鷹が
ハローご機嫌いかがうるわっしゅー?
出張二日目。今日は取引先の農家と今後の契約内容について打ち合わせ。
「では、今後ともよろしくお願いいたします」
そう取引先の田本さんに告げ、腕時計で時間を確認すると現在午前十一時。今から町へ戻ればちょうどお昼時だろう。
社用車のモンスタートラックで峠道を下ること三十分。道中で「茶・菓子」と書かれているのぼりを見かけた。
お昼ご飯……にはまだ早いけど、こんなものを見せられては腹の虫が鳴るというもの。
私は未舗装の駐車場に車を止めて、引き戸を開けた。
「いらっしゃいませー!」
明朗で快活な少女の声が、早速疲れた体に染み渡る。
「今日は晴れていて天気も良いので、外の席へどうぞ」
そう言う少女へ視線をやると、少女は薄桃色の右目と琥珀色の左目を輝かせながら微笑んだ。オッドアイなんて珍しい。
店舗内は一面石で構成されており、私が入ってきた入り口の直線上にも別の引き戸があった。少女が開いたその向こうには、まるで果てしなく続いているかのような、広大な茶畑が広がっていた。
「すごい……」
「ふふ、ありがとうございます」
まるで絵画の世界に飛び込んだような青空と茶畑のコラボレーションに目を奪われていると、ふと視界に入ってきたのは空駆け巡る一羽の……鳥。
「あれは?」
「うちで飼っている鷹です。彼女が鷹匠をやっていまして……。ああやって、烏やちょっかいをかけてくる動物達を追い返してもらっているんです」
「畑の世話も大変なのね」
山での生活の一端が垣間見えた瞬間だった。
「楽ではないですが、鷹子が……ああいえ、彼女が居ますので…………。さあ、こちらへ。……メニューはどうされますか? 特製抹茶と四色団子のセットがオススメですよ」
「四色?」
藍色の座布団が敷かれた木のベンチに腰掛けながら、尋ねた。
「あ~私、苗字が『しきさい』なんです。春夏秋冬の『四季』に『彩り』で『|四季彩( しきさい )』。なので、春の桃色……夏の緑色……秋の橙色……そして冬の白色……」
「それで四色なのね」
「はい。いかがですか?」
「じゃあ、それをいただこうかしら」
「かしこまりました」
◆
「ふぅー。ごちそうさま」
「お粗末様でした」
「人参の団子って、甘くておいしいのね」
「ありがとうございます」
さて……疲れも少し取れたことだし、張り切って帰るとしましょうか。