116話
お昼休み。
いつもより遅く、ツバサがアカリ先輩を連れてやってきた。
それでも、頑張って走ってきたみたいで、アカリ先輩は息切れしている。
「ルナ…ちゃん…お待たせ…食堂行こうか……」
「全然待ってないです。少し休憩してから行きますか?」
「ありがとう…全然大丈夫だから、行こう!」
アカリ先輩は息を整え、食堂の方を指さした。
3人で食堂へ向かう。
それぞれ好きなモノを頼み、私の隣にツバサ、正面にアカリ先輩が座る。
「それでね、ルナちゃんはどのゲームの誰が好きだった?」
ん?
「私は、『花束の魔法』のクライス様!」
ん?
なんでアカリ先輩がゲームのことを知っているの?
「すみません、話が見えないんですが…」
「あれ?ツバサから聞いてない?私も転生者なのよ。」
は?
私はツバサの方を見る。
「あれ?言ってなかったっけ?」
聞いてない!
「もう、ちゃんとそういう大事なことは共有しておいてよ。前世でも恋人だったんでしょ?」
アカリ先輩は、ツバサに対して怒る。
「ごめんね。」
ツバサも素直に謝る。
だから、こんなに仲良く見えたのか…
前世って共通の話題もあるし。
「アカリ先輩は、いつ思い出したんですか?」
「えっとね、物心ついたときかな。あ、私クライス様の娘でね。大好きなキャラクターの娘になれてラッキーかと思えば、氷漬けで眠れされているんだもの。そりゃあ、当たり前かって感じではあるけどね。」
クライス様…?
「あの、クライス様って誰ですか?そんなキャラクターいましたっけ?」
私の何気ない質問に2人はびっくりする。
「ルナちゃん、もしかして追加コンテンツやってないの?」
「俺はルナがプレイしていないゲームをプレイしてたのか…」
え、追加コンテンツ?
「追加コンテンツなんてありましたっけ?」
「『花束の魔法』が発売された2年後にダウンロード追加コンテンツとして、発売されたの。それで、新しく追加された攻略対象が魔王のクライス様よ!」
アカリ先輩が熱を込めながら説明してくれた。
「みんなで倒したあの魔王ですか?」
「そう!みんなで倒した魔王クライス様!」
アカリ先輩は目を輝かせている。
「元々、立ち絵とボイス付きだったでしょ?だから、ファンから『魔王も攻略させろ!』って要望がたくさんきたらしくて、急遽追加されたの。私もその要望を送った1人よ。」
たしかにイケメンだったかも。
ボイスも人気な声優さんだったし。
「追加されたときは嬉しくて嬉しくて…1晩でコンプリートしたわ。」
すげぇ…
さすがに1晩でコンプリートしたキャラクターなんていないや。
早くて3日くらいかな?
「俺もクライス様、好きだったな。まさかあんな秘密があるとは思わなかったし。」
「あんな秘密って?」
「プレイしてないルナには教えません。」
ツバサのケチ。
「とにかく、私はクライス様の娘なの。ルナちゃんはどこの子?」
「ミンフィーユ王国のピラフィル伯爵家です。ゲームには出てきてないですよね?」
「そうね。ツバサも出てこない子だったし、私も追加コンテンツだもんね…」
アカリ先輩はそのまま考え込んでしまった。




