1/1
プロローグ
「勇者」それは世界を救うため、仲間と共に魔王を倒すもの。数ある難を乗り越え、時には友と一緒に学び、修行をし、共に戦う。そして、裏切られる。時には恋をし、一緒に暮らし、子も授かったりしながら、共に戦地へ繰り出す。そして、失う。これが、勇者だ。
勇者として、初めて召喚されたころ、ただの大学生だった俺にとっては戸惑うことが多すぎた。知らない建物、知らない生物、知らない技術、何もかも知らないことが多すぎた。しかし、昼に起き、大学へ行き、少ない友人と話し、帰り際にパチンコへ行く。そんな普通な生活を過ごしていた俺にとっては、異世界へ来たという事実だけでわくわくが止まらなかった。
「まるで、アニメみたいだ。」
アニメが好きだった俺にとっては、人一倍楽しく思うだろう。
しかし、現実は違った。俺は異世界へ召喚されたという事実だけでアニメの主人公になったつもりでいた。忘れていたんだ。これが現実でアニメみたく、周りには優しい人ばっかで、毎回いいタイミングで助けが来る。そんなことはないってことを。そして、最終的にこう思った。
「もう、勇者として生きたくはない。」