203話
「ツバサ、ただいま。」
私たちは、待ち合わせの講堂までやってきた。
ツバサとスティは先回りしていたみたいで、待っててくれた。
「ルナ、おかえり。」
ツバサは私を少し強めに抱きしめる。
「はぁ、これがあと2回あるのか…」
ツバサは悲しそうにしている。
「大丈夫だよ。またこうやって帰ってくるから。」
「うん。絶対だよ?信じて待ってるから。」
ツバサはさっきより強めに抱きしめる。
「ツバサ、苦しい。」
「ごめん…あ、俺かっこいい?」
ん?
急になんだ?
「我慢できたよ!かっこいい?」
あぁ、「我慢できる人=かっこいい人」のやつね。
「かっこいいよ。」
「やったぁ。」
ツバサはふにゃあって笑った。
やっぱり、ツバサはかわいいよ…
正直に教えてあげようかな?
あぁでも、この企画終わってからにしよ。
自分がかわいいことに気づいて、我慢しなくなったら困るもんな。
「ルナ?」
ツバサが不思議そうな顔で覗き込んできた。
「どうした?」
「撫でてほしい!」
「いいよ。」
私はツバサの頭を撫でる。
ツバサはニコニコと嬉しそうだった。
翌朝。
ツバサは女子生徒たちに囲まれていた。
え、なんで?
よくよく見ると、女子生徒たちが勝手に話しかけているだけで、ツバサは全員無視しているようだった。
しかも、すごく不機嫌そう…
話しかけにくいな…
私が玄関からツバサを見ていると、ツバサが気づいてくれた。
「あ、ルナ!おはよう!」
女子生徒の輪の中心で、嬉しそうにぴょんぴょん跳ねながら挨拶してくれた。
「ちょ、邪魔。早くどいて。」
女子生徒たちの間をすり抜けて、私のところまで駆け寄ってきた。
「はぁ、ルナだ…安心する。」
ツバサは嬉しそうに抱きしめてきた。
「ツバサ、おはよう。何があったの?」
「知らない。いつも通りルナを待ってたら、囲まれた。」
なんか怖いね…
「あの、なんででしょうか?」
私はツバサ越しに女子生徒たちに話しかける。
「ティートル公爵様が婚約破棄したって噂があったのよ。」
女子生徒の1人が教えてくれた。
え、なんでそんな噂が?
「昨日、アルス様と楽しそうにデートしているあなたを見たって人がたくさんいて…それで、ティートル公爵様から婚約破棄されて、アルス様と婚約し直したんじゃないかって…」
別の女子生徒が丁寧に説明してくれた。
あぁ、なるほど…
昨日の1日限定デートを見た子が勘違いしたのか…
「俺は未来永劫、ルナと一緒です!絶対に手放しません!」
ツバサが女子生徒たちに向かって、宣言する。
「素敵です!」
「愛されてて、羨ましいわ。」
女子生徒たちは拍手をして、ツバサを称えている。
なぜに?
「さ、ルナ。校舎に行こ?」
ツバサは見たことないようなキメ顔をして、私の手をとって歩き出す。
変なツバサ…
まぁ、いつも変だけど。




