108話
休み時間。
いつも素早く来るツバサが全然来ない。
え、ちょっと心配…
私はイヤホンのようなモノを耳につけて、ツバサの音を聞く。
『ツバサって、おもしろいな。』
『そんなことないよ。』
知らない男の子と話しているみたいだった。
しかも、なんか仲良さそう…
『いつもどこかに行ってたから、忙しいのかと思ってた。』
『あぁ、ルナに会いに行ってたんだ。俺の婚約者ね。』
『あれ?今は会いに行かなくていいの?』
『うん…最近、冷たくて…』
『なんで?』
『わからない…俺が甘えても、ほら早く行きなって追い返されるんだ…』
『ひどいな…』
『嫌われちゃったかな…』
嘘くさ…
『婚約破棄したらどうかな?』
今度は女の子の声が聞こえてきた。
『それでも、俺はルナが大好きだから…頑張るよ!』
『ツバサくん…私でよければ、いつでも話聞くからね。』
『うん、ありがとう。』
わぁ、ツバサ狙われてるよ…
「ツバサ、聞こえる?」
『ハラマナさん、しつこい男ってどう思う?』
絶対聞こえてるはずなのに、無視された…
『どうって…もしかしてツバサくんのこと?全然しつこくないと思うよ!』
おい、女だまれ。
『そうかな…でも、毎朝迎えに行ったり、休み時間の度に遊びに行ったり、帰りも一緒に帰ったり…ちょっとしつこいかな?』
絶対にそんなこと思ってないだろ。
『そんなことないよ!私だったら、嬉しいよ!』
おい、女まじで黙れ。
「ツバサのばか…もう知らない。」
私が呟くと、向こうでガタガタと音がなった。
「ルナー!ごめんね。そんなこと微塵も思ってないから!」
教室の出入口が勢いよく開き、ツバサが涙目で訴えている。
「もう知らない…」
「うわぁ、ごめんなさい。ルナにヤキモチ妬いてほしくて…」
ツバサは今にも泣きそうになっている。
耳もシッポも限界までシュンと垂れている。
それでも私は、そっぽを向いて無視する。
「ルナ、許して。」
いつの間にか私の横に座り、袖を引っ張って訴えている。
「あの女、誰?なんで仲良いの?」
「えっとね、シルクの隣の席の子で、シルクに話しかけに行ったら、勝手に入ってきて、居座るようになった子。」
色々言い方が気になるけど、まぁいいや。
「ツバサから話しかける必要あった?」
「ないです…」
「そうだね。もうしないって約束できる?」
ツバサは顔を勢いよくあげた。
「できる!俺、できるよ!」
「じゃあ、約束ね。」
「うん!」
私たちは小指を絡めて約束した。




