190話
「他に質問ある?なかったら、今日はもう終わりね。」
ツバサが先生たちに確認をする。
「あの…」
獣人の先生が恐る恐る手を挙げた。
「どうぞ。」
「はい。先程、『地図を王国に提出する。』と仰っていましたが、それだと『ティートル王国』の建国が進んでしまうのではないでしょうか?」
なんで?
「うわ、そうじゃん!先生、ありがとうございます!この地図は、ここにいる人だけの秘密でお願いします。」
ツバサは先生たちにお願いする。
なんで、建国しちゃうの?
「この間『領土問題で建国はなくなった。』って、説明したでしょ。この正確な地図だと、余ってる領土が10万平方キロメートルあることになるんだ。そうすると、王国としては少し小さいけど、十分建国できるレベルに達しちゃうの。」
私が不思議そうな顔をしていると、ツバサが説明してくれた。
そんなに誤差あったんだ…
ガバガバ測定じゃん。
「地形の説明は、領土と関係ないから大丈夫なはずなので、行ってみたらおもしろいと思います。じゃあ、終わり!」
こうして、勉強会が終了した。
「ツバサ、お疲れ様。」
私は片付けをしているツバサに向けて、話しかける。
「ありがとう!」
ツバサは片付けの手を止めて、優しく抱きしめてきた。
「俺、準備いっぱい頑張ったよ。褒めて!」
「偉いぞー。」
私はツバサの頭をわしゃわしゃする。
「えへへ。」
ツバサは嬉しそうにしている。
「あの、ティートル公爵様…」
ツバサの真ん前に座っていた先生が、話しかけてきた。
「なに?今忙しいんだけど。」
ツバサは、キレ気味に返事する。
私もわしゃわしゃする手を止める。
「今日、とても勉強になりました。その、定期開催とかって…」
「するわけないじゃん。それだけなら、邪魔しないでくれる?」
ツバサは冷たく言い放って、私の方を見る。
「もっと撫でてほしいな。」
甘えた声でお願いしてくる。
ちょっと気まずいんですけど…
とりあえず、さっきみたいにわしゃわしゃする。
ツバサはまた嬉しそうな顔をした。
先生の方を横目でチラッと見ると、悲しそうな顔をしていた。
なんかごめんね。
私、今日来ない方がよかったかな?
「ルナ?」
「なに?」
「今日、楽しかった?わかりやすかった?」
ツバサが不安そうに尋ねてきた。
「めちゃくちゃわかりやすかったし、楽しかったよ。まさか、授業で見せてもらった地図が正確じゃないなんて、思わなかったもん。」
「よかったぁ。次も頑張るね。」
ツバサはボサボサの頭でふにゃあと笑った。
私は髪を整えてあげる。
「はい、かっこいいよ。」
「えへへ、ありがとう…」
ツバサは少し顔を赤くして照れた。
照れポイントがよくわかんないんだよね。
勉強会中にもかっこいいって褒めたはずなのに、なんで今は照れるんだ?




