202話
私たちは、広場にやってきた。
「はい、ここ座って。」
ベンチに自分のハンカチを引いてくれた。
「ありがとうございます…」
こういうのされたことないから、ちょっと緊張する。
「さて、ルナちゃんを落とせばいいんだよね?」
アルスは楽しそうにしている。
「スティが悲しむようなことはしないでくださいよ?」
「大丈夫だよ。ほら、あそこ見て。」
アルスが指さした方を見ると、ツバサとスティが草むらに隠れているのが見えた。
「やっぱり、心配なのか…」
「そりゃあ、そうでしょ?僕は本気で落としにいかないから、あれも必要ないけど…他の2人は本気だからね。万が一ってこともあるじゃない?」
たしかに…
「それに、とうちょうき?ってので、こっちの声も聞かれてるんでしょ?」
もちろん、首輪は付けっぱなし。
「ちょっと色々やってみたいことがあってさ…」
アルスは紙とペンを取り出して、何か書いている。
『ルナちゃんのセリフ→アルス先輩、好きです。』
ん?
アルスはニコニコしている。
『1回、言ってみてよ。』
はぁ…
「アルス先輩、好きです。」
その瞬間、草むらが大きく揺れた。
アルス先輩は楽しそうに笑っている。
『次これ。ツバサとは別れて、アルス先輩と婚約します。』
まだやるの?
「ツバサとは別れて、アルス先輩と婚約します。」
草むらから2人が顔を出し、泣きそうにしていた。
アルス先輩は、大爆笑。
性格わる…
「いいね。楽しい!」
「あんまり、いじめないでくださいよ…」
「ごめんね。」
アルスは深呼吸してから真剣な顔をし、私の頬に触れる。
「ルナちゃん、好きだよ。」
今度は、アルスの番か…
「なんで、そんなにかわいいの?」
ん?
「ルナちゃんと出会えて、本当に幸せだよ。」
なんで近づいてくるの!?
てか、乙女ゲームボイス、大発揮しないでよ…
「ルナちゃんは?」
「し、幸せです?」
「あはは。似合わない!」
アルスはまた笑いだした。
「悪かったですね!」
「てか、ルナちゃん、かたすぎる…もうちょっと、リラックスしてよ。」
アルスはちょっと不満そうにしている。
「ごめんなさいね。こういうのと無縁だったので。」
「まぁ、そういうところが好きなんだけどね。」
アルスは楽しそうにしている。
ムカつく…
好きな声だからって、ドキドキしてる私がバカみたいじゃん!
ん、好きな声…
あ、そういえば、アルスとシューニルさんって同じ声優さんだったかも!
「アルス先輩、それ貸してください。」
「ん?いいよ。」
私はアルスから紙とペンを借りて、シューニルさんの好きなセリフを書き出す。
「これ、読んでください。」
「えぇ、ゴホン。」
アルスは軽く咳払いをする。
「君は僕のだから。どこにも行かないで。」
「もっと愛おしそうに!」
「君は僕のだから。」
「もっと独占欲丸出して!」
「君は僕のだから。」
「ちょっと切なそうに!」
「君は僕のだから。どこにも行かないで。」
サイコー…
「これなに?」
「次、これお願いします。」
「えぇ…君のこと、いつまでも追いかけ続けるね。」
あぁ、良い!
「次!」
「まだやるの?」
「はい!」
アルスは嫌そうだったけど、何個も付き合ってくれた。
「満足した?」
「はい!めちゃくちゃ楽しかったです!」
「そう。それなら、いいや。」
アルスは満足そうに笑った。
これにて、私たちの1日限定デートは終了。




