140話
アカリ先輩が先陣を切って、地下へ進んでいく。
私たちはそれに続いて進む。
「うぅ、寒い!やっぱり、私は上で待っているわ。」
アカリ先輩は1分もしないうちに、地上へ戻ってしまった。
どんだけ寒がりなんだ…
「ルナは、本当に大丈夫?強がってない?」
ツバサは心配そうにしている。
「本当に大丈夫だよ。全く寒くない。」
私は、本当に寒くないのだ。
みんなが寒がっているのが不思議なくらい。
「そっか。じゃあ、奥まで進むよ。」
はぐれないように2人で手を繋いで進む。
ツバサの手はすごく冷たい。
大丈夫かな?
「ここから、段差が高くなるから気をつけてね。」
はーい。
「ルナ、抱っこしようか?」
たしかに、結構高いかも。
ツバサも寒そうだし…
「じゃあ、お願いしようかな。」
「やったぁ。おいで。」
ツバサは嬉しそうに、私をお姫様抱っこしてくれた。
「ルナ、暖かい。」
ツバサは私をギュッと抱きしめる。
身体も冷たくなっている。
「ツバサ、大丈夫?」
「ちょっと寒いけど、大丈夫だよ。ルナを1人にはできないしね。」
ツバサはニコッと笑って答えてくれた。
「無理だけはしないでね。」
「わかった。」
そこから、5分ほど歩くと最奥についた。
「ルナ、あれが魔王だよ。」
ツバサの目線の先には、大きな氷の中で眠る人がいた。
あれが魔王…
綺麗な顔しているな。
「ツバサ、解けそう?」
「頑張ってみるね。」
ツバサは私をおろし、手を氷に向けてかざす。
私はツバサが寒くならないように、頑張れるように、横から抱きつく。
「ルナ!?嬉しいけど、ちょっと危ないかもしれないから、離れて待ってて。」
ツバサは少し動揺したあと、名残惜しそうに言った。
危ないの!?
「ツバサも危ない目にあうの?」
「俺は大丈夫。ルナのことは守りきる自信がないから…」
ツバサは少しシュンとした。
ツバサが私を守れないなんて珍しい…
「私は大丈夫。今回も死ぬときは一緒だよ。」
「ルナ…別にこれで死なないけどね。ちょっと痛いくらい。」
ツバサはクスッと笑ってくれた。
臭いセリフを吐いた私は、ただただ恥ずかしい…
「ここが難しいんだよな…」
ツバサは険しい顔をしている。
頑張れー!
「くしゅん!」
ツバサが寒そうにくしゃみをした。
「ツバサ、大丈夫?そろそろ上に戻った方が良いんじゃない?」
「大丈夫。もうちょっとだから。」
ツバサは戻ろうとせず、手に力を込める。
えぇ、大丈夫かな?
風邪ひかない?
心配だよ…
私の力じゃ足りないだろうけど、とりあえず真似してみよ。
私は氷に向かって、手をかざし、光の玉を出すイメージをする。
すると、氷が綺麗に溶けていった。
「あれ?できちゃった…」
ツバサはびっくりしているみたいだ。
「ツバサ、やったね。頑張ったね。」
私はツバサを正面から抱きしめ、頭を撫でる。
身体はさっきよりも冷たい。
早く上に戻らないと。




