15話
結局、お昼ご飯を食堂で食べることはできなかった。
懇願して作ってもらおうとしたけど、「授業までに食べ終わらないでしょ。」と怒られてしまった。
仕方がないので、教室に戻って机に突っ伏す。
ぐうぅぅぅぅぅ。
私のお腹が泣いている。
可哀想に…
「おい、これ食うか?」
横を見ると、ルイがパンを差し出してくれていた。
おぉ、神!!
「ありがとう!食べる!」
私はルイからパンをもらい、急いで食べる。
次の授業は数学。
ひたすら計算式を解くだけの授業で眠くなりそうだった。
しかも、「魔力5の人が魔力10になるためには、ポーションをいくら飲めば良いでしょう。」っていう、特殊な計算式。
答えは15らしい。
魔力1上げるのに対して、ポーション3個でいいんだって。
意外とすぐ上がるじゃん。
でも、さっきの私は魔力5上げるのに、ポーションを30個も使っていた。
普通なら、20になっているはずなのに。
ちなみに、ポーションはHP0になってから飲まないと意味がない。
HP=魔力みたいなところがあるらしい。
だから、魔力を上げた分だけ強くなれるし、長く戦えるようになる。
ひたすら魔法の反復練習をして、魔力が増えてきたら色々な魔法を使えるようになっていく。
今は耐えるしかないと…
でも、今日はもう良くない?
あの苦行をまた放課後にするとか、鬼かよ!
そんなことを考えながら解いていたため、授業が終わる頃には半分も埋まっていなかった。
特殊な問題を解けって言う方が無理あると思うけど。
実際、全て解き終わった生徒の方が少なかった。
確か、残りは宿題になるって言ってたな。
嫌すぎて机に突っ伏していると、ルイに声を掛けられた。
「もしかして、終わってないの?俺でよければ教えようか?」
勢いよく起き上がってルイの方を見る。
ルイはピクっと驚いていたが、すぐに平然なフリをした。
「まぁ、俺はもう終わってるしさ。普通の人には難しいんじゃない?」
サラッと「自分は普通の人ではありません」って自慢してきた。
まぁ、いいだろう。
「ありがとう!半分も終わらなくて、困ってたんだ。」
私はそう言いながら、ルイに近づく。
「これから、教えて。」
「あぁ、これな。結構複雑に考えすぎるみたいだけど、めっちゃ単純だよ。」
ルイの教え方はすごく丁寧でわかりやすかった。
教室の後ろの席だから、あまり注目もされなくて集中できた。
20分もしないうちに全て解き終わった。
すごい、半分以上も残ってたのに…
「本当にありがとう。ルイの説明、すごいわかりやすかった!また教えてね。」
素直にお礼を伝えると、ルイは少し照れたようにそっぽを向いた。
「別に、これくらい簡単だし…でも、どうしてもって言うならまた教えてやるよ。」
ツンデレか?
結構かわいいところもあるじゃん。
「ルナー!お待たせ、一緒に帰ろ。」
スティが駆け寄ってきた。
一緒に帰る約束なんてしてないんだが…
「スティ、お疲れ。どこ行ってたの?」
スティは授業が終わってすぐに教室を出て行っていた。
「えっと、先生に呼ばれてて?」
なんで疑問形で答えるんだろ。
深い意味はないか。
「そうなんだ。じゃあ、帰ろっか。あ、スティはプリント終わってる?まだなら、やってから帰る?」
きっと終わってないよね。
今度は私が教えてあげよう。
「え?さっきの授業のプリント?簡単すぎたよね。すぐ終わっちゃって暇だったよ。」
ぐさ…
悪気はないだろうけど、はっきり言われると、全然わからなかった私には棘だよ…
「そ、そうなんだ。じゃあ、早く帰ろう。ルイ、また明日ね。」
スティっていつもふわふわしててかわいいけど、妃教育をガッツリ叩き込まれてるんだよね。
『フラージア王国』の人なら、魔法に関する計算式とか簡単すぎるよね。
うん、きっとそうだ。
私は、自分にそう言い聞かせた。




