早すぎたよ。
「今のツバサ、かわいい通り越してばぶだよ。」
「ばぶでいいもん…るながるいとでーとしないっていうまで、はなさない…」
それとこれとは別だろ。
「離れないと、私が授業に出られないでしょ?」
「じゃあ、おれのうでのなかにとじこめておく。」
ツバサは少し力を入れて抱きしめる。
おい、離れろ。
「ツバサ、何がそんなに嫌なの?」
「るながるいにとられちゃう…」
「ツバサと別れる気ないって、何回も言ってるでしょ?」
「でも…まんがいちがあるって…」
ねぇよ。
「大丈夫だから。命かけてもいいよ。」
「るながしんだら、おれもしぬ…」
そういうことじゃないような…
「じゃあ、私がルイと婚約することになったら、また一緒に死の?」
「わかった…」
ツバサは納得したようで、涙がとまった。
なんか変な約束しちゃったな…
まぁ、それで泣き止むならいっか。
「ほら、校舎行って、授業受けよ?」
「るなからはなれたくない…」
ツバサは私の手をギュッと握りしめる。
「わかった。じゃあ、私の教室で一緒に授業受けよ?」
出ないよりはマシだろ。
「わかった…」
ツバサは素直に登校してくれた。
教室につき、一緒に入る。
で、私の席の横にちょこんと体育座りする。
涙はとまっているみたいだったけど、まだ涙目だった。
「おはよう…って、なんでツバサがいるんだ?もうすぐ始まる時間だぞ?」
ルイが挨拶しながら近づいてきて、ツバサに気づく。
「今日はこのまま。」
「なんでだよ。」
「朝から大号泣。で、『ルナと離れたくない。』って駄々こねて、これで落ち着いた。」
「そうか…今日、無理そうか?」
ルイは不安そうな顔をした。
「今日が無理で明日に引き伸ばしても、またこうなるから、早いうちにやっちゃお。」
「わかった。楽しみにしてるな。」
ルイは嬉しそうに笑った。
あぁ、かっこいい…
ツバサ、これをかっこいいって言うんだよ。




