189話
ツバサは膝から私を降ろして、椅子に座らせる。
「ルナ、ごめんね。地図と教科書を照らし合わせながら説明するから、立たなといけないんだ…ちょっと待っててね。」
ツバサは寂しそうな顔をしている。
私は別に構わないんだが…
そして、大きな画用紙と教科書を取り出して、準備する。
「はい、じゃあ地形について説明していきます。これは、俺が実際に行ってみてつくった地図ね。」
すげぇ…
日本地図を歩いてつくった人みたい。
「さすがティートル公爵様だ…」
先生たちは呆気にとられていた。
まぁ、結構広い王国3つを実際に行ってみるって、かなり大変だもんな。
しかも、16歳の子どもがってなると信じられないよな。
「まず、この学園は地図で言うと、この位置にあります。教科書だと、この辺ってなってるけど、実際はもうちょっと東側にありました。」
なんやねん。
『もうちょっと東側にありました。』って。
「ルナのことを探してるとき、最初は地図を見てたんだけど、ちょっと違うことに気づいて実際に測ってみたんだ。」
私が変な顔をしていたからか、ツバサが説明してくれた。
「どうやって測ったの?」
「実際に走るだけ。」
それって、正確なのか?
「ちゃんと時速何mで走ればいいかも計算してるから、正確だよ。」
なんかわかんないけど、すげぇな…
「というわけで、この地図は正確なモノなので、あとで王国に提出しておきますね。」
「王国に更なる貢献をするとは、ティートル公爵様さすがです!」
さっきから、ツバサの真ん前に座ってる先生がうるさいな…
魔法が好きだから意欲的なのかと思いきや、ただのツバサファンかよ。
「そろそろ地形の話に戻るね。」
ツバサは地図を指さしながら、特徴を説明していった。
植物が育ちやすい地域、雨が降りやすい地域、逆に晴れやすい地域、野生動物が多い地域、自然災害が多い地域など…
ときどき、教科書と地図を照らし合わせて確認もした。
先生たちは興味深そうに聞いていた。
「ってな感じでした。」
「はい!」
ツバサの真ん前に座ってる先生が手を上げる。
「どうぞ。」
「あの、ティートル公爵様が住むなら、どこの地域でしょうか?」
「授業に関係ない質問には答えません。」
ツバサは不機嫌そうにしている。
「あぁ、ごめんなさい。どの地域も魅力的だったので、それぞれの王国の人が自国以外で住むならどこが良いのかと思いまして…」
先生は焦っている。
「まぁ、それなら答えてもいいけど…」
ツバサは少し嫌そうにしているが、再度地図を指さして説明を始める。
「俺たちアニマル王国の人なら、ここかな。」
それは、フラージア王国の『野生動物が多い地域』だった。
「単純に動物と心を交わせやすいから、ここなら刺激しあって楽しいんじゃない?フラージア王国なら、特有の野生動物がいっぱいいたし。」
たしかに。
「ミンフィーユ王国の住人なら、ここ。」
今度はアニマル王国の『植物が育ちやすい地域』を指さした。
「40年前に見つけた地域より植物が育ちやすいから、飢饉には陥らなくなるんじゃない?」
今は見つけたから、もう大丈夫でしょ?
まぁ、強いて言うならって感じなんだろうけど。
「フラージア王国の住人なら、ここ。」
最後にミンフィーユ王国の『自然災害が多い地域』を指さした。
「魔法の練習になるんじゃない?」
テキトーだな…
こんなテキトーな説明でいいのか?
「さすがティートル公爵様です!とても勉強になります。」
質問した先生は感動しているようだった。
うそだろ!?
他の先生たちも納得したように首を縦に振っていた。
1人くらい、「もっとちゃんと説明してください!」って怒っていいよ…




