163話
お昼休み。
ツバサはすぐにやってきた。
「ルナ!お待たせ。」
ツバサは軽く肩で息をしていた。
「お疲れ様。」
私はツバサに駆け寄り、頭を撫でる。
「えへへ。俺、頑張ったよ。」
ツバサは嬉しそうにしている。
「ピラナとルイも呼んでくるね。」
「はーい。」
私たちは4人で食堂へ移動し、好きなものを注文する。
で、席について食べながら、ツバサに説明してもらった。
「まず、建国についてからね。結論から言うと、『ティートル王国』は建国されないよ。」
あぁ、良かった…
「ちゃんと理由もあって。本当は建国させたかったみたいなんだけど、領土問題がやっかいでね。それぞれの王国から、ちょっとずつもらう予定だったんだけど、みんなやっぱり嫌みたいで…『ホートラン学園』を『ティートル王国』として、建国する案もあったんだけど、『そこまでして建国する理由はなくないか?』って話になって、建国されないことが決まったんだ。」
なるほどな…
そもそも領土がなかったのか。
じゃあ、なんで建国の話が出てきたんだろう?
「あとは、未来の王妃様についてね。これは、単純にルイの片想いが実ると思っている人が一定数いるんだ。その人たちの考えがうまく伝わらなくて、『ミンフィーユ王国』の未来の王妃様と、噂の『ティートル王国』の未来の王妃様がこんがらがっている感じかな。」
クララくんの記事だね。
3ヶ月も経っているから、もう誰も覚えていないものだと思ってたよ…
「ツバサは、どう動いたんだ?」
ルイが純粋な疑問をぶつける。
「ん?俺?何かしたっけ…」
ツバサは身に覚えがないようだった。
「俺に口止めしたじゃんか。『ルナの孤立について動きがあっても、ルナには黙っていてね。』って。何かしたんだろ?」
「あぁ、それね。俺はまだ動いていなかったよ。現状を確認している間に収まりかけてたから、その方向で合ってるよって足並み揃えさせただけ。」
そうなんだ…
「何しようと思ってたの?」
「えぇ、あんまり言いたくない…」
ツバサは嫌そうにしている。
おい、何しようとしたんだ?
「ツバサ、言いなさい。」
「えぇ…わかったよ。」
ツバサは観念したように話し出した。
「『ルナは俺の婚約者なんだ。もちろん、一生手放す気はないよ。そういえば、君の家って何してたっけ?将来が楽しみだね。』って言って回ろうと思ってた。」
脅しだ!
この人、ひとりひとり脅そうとしてたぞ!
「ツバサ、脅しちゃダメだよ?」
「まだやってないから!」
ツバサは私に怒られて焦っている。
「それに、これは最終手段だもん…」
「ツバサって、ルナ以外にはポンコツだよな…」
ルイが呆れたように呟いた。
「ルナと一緒にいるティートル公爵様、いつもより暖かい雰囲気がして良いわね。」
ピラナは楽しそうに微笑んでいる。




