120話
ヤイヤイ言いながら、やっとの思いでグラウンドに到着する。
5分もかからないところなのに、1時間くらいに感じたよ…
「じゃあ、アカリ先輩。あとでお願いします。」
「ルナ、こっちだよ。早く。」
私はツバサに引っ張られながら、隅っこに移動する。
ツバサがグラウンドに座ったので、私も隣に座る。
「はぁ、やっとルナと2人きりだ。」
ツバサは私の肩にもたれかかりながら、幸せそうにしている。
「ごめん、重いから寄っかからないで。」
私は両手でツバサを押しのける。
「ルナ、冷たーい。」
ツバサは楽しそうに文句を言っている。
なんか、最近体力がない気がするんだよね…
そんなに動いてないかな?
「ツバサ、今日は筋トレしよっか。」
「え、なんで?このまま座って、ゆっくりしようよ。」
ツバサが甘やかしてくるから、私の体力がなくなっているのか?
「じゃあ、腹筋するから足抑えてて。」
「はーい。」
ツバサは私の両足をギュッと抱きしめる。
ふつーに両手で抑えるだけで良かったのに…
「1…2……3………4…………」
あれ?
こんなにできないっけ?
たった4回で疲れすぎでは?
「ルナ、大丈夫?まだ4回だよ。休憩するには、早くない?」
鬼教官かよ…
「ごめん、筋トレやめよっか。」
私はツバサの横に座り直し、ツバサの肩にもたれかかる。
「ルナ!?急にどうしたの…?」
ツバサは照れている。
これなら、私は重くないしツバサも嬉しいだろう。
「今日のルナ、積極的だね。嬉しいよ。」
ツバサは私の頭をそっと撫でる。
あぁ、結構心地いいかも…
このまま、ちょっと寝たい。
私は静かに目を閉じる。
草木が風で揺れる音が響いている。
のどかだ…
「ルナちゃん、光魔法を教えに来たわよ!」
アカリ先輩が走ってやってきた。
あぁ、忘れてた…
このまま気付かないふりして、目を閉じててもいいかな?
「しっ!ルナは疲れてるの!今、寝たところだから、あっち行け。」
ツバサが威嚇しながら、アカリ先輩を追い払おうとしている。
「あら、ほんと。寝顔、かわいい。」
アカリ先輩が近づく気配がする。
私、絶対に目を開けるなよ。
「ちょっと近すぎ。もっと離れて。」
「ちょっとくらい良いじゃない。ツバサはくっついているんだから、私は近くで見るの。」
「やめて。離れて。あと30m離れて。」
「ひどーい。」
目を開けたら負けだ…
「なんでルナにまとわりつくんだよ。迷惑してるんだけど。」
「なんでって…せっかく大好きなゲームについて語れる人が見つかったんだもん。いっぱい話して仲良くなりたいじゃない?」
「俺とルナの時間が減るでしょ!」
「そんなの知らないもんね。」
はぁ、誰か助けてくれ…
「アカリさん。ルナさんに教えないなら、戻ってきてください。戦略を考えますよ。」
サイモンさん、お久しぶりです!
「早くアカリを連れて行ってください。ルナはこのまま帰りますね。」
ツバサは私をふわっと持ち上げた。
体勢的にお姫様抱っこか?
「わかりました。私的には、ルナさんにも討伐メンバーに入ってほしいと思っています。ティートル公爵様、考えが変わりましたら、よろしくお願いいたします。」
サイモンさん…!
やっぱり、お話したいな…
「俺の考えが変わることはありませんので。」
ツバサは冷たく突き放して、歩き出す。
あぁ、サイモンさん!
また今度だ…
今は我慢しないと、アカリ先輩に捕まる。




