おまけ⑦141-144話 地下の魔王
我は目覚めた。
何十年ぶりの外の空気はうまい。
ここから出て、地上がどうなっているのか見に行きたいの。
だが、光属性の子が戻ってくるのを待つ必要がある。
それに、我の魔力を感知したフラージア王国の者に気づかれてしまうかもしれぬ。
とりあえず、ここを過ごしやすい空間にするか。
「リベラ、いるか?」
我の使い魔・リベラの名を呼ぶ。
「はい、おります。」
リベラは走ってやってきた。
今は仔犬の姿をしている。
「リベラ、ここを快適にするために掃除をするぞ。」
「かしこまりました。」
リベラは、姿を人間に変えた。
「模様替えもいたしますか?」
それもいいな。
「適度に頼む。」
「かしこまりました。」
リベラは、テキパキと片付けていく。
「クライス様、こちらのソファーを中心とした部屋はいかがでしょう?」
リベラは、奥の方にしまってあったソファーを持ってきた。
客人のために、ソファーはあった方が良いだろう。
「良いな。その方向で進めてくれ。」
「かしこまりました。」
リベラは楽しそうにしている。
我も久しぶりにリベラと話すことができて嬉しいぞ。
さて、もてなしの準備を始めるか。
「リベラ、人間はどのような菓子を望むか知っているか?」
「えぇ…あ、クッキーはいかがでしょう?」
クッキー?
「それはどのような食べ物なんだ?」
「クライス様が眠っていらっしゃる間に流行った甘い菓子です。こちらに作り方が載っております。」
リベラは、料理本を持ってきて見せてくれた。
「よし、ここに載っているクッキーとやらを作ってくる。」
「頑張ってくださいませ。」
我は、キッチンへ向かう。
料理本をじっくり読み込み、早速調理していく。
意外と簡単なんだな。
シンプルだとつまらぬから、チョコを挟んでみるとするか。
我の妻も好きだったしな。
チョコを食べると、非常にかわいらしい顔をしていた。
懐かしいの。
アカリは、妻に似てかわいらしく育っているんだろうか…
会いに行けたらいいのだが、しばらくはここで大人しくしていないとな。
また封印されてしまう。
よし、できたぞ。
「リベラ、味見をしてくれ。」
我は片付けをしているリベラを呼び止めた。
「はい、喜んで!」
リベラは、嬉しそうに我の作ったクッキーを頬張った。
「どうだ?」
「とても美味しいです!中のチョコが、程よく溶けて甘いです。」
リベラは、本当に美味しそうに食べている。
「それは、良かった。他のも作ってくる。」
「はい、頑張ってくださいませ。」
他には、なにがいいのだろうか…
そういえば、飲み物も用意せねばいかんの。
たしか、ここに茶葉があったような。
おぉ、これだ。
我の妻が大好きだったカモミールティー。
これなら、自信を持って提供できるぞ。
出来たてをだしてあげたいが、蒸らす時間があるしの…
あと、どれくらいで来るんだろうか?
我は、魔力探知で光属性の子の居場所を探る。
ふむ、まだ入口にはいないみたいだな。
ここまで降りるのに5分もかからないだろう。
とりあえず、用意だけしておくか。
「クライス様、片付け終わりました。」
リベラがキッチンへやってきた。
「カモミールティーですか。奥様も好きでしたね。」
リベラは懐かしそうに呟いた。
「あぁ、我の自信作だ。きっと喜んでくれるだろう。」
「はい、絶対にそうだと思います。」
「リベラ、クッキーや紅茶を並べるのを手伝ってくれ。」
「かしこまりました。」




