表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/636

0話

遡ること1年前。


私は、頭の痛みで起き上がる。

自分の部屋のベッドの横で、美形男子が心配そうにしていた。

「ルナ、大丈夫?どこも痛くない?階段から転げ落ちたんだよ。幸いなことにケガはないって。もうお転婆なことはしちゃダメだよ。」

んー、美形男子からのお説教いいな。

優しい口調だから怖くないし、微笑みが美しい。

「ありがとうございます。気をつけます。」

美形男子は変わらず、優しい顔でニコニコしている。

「今日はゆっくり過ごしな。」

「はい。」

お言葉に甘えて、もう少し眠りにつくことにした。


階段から落ちて頭を強く打ったからなのか、私は自分の前世について思い出した。

前世の私は、格闘ゲームが大好きな普通の高校生だった。

親友ともよく対戦していたが、あまりに弱すぎてつまらなかった。

ある日、強くなるようお願いをしてみたら、交換条件として親友の好きな乙女ゲーム『甘いスイーツと共に』をクリアすることを言い渡された。

仕方がなくプレイしてみるも、顔のいい男たちにちやほやされるだけで飽き飽きしていた。

しかし、攻略対象の1人であるルキと出会い、私の世界が変わった。

最初は、誰にでも愛嬌をふりまくチャラ男くらいにしか思っていなかった。

ストーリーを進めていくうちに、ルキの兄に対する葛藤を知り、かわいく思えてきたのだ。

そして、ラスト!

ルキは私のことを大好きすぎるが故に、誰にもとられないよう監禁してきたのだ。

なんて愛情深い人なのだろうと、感動したのを今でも覚えている。

親友にプレイ経過としてルキのことを報告したが、それはBAD ENDだったようで、本当のHAPPY ENDもプレイしてみたが、そっちのルキはあまり好きになれなかった。

そこから、私はヤンデレ好きを自覚し、親友からヤンデレが登場する乙女ゲームを借りてはプレイし続けた。

最期は、初めてできた彼氏が「僕たちの愛は永遠だよね?」とヤンデレ化し、殺されてしまった。


そして今に至る。

今の私は、ルナ・ピラフィル。

このピラフィル伯爵家の愛娘だ。

先程の美形男子は、私の2歳年上の兄のソル。

どこかの乙女ゲームの攻略対象でもおかしくないが、私がプレイした乙女ゲームにはいなかったはず。

もちろん、私も自分のことを「ヒロインかな?」と期待したが、見たことがない。

もしかしたら、話題の悪役令嬢転生かも?

とりあえず、情報を集めたい。


翌日。

侍女のアリーナを連れて街へ出かけた。

中世ローマのような綺麗な街並みにうっとりしていると、見覚えのある教会があった。

「アリーナ、あれはなに?」

私は、教会を指さしてアリーナに聞いた。

「あれは『祈りの塔』と言って、大事なお願いごとを叶えてくれる場所ですよ。」

祈りの塔。

『甘いスイーツと共に』のHAPPY ENDで攻略対象からプロポーズされる場所だ。

やっぱり、ここは乙女ゲームの世界なんだ!!

しかも、大好きな『甘いスイーツと共に』の世界。

ということは、大好きなルキに会えるってこと!?

どうしよう、急に緊張してきた。

だって、ルキに会えるかもしれないのよ。

監禁してもらえるかもしれないし、その後の生活とか、ストーリーのつなぎのところとか、私の知らないルキにも会えるかもしれない。

「ルナ様、少し休憩しましょうか?」

興奮している私を、アリーナが心配そうに見ている。

「大丈夫。そろそろ家に帰りましょ。」

帰って作戦を練らなくちゃ。

私たちは、足早に家に帰った。


その日の夜。

私は、ルキルートに入るための計画を練っていた。

ルキ以外なんてありえない。

他の攻略対象なんて絶対に嫌。

てか、無理!

あと、BAD ENDにも進まないといけないんだよね。

ゲームだと選択肢があるから簡単だけど、今はこれが現実。

当たり前だけど、選択肢なんてモノは存在しない。

ストーリーを丸暗記しているわけでもないから、ルキルートに入りつつ、BAD ENDに進まないといけない現実が、結構ハードモードだった。

とりあえず、学園に入学して兄に接触するのが早いかな。

来年、15歳の春に『セントラル学園』に入学し、ストーリーが始まる。

そこで、ルキの兄で攻略対象の1人であるルイと出会う。

ルイはこの『ミンフィーユ王国』の第一王子なのだ。

つまり、ルキは第二王子ね。

ルイの好感度を少しあげると王家主催のパーティーに招待され、ルキと出会うことができる。

ルキの好感度を他の攻略対象より上げてから、ルート分岐まで進まないといけない。

さらにBAD ENDに進むためには、上げた好感度を落とさないといけない。

…とりあえず、今できることはないかな?

あと、私の顔が『甘いスイーツと共に』のヒロイン顔じゃないのよね。

だからといって、悪役令嬢でもないし。

そもそも、ヒロインは一人っ子だったはず。

だから、ソルお兄様だって見たことないし。

んー、その辺のことも考えなくちゃね。

「ふわぁ。」

夜も深くなって、眠くなってきた。

まぁ、後は明日考えればいっか。


翌日。

家族で朝食を食べていると、お父様が驚くことを言い出した。

「ルナももうすぐ『ホートラン学園』に入学するのか。月日が経つのは早いね。」

ん?

今なんて言った?

「お父様、今なんて仰いましたか?」

驚きつつ、お父様に尋ねる。

「ルナも『ホートラン学園』に入学する時期かと思っただけだぞ?」

ホートラン学園?

なにそれ?

「『セントラル学園』の間違いでなくて?」

「セントラル学園?それはどこの学園なんだ?」

嘘でしょ。

ここは『甘いスイーツと共に』の世界じゃないの?

「ここは、『ミンフィーユ王国』で間違いありませんか?」

「ああ、間違いない。ルナはさっきから何を言っているんだ?」

お父様だけでなく、みんなが不思議そうにしている。

「ルナはきっと、階段から落ちたことをきっかけに記憶がおかしくなったのではないでしょうか?」

ソルお兄様が助け船をだしてくれた。

「ルナちゃん、大丈夫?今日はゆっくりお休みなさい。」

お母様も心配そうにしている。

「はい。身体は元気なのですが、今日はゆっくりしようと思います。」

大変だ。

色々と設定が狂っているみたい。


部屋に戻り、机にむかう。

おかしい。

なんか変だとは思っていたけど、やっぱりおかしい。

私は誰なの。

あと、セントラル学園はどこへ行ったの。

大きな不安に押しつぶされそうになる。

とりあえず、今わかっていることを整理しよう。

私は、ルナ・ピラフィル14歳。

ピラフィル伯爵家の娘で、父、母、兄のソル、複数の使用人と『ミンフィーユ王国』の外れで暮らしている。

来年の春、『ホートラン学園』に入学することが決まっている。

制服も届いており、入寮手続きも終わっていて、荷造りが全く進んでいないことをのぞけば順調に進んでいる。

紙に書きながら整理してみるが、自分が何者なのかは理解できているのでは?

『甘いスイーツと共に』の世界と少し違うだけで、不安になるのは違う。

新しい乙女ゲームをリアルで体験していると思えば、良いのでは?


半年後。

ついに明日は『ホートラン学園』の入学式だ。

荷造りもソルお兄様やアリーナが手伝ってくれたおかげで、無事に終わった。

この日のためにしたことと言えば、特にない。

結局、この世界が『甘いスイーツと共に』なのか、そうじゃないのかさえもよくわからなかった。

まぁ、学園に行けばなんとかなる理論で頑張るぞー!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ