表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/636

8話

私は、『フラージア王国』の平民街で、お母さんと2人で慎ましながら楽しく暮らしていた。

魔法が主流の国のため、10歳の誕生日には神殿に行き、魔法と魔力の測定をする決まりがあった。

私も10歳の誕生日にお母さんと一緒に神殿に行った。

測定してみると、なんと4属性全ての魔法が使え、魔力も同い年の3倍くらいあったのだ。

強い魔道士でも多くて3属性のため、私はとても貴重な存在になった。

その頃、ちょうどアルス第1王子の婚約者を探す時期でもあった。

そのため、将来強い世継ぎを産めるだろうと期待され、私が選ばれてしまった。

もちろん、王命だから平民の私は断ることができず、承諾した。

その日から、私の日常が狂い始めた。

お城に住むこととなり、妃教育が始まったのだ。

ふつうは10年かかる妃教育を学園に行くまでの5年で完璧に仕上げなければならなかった。

もちろん、毎日勉強漬けで遊ぶことなんて許されなかった。

将来結婚するから仲を深めておこうと、週に1回アルス様とお茶する時間が設けられた。

しかし、マナー教師が横でずっと指導しながらのお茶会のため、全く盛り上がらず、やがてアルス様も「忙しい」と断るようになった。

唯一の接点であるお茶会もなくなり、私たちの仲は深まるどころか溝が作られていった。

そんな5年間を過ごしたため、私の心は疲弊しきっていた。

また、婚約者が決まったとき、国中に号外が配られたため、このことを知らない人は誰もいない。

もちろん、他国にも広まっている。

アルス様の婚約者になりたい子はたくさんいたため、学園でも1人寂しく過ごす覚悟でいた。

特に公爵家の子には目の敵にされていたため、嫌がらせを受ける覚悟もしていた。

入学式の日も、公爵家の侍女に足を引っ掛けられ、盛大に転んでしまった。

みんながクスクス笑いながら通り過ぎて行き、わかっていても泣きそうだった。

そんな時に声をかけてくれたのがルナだった。

「大丈夫?」なんて久しぶりに心配された。

嬉しすぎて、本当に涙が出そうだった。


スティは静かに全部話してくれた。

まさかアルスに婚約者がいたとは。

ゲームでは、サラッと婚約者問題は解決していったから気づかなかった。

まぁ、4属性持ちより伝説の光属性の方が大事ってことか。

討伐部隊にもスティはいなかったはず。

お家に帰してもらえたのかな?

そうだったらいいな。

「スティ、全部話してくれてありがとう。頑張ったね。」

全力の笑顔で応える。

スティはそれを見て安心したのか、大声で泣き始めた。

私はそれ以上かける言葉が見つからなかった。

そっと背中を撫で続けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ