8話
私は、『フラージア王国』の平民街で、お母さんと2人で慎ましながら楽しく暮らしていた。
魔法が主流の国のため、10歳の誕生日には神殿に行き、魔法と魔力の測定をする決まりがあった。
私も10歳の誕生日にお母さんと一緒に神殿に行った。
測定してみると、なんと4属性全ての魔法が使え、魔力も同い年の3倍くらいあったのだ。
強い魔道士でも多くて3属性のため、私はとても貴重な存在になった。
その頃、ちょうどアルス第1王子の婚約者を探す時期でもあった。
そのため、将来強い世継ぎを産めるだろうと期待され、私が選ばれてしまった。
もちろん、王命だから平民の私は断ることができず、承諾した。
その日から、私の日常が狂い始めた。
お城に住むこととなり、妃教育が始まったのだ。
ふつうは10年かかる妃教育を学園に行くまでの5年で完璧に仕上げなければならなかった。
もちろん、毎日勉強漬けで遊ぶことなんて許されなかった。
将来結婚するから仲を深めておこうと、週に1回アルス様とお茶する時間が設けられた。
しかし、マナー教師が横でずっと指導しながらのお茶会のため、全く盛り上がらず、やがてアルス様も「忙しい」と断るようになった。
唯一の接点であるお茶会もなくなり、私たちの仲は深まるどころか溝が作られていった。
そんな5年間を過ごしたため、私の心は疲弊しきっていた。
また、婚約者が決まったとき、国中に号外が配られたため、このことを知らない人は誰もいない。
もちろん、他国にも広まっている。
アルス様の婚約者になりたい子はたくさんいたため、学園でも1人寂しく過ごす覚悟でいた。
特に公爵家の子には目の敵にされていたため、嫌がらせを受ける覚悟もしていた。
入学式の日も、公爵家の侍女に足を引っ掛けられ、盛大に転んでしまった。
みんながクスクス笑いながら通り過ぎて行き、わかっていても泣きそうだった。
そんな時に声をかけてくれたのがルナだった。
「大丈夫?」なんて久しぶりに心配された。
嬉しすぎて、本当に涙が出そうだった。
スティは静かに全部話してくれた。
まさかアルスに婚約者がいたとは。
ゲームでは、サラッと婚約者問題は解決していったから気づかなかった。
まぁ、4属性持ちより伝説の光属性の方が大事ってことか。
討伐部隊にもスティはいなかったはず。
お家に帰してもらえたのかな?
そうだったらいいな。
「スティ、全部話してくれてありがとう。頑張ったね。」
全力の笑顔で応える。
スティはそれを見て安心したのか、大声で泣き始めた。
私はそれ以上かける言葉が見つからなかった。
そっと背中を撫で続けた。




