167話
「ツバサ、聞こえる?」
私はイヤホンのようなモノを耳につけ、遠くにいるツバサに盗聴器越しに話しかける。
『ルナ!どうした?』
ツバサは嬉しそうに辺りをキョロキョロした。
『わ、なんであんな遠いところにいるの?』
やっと気づいたか…
「クララくんの魔法が当たったら危ないから、ルイと避難したの。」
『えぇ、俺が守るのに…』
ツバサは不満そうにしている。
「そんなことより、クララくんの魔力って、あとどのくらい残ってるかわかる?」
『うーん、まだ全然大丈夫そうだよ。30くらいかな。』
意外と平気そう。
「30くらいだって。」
私は隣にいるルイに教える。
「意外と残ってるな。でも、そろそろやめるように言って。」
ルイはやっぱり心配みたいだった。
「ツバサ、そろそろ1回やめて。」
『えぇ、負けたみたいになるじゃん。』
ツバサって、負けず嫌いだっけ?
まぁ、挑発されたら倍返しするタイプだよな…
「じゃあ、めちゃくちゃ強いやつ作っていいよ。クララくんに負けを認めさせな。」
『はーい。じゃあ、特大のやついくよ。』
ツバサは急に楽しそうにし始めた。
えぇ、大丈夫かな?
木陰からそっと眺めていると、急に大きな敵が1体現れた。
しかも、素早い…
「わぁ!」
クララくんの悲鳴がはっきり聞こえた。
「ツバサ、やりすぎ!」
『えぇ、そう?まだ大丈夫そうだよ。あと20くらいかな。』
「ルイ、どうしよう…」
『なんでルイに助け求めてるの?』
「ルナはここにいて。俺も助太刀してくる。」
そう言って、ルイはクララくんの元に走り出した。
『そんな心配なら、ちょっと弱めようか?』
ツバサは遠慮がちに聞いてきた。
「ルイが助けに行ったから、多分大丈夫。状況を見ながら、バレないように弱めて。」
『はーい。』
敵はさっきより遅くなった気がする。
だけど、気がする程度。
ルイはクララくんの援護をするように魔法を放つ。
結構、あの2人相性良くね?
『ルナ、クララあと10ない。』
やばいじゃん!
「倒れたフリしてやめて!」
『えぇ…』
「いいから、早く!」
『はーい。』
ツバサは嫌そうにしつつも、敵を良い感じに消してくれた。
私は2人の元に駆け寄る。
「クララくん、ルイ!大丈夫?」
「は?余裕だし…」
クララくんは肩で息をしながら、答えた。
強がりめ…
「はい、ポーション飲みな。」
「ありがとう…」
クララくんは素直にお礼を言い、私からポーションを受け取る。
「ルイもお疲れ様。」
「さんきゅ。」
ルイも嬉しそうに笑って、私からポーションを受け取る。
「ルナ!俺は?俺にはないの?」
少し離れたところにいたツバサも駆け寄ってきた。
「はい、どうぞ。」
「わぁい!ありがとう。」
ツバサも嬉しそうに笑った。




