9話
しばらく泣き続けて落ち着いたのか、スティは恥ずかしそうに笑った。
「ルナ、いっぱい泣いて、授業サボらせて…ごめんね。」
「大丈夫だよ。それより、目が腫れちゃったね。タオル濡らしてこようか?」
それとも、保健室の方がいいかな?
でも、地図を見てもわからないし。
スティは場所知ってるかな?
「ありがとう。自分で濡らしてくる!ちょっと待ってて!」
返事をする前に走り出してしまった。
まぁ、いいか。
それにしても、まさかスティがアルスの婚約者だったとは…
あのナンパ野郎、よくも私の親友を泣かせたな!
だんだん怒りが湧いてきた。
次に会ったときにぶん殴ってやりたい気分。
「あ、いた!」
静かに怒っていると、ルイがやってきた。
あら、探してくれてたの?
「もう、今何時だと思ってるの?授業2つもサボって、何してるの?」
質問攻めはやめてくれ。
「えっとね、ちょっと事情があって。」
「ちゃんと理由を言って!心配したんだから!」
グイッと顔を近づけながら怒ってきた。
その美しい顔で迫らないで!
避けようと逃げてもついてくる。
「ねぇ!何で?」
声に迫力がなくなっていき、ちょっと寂しそうに見える。
「ごめんね。スティとお話してたら、授業のこと忘れてて。」
あんまり細かく話せないから、濁すしかない。
「ふーん。スティって誰?ルナの友達?」
「そう。初めてできた友達だよ。」
ルイはおもしろくないのか、今度はそっぽを向き始めた。
横顔も綺麗だな。
「ルナ!!」
そんなことを考えていると、スティが戻ってきた。
「ルナ、大丈夫?何もされてない?」
え、また絡まれてるように見えた?
「ちょっと、君。失礼じゃない?」
「ルナ、教室行こ!あっでも、その前に先生に謝りに行った方がいいかな?」
おー、華麗に無視した。
ルイもびっくりしたのか、口をパクパクさせている。
仕方がない。
私が取り持つか。
「スティ、この人は私の友達だよ。ちゃんと挨拶して。」
「そうなの!?初めまして、スティです。」
うん、いい子。
「この子って、もしかして…まぁ、いいや。俺はルイ・ミンフィーユ。よろしく。」
ルイは握手を求めて手を差し出した。
「あんまり、よろしくしたくない。」
またもや無視するスティ。
ルイも気づいているみたいだし、嫌なのか。
でも、ルイが不憫すぎる。
「スティ、握手してあげて。」
「だって、私のこと知っているみたいだし。友達もルナだけでいい。」
そう言いながら、私の腕に抱きついてきた。
あら、かわいい。
「えへへ、ありがとう。でも、私の友達同士が仲良かったら、私も嬉しいな。」
ケンカされても困るしね。
「ルナがそういうなら、よろしくしてあげる。」
今度はスティが握手を求めて手を差し出す。
「俺はもうしない!」
あらら、怒っちゃった。
「ルイ、スティは私の大事な友達なの。仲良くできないなら、あなたと友達ではいられないわ。」
ちょっと可哀想だけど、仕方がない。
ルイはすぐさまスティの手を両手で包み込んだ。
そこまでは求めてないけど、まぁいいか。
「よし!3人で仲良しだよ!」
「「はーい!」」
2人の嫌そうな声が重なる。
その瞬間、睨み合い始めたけど。
これから仲良しになってね。
 




