204話
休み時間。
ツバサがやってきて、私の机の脇にちょこんと座る。
「どうしたの?」
いつもはだいたい、前に座るか、私をお姫様抱っこして自分の膝に座らせるかの2択だった。
「ルナが撫でやすいようにしゃがんでみた。」
あぁ、撫でてほしいのか…
私はケモ耳の間を撫でてあげる。
ツバサはふにゃあと嬉しそうな顔をした。
顔が溶けてるぞ…
「なぁ、ツバサ。」
隣の席のルイがツバサに話しかける。
「なに?」
ツバサは溶けた顔のまま返事する。
「ルナのこと、借りていいか?」
「ダメ!」
急に真顔になって、大声で拒絶する。
「ちゃんと理由もあるから…」
ルイは呆れた顔をしている。
「どうしたの?」
「あぁ。今日から俺たち、10日当番なんだよ。」
10日当番?
「なにそれ?」
ツバサが不思議そうにルイに尋ねる。
「え…なんで2年生なのに知らないんだよ。」
ルイは軽く引いている。
たしかに、2年生のツバサが知らないのは変だよ。
「だって、俺ほとんど校舎に来なかったから…」
ツバサはシュンとしている。
なんでやねん。
「最初は授業もちゃんと受けてたんだよ?でも、途中から必要ないなって思って、授業中もルナ探しを始めたんだ。」
あぁ、私を探してたから、ほとんど通っていないのか…
学園にただ住んでるだけの人みたいな感じなのね。
「じゃあ、ツバサにも説明してやるな。」
ルイは優しい声でツバサをなだめている。
「ありがとう…」
ツバサも素直にお礼を伝える。
「10日当番っていうのは、名前通り10日間先生の手伝いをすることだ。」
10日間もやるの…
「手伝いってなにするの?」
ツバサがルイに尋ねる。
「それは、その時々だな。プリントの配布とか、プリントの回収とか、掃除とか?」
雑用を生徒に押し付けてるだけか…
王族と公爵の子もやってるの?
って聞こうと思ったけど、ルイがやるんだから、やるに決まってるか。
「それで、私は何をすればいいの?」
「このプリントを配る。で、休み時間の間に書かせて回収する。」
わぁ、めんどくさそう…
「プリントの配布はもう終わってる。あとは、書いたのを回収して、名簿に丸付けるだけ。」
それでもめんどくさいよ…
「ルイが全部やっちゃダメなの?」
ツバサが不思議そうにしている。
「一応、俺ら2人が当番だから…」
全部押し付けるのはサイテーだもんね。
「わかった。回収してくればいいんだね?」
「おう!頼んだぞ。」
私は前の席から順番に回収しようと、歩き出す。
「ルナ、俺も行く。」
ツバサが楽しそうについてきた。




