199話
ツバサの部屋に到着し、クッションに座る。
こんなのあったっけ?
「今日もショコラティーにしようかなって思ったんだけど、お菓子がチョコだったから、ホットミルクにしてみた。」
ツバサがお茶とお菓子を持ってきてくれた。
「ありがとう。」
「そのクッション、どう?座り心地良い?」
ツバサは、ウキウキしながら尋ねてきた。
「うん。こんなのあったっけ?」
「良かった…昨日、買ってきたんだ。」
ん?
昨日?
昨日って、勉強会して、ツバサの部屋で少し寝た昨日?
「ルナが床に寝転んでも痛くないように、急いで買ってきたの。いいの見つかって良かった。」
私が不思議そうにしていると、説明してくれた。
けど、意味がわからない。
だって、門限まであと30分しかなかったんだよ?
「門限には間に合ったの?」
「え、間に合うわけないじゃん。」
ですよね…
「ちゃんと守らないと、ダメでしょ。」
「えぇ、でも破っても怒られたことないし、門限よりルナの身体の方が大事だし…」
ツバサは私に怒られて、悲しそうにしている。
てか、破っても怒られたことない?
「バレてないだけじゃなくて?」
「多分、そう。」
はぁ…
よじ登って、部屋まで行ってるな。
門限を過ぎると、玄関の扉には鍵がかけられる。
だけど、ツバサは先祖返りがいつでもできる特殊な子だ。
オオカミの姿になって、自分の部屋まで上がることが容易にできてしまう。
「先祖返りできるのは、機密情報じゃなかったっけ?」
「はい、そうです。ごめんなさい。」
ツバサは床に正座し、シュンと縮こまっている。
え、かわいいかも…
いや、ここは厳しくいかないと。
「私のことを気遣ってくれたのは嬉しいけど、これからは門限をちゃんと守ること。わかった?」
「はい…」
ツバサは悲しそうにしている。
あぁ、なんか泣きそうかも…
「破ったときの罰、決めておこうか。」
私はツバサに近寄り、頭を撫でる。
「俺、もう破らないよ?」
ほんとかな…
「じゃあ、重いやつにしようか。」
「うん。」
何がいいかな…
「3日間、話さないとか?」
やっぱり、これが1番重いよね。
「やだ!絶対にやだ!」
ツバサは涙目になっている。
「破らないんでしょ?」
「うん。絶対に破らない。」
よし、良い子。
「ツバサ。」
「ん?」
「おいで。」
私はクッションに座って、自分の膝を指さす。
「ルナ!」
ツバサは嬉しそうに近寄り、膝に寝転ぶ。
「えへへ、ルナの方から甘えてくれた。」
ツバサはふにゃあと笑った。
私は頭を撫でる。
「明日から、我慢できそう?」
「うわ、最悪なこと思い出したじゃん。やめてよ…」
ツバサはすごく嫌そうな顔をした。
「我慢できるかっこいい人、どこいった?」
「はい!ここにいます。」
ツバサは元気よく返事をする。
「頑張ってね。」
「はーい…」




