130話
放課後。
いつも通り、ツバサと勉強を進めようと準備していると、ピラナがやってきた。
「ルナ、ちょっといいかしら?」
ピラナは浮かない顔をしている。
「どうしたの?」
「全部私のせいなの…ごめんなさい!」
ピラナは勢いよく頭を下げて謝った。
もちろん、みんなから注目された。
「ちょっと待ってよ。私なにもされてないよ?」
「ルナは優しいのね…」
ピラナは頭を上げてくれた。
本当に身に覚えがないだけなんだけど…
「なにがあったの?」
「ルナ、最近クラスで孤立しているでしょ?」
え、私って孤立していたの?
休み時間はだいたいツバサと一緒だし、実技とかの移動教室はスティやルイと一緒にいる。
いつもと変わらないのだが…
「この間、私に試験教科を聞いてくれたじゃない?あのとき、私のことを『ピラナ』って呼んだでしょ。それで、敬称を付けなかったことに腹立てている生徒が多くて…」
ピラナは公爵令嬢だもんな。
なにも事情を知らなかったら、伯爵令嬢が何をやってるんだって話になる。
「1部では、『ティートル公爵様の婚約者だから良いんじゃない?』ってなっているんだけど、残りの1部では『破棄される可能性もあるのに、図々しい。』ってなっているの…」
「俺、ルナのことを手放す気、全くないんだけど?」
ツバサは大人しく聞いていたが、聞き捨てならないといった感じで、口を挟んできた。
「私もそう思っているわ。ルナとティートル公爵様、とてもお似合いよ。」
ピラナはニコッと笑ってくれた。
「ありがとう。」
ツバサは満足そうにしている。
「それで、私ってクラスで孤立しているの?」
「えぇ、少し前から…ってもしかして、気づいていなかったの!?」
はい…
「あぁ、そう…それならいいのよ。ごめんなさい。気にしないでちょうだい。」
ピラナは、びっくりして言葉が出ないようだった。
「ピラナ、大丈夫?」
「大丈夫よ。こっちでなんとかしておくから。」
いや、でも…
「私にできることってある?」
「何もしなくて大丈夫。大丈夫だから、今まで通りいてちょうだい。」
はーい。
ピラナは、そのまま自分の席に戻って行った。
「ねぇ、ツバサ。私、孤立しているように見えた?」
「俺はルナを独占できて、ちょうど良いけどね。」
サラッと流したってことは、気づいていたってことか…
「ねぇ、ルイ!私って、孤立してたの?」
ルイは聞こえないフリをしている。
「ねぇ、ルイ!おーい、ルイ?」
「あぁ、もう!なんだよ?」
ルイはちょっと怒りながら、返事してくれた。
「私って、クラスで孤立してたの?」
「そうだよ。ルナのこと、無視しようぜって空気になってる。」
え、だから今、ルイに無視されたの…
私がしょんぼりしていると、ルイは急いで付け加えた。
「俺は加担してないからな!ルナは友達だし。今のは、ツバサに口止めされてたから、下手なこと言えなくて…」
ルイは申し訳なさそうにしている。
そうなんだ。
またツバサの影響か…
私はツバサを見る。
ツバサはニコッとしてくれた。
「孤立してることを私に気づかせないため?」
「もちろん。もう少し待ってくれていたら、俺の方で何とかできたんだけどね…」
ツバサは悪い顔をして笑った。
すごくかっこいいけど、絶対良くないこと考えてるよ…




