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黒猫

弱虫黒猫とはじめてのお使い

作者: 霧夜シオン

今回の黒猫台本は、黒猫役のみ男女不問になっています。

それ以外は性別固定されているので、性別逆転のないようお願いいたします。

なお、漢字チェックは上演前にしっかりと行ってください。

また、居ないとは思いますが、自作発言はおやめください。


声劇台本:弱虫黒猫とはじめてのお使い


作者:霧夜シオン


所要時間:約30分


必要演者数:4人(1:2:1)

        (2:2:0)

        (1:3:0)

●はじめに

今回の黒猫台本は、黒猫役のみ男女不問になっています。

それ以外は性別固定されているので、性別逆転のないようお願いいたします。

なお、漢字チェックは上演前にしっかりと行ってください。

また、いないとは思いますが、自作発言はおやめください。


●登場人物


魔女・♀:数百年を生きているが不死ではなく、不老なだけ。猫が嫌い。見た目

     20後半~30代。魔法薬を作るのが得意分野。


黒猫・♂♀:魔女の森に瀕死の重傷を負って迷い込んだ所を魔女に助けられた猫。

      魔力の素質を持っている。人間時の姿は10代後半。


錬金の魔女・♀:森の魔女の魔法薬を買ってくれるお得意さん。見た目は若く見え

        るが実年齢は不詳。年寄りっぽい話し方をする。


大和・♂:東の果てからずっと、ずーーーーっと歩いて黒猫達の住んでいる辺りま

     で武者修行という名の遭難をしている特殊な訛りを持つ旅人さん。

     もちろん、名前がアレでソレなのは仕様でござる。


●キャスト(4人)

魔女:

黒猫:

錬金の魔女:

大和:


※この台本における魔女役は女性になります。

 黒猫役は性別不問になります。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



錬金魔女(N):ワシら魔女が歴史の表舞台にいた時代・・・俗に中世と言われて

        た頃の話さ。

        人間ってのは、自分達とちょいとでも違うと認めたがらなくてね

        ェ・・・魔女裁判で難癖なんくせ付けられては、目を覆い、耳を塞ぎ、口

        を噤むような方法で、仲間の魔女たちが殺されたもんだよ。

        今日のお話はそんな血の雨に濡れ、慟哭どうこくの風にさらされていた頃

        に大陸であったかもしれない、小さなおはなしさァ。

        ――クリック?


(錬金魔女役の人以外全員で元気よく):クラック!


黒猫:弱虫黒猫とはじめてのお使い。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



黒猫(N):ボクは黒猫。人間たちにひどい目にあわされて死にかけていた所を、

      森に住む魔女様に助けてもらったんだ。命を助けてもらう代わりに、

      魔女様のツカイマ、とかいうのになったみたいだけど・・・正直よく

      わからない。

      おうちの事は何でもできるようになったから褒められてる。

      でも、魔女様が本当に教えたかったのは魔法の方だった。


      今日も魔女様に教えられて修練をしてたんだけど・・・。


【爆発音】


魔女:!!!ッッッああああもう! また失敗かい! このクソ猫!!【拳骨】


黒猫:ぎにゃぁッ!! ううう、ごめんなさいぃぃ!!!


魔女:ッまったく・・・ほら、とっとと片付けな!


黒猫:うう・・・はいぃ・・・。


魔女:はぁ・・・・・なんでこうお前は魔法がてんで駄目なんだい・・・、どれだ

   けイチから手ほどきしてやっても、肝心なところで失敗するし・・・、一体

   何が悪いんだい・・・・・(ぶつぶつ


黒猫:【↑語尾に被せて】魔女様、終わりました。


魔女:【↑の黒猫の台詞語尾に合わせて】―――って、もう終わったのかい!?

   ・・・あ、相変わらず家事関係に関しては手際がいいじゃないか・・・。

   【咳払い】まぁいい、ほら、帰るよ!


黒猫:ッはい、魔女様!


魔女:・・・時にクソ猫、今日の晩飯はなんだい?


黒猫:ええと、今日はライ麦パンに野菜ポタージュ、豚肉と木の実が幾つかです。


魔女:そうかい。~~ーー・・・【口ごもっている】、たっ、楽しみにしとこう

   かね。


黒猫:はい!・・・でも、いいんですか、魔女様? パンは許可をもらわないと焼

   けないはずじゃ・・・。


魔女:はん、知った事じゃないね。魔女のあたしが、領主の、人間の決まりごとな

   んかに付き合う気はさらさら無いさね。いいから、無駄話しないでとっとと

   帰るよ!


黒猫:あっ、待ってください魔女様ぁ!!


黒猫(N):いつもこうやって突き放されてしまうんだけど、ボクは知ってる。

      魔女様はとってもやさしいんだ、ってこと。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



魔女:おはよう、クソ猫。


黒猫:ふわあぁぁあぁ・・・おはようございます~・・・魔女様ぁ。


魔女:~~ッだらしないね、シャキッとしな! さてと・・・今日は取引の日だっ

   たね・・・。 クソ猫、魔法薬を売ってくるから留守番してな!


黒猫:ふわぁい、魔女様ぁ~。


魔女:火の始末と戸締りはちゃんとやっとくんだよ!


黒猫:はぁい・・・ーーーって、わひゃああ!


魔女:!? ッ何してんだいこのクソ猫!! 何も無い所ですっ転んでんじゃない

   よ! まったく・・・行ってくるからね!


黒猫:いたた・・・は、はーい・・・いってらっしゃいませぇ・・・。


黒猫(N):魔女様は隣町へと出かけて行った。このご時世、魔法薬などという

      代物を人間相手に商売しようものなら、すぐに異端審問官というのが

      すっ飛んできて大変なことになるんだけど、魔法薬を必要としている

      魔女がいるみたいで、定期的に取引しに行くんだ。


魔女:ふう、ふう・・・やれやれ、クソ猫も人形ひとがたに変化できるように

   なったし、そろそろお使いを任せるべきかね・・・時々、隣町まで行くのが

   おっくうになってしょうがないさね・・・。


黒猫(N):といっても、取引相手の魔女が隣町に住んでいるわけじゃなくて、

      そこが待ち合わせ場所になっているんだ。


魔女:はぁ、やっと着いた・・・。さて、錬金のはまだかね?


錬金魔女:ひひっ、随分遅いお着きじゃないかねェ? 森の。


魔女:!何だい、錬金の。そっちは随分お早いお着きじゃないかい? あたしゃ、

   てっきり持病の腰痛でも再発してんじゃないかと思ってたけどね。


錬金魔女:おや、ご挨拶・・・お前さんとこの生計は、これで成り立ってるんじゃ

     ないのかィ? ワシは別に取引しなくてもいいんじゃが?

     

魔女:ッまったく・・・足元見てんじゃないよ!


錬金魔女:ひひひっ、まァそう怒りなさんな。ワシとしても、お前さんの魔法薬が

     無くなると、あれこれ実験に差しつかえるからねェ。


魔女:【溜息】・・・で、今回はいくらだい?


錬金魔女:ふむゥ・・・これでどうかね?


魔女:はぁ!? これっぱかしでどうしろって言うんだい!!

   なめるんじゃないよ、買い叩くつもりかい!?


錬金魔女:最近ちょいと資金繰りが厳しいもんでねェ・・・これでも多いくらいだ

     よ、ひひ。


魔女:だからって、この前と比べたら大分少ないじゃないか! こっちだって生活

   がかかってんだ、このくらいは必要さね!


錬金魔女:やれやれ、しょうがない・・・じゃ、もうちょいと上乗せするさァ。


魔女:~~こんの業突く張りが! もう少し出しな!


錬金魔女:業突く張りはどっちだい?

     【溜息】・・・ほれ、これ以上は出せないねェ。


魔女:ふん、最初っからそのくらいは出せるんじゃないかい! まったく・・・。


錬金魔女:【手を二回鳴らして】

     商談成立だね、ひっひひひっ。


魔女:はぁ、やれやれ・・・大声出したら疲れたよ。


錬金魔女:それじゃあ、品物をいただこうかねェ・・・・・んん??


魔女:? どうしたんだい?


錬金魔女:森のォ、これはどういうことだい? 今回頼んだのと違うのが入って

     るんだが・・・?


魔女:は?え・・・、ちょいと待ちな!

   【包みの中を確かめて】

   しまった・・・、朝バタバタしてたせいで間違えて持ってきちまったのかい

   ・・・!


錬金魔女:おやおや、それじゃァ代金は渡せないよ。


魔女:ッ待ちな! ~~連絡用の水晶は・・・あった! ックソ猫!! 聞こえて

   るかい!?


黒猫:ふぅ、ごちそうさまでしたぁ・・・さてと、片づけしてから戸締りを・・・

   って、わひゃあ! 魔女様!?


魔女:いいかいクソ猫、よくお聞き! あたしの工房の上から三つ目の棚に赤い液

   が入った魔法薬の瓶が3本ある! 隣町までそれ持って来な!


黒猫:えええ!? も、もしかして魔女様、持っていく薬を間違え―――


魔女:【語尾に被せて】

   お黙りッッッ!!! はぁはぁ・・・いいから、さっさと持って来るんだよ

   !!


黒猫:は、はいぃぃ!! ・・・うぅ・・・ええと・・・、魔女様、ありました!

   これを詰め込んで・・・っと、今から出ます!


魔女:ああ、待ってるよ。あと戸締り忘れるんじゃないよ! ・・・・・っ、き、

   気をつけて来な・・・!


黒猫:!! はい! 魔女様!


魔女:ふう・・・そういうわけだから、うちの使い魔が来るまで待っててもらえる

   かい?


錬金魔女:ひひひっ、クソ猫・・・せめて名前くらい付けてやればいいものを。

     不憫ふびん・・・いや、哀れだねェ・・・。


魔女:余計なお世話だよ! あたしゃ猫が嫌いなんだ! ・・・ほんと、何であの

   時拾おうと思ったんだか・・・(ぶつぶつ)


錬金魔女:(嫌いだといってる割には・・・ひひ・・・。)

     それじゃァ、お前さんとこの使い魔が来るまでカードでもやらんかね?


魔女:! はん・・・いつかの借りを返す絶好の機会到来ってやつかね。


錬金魔女:ひひっ、返り討ちだよ・・・!



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



黒猫(N):一方その頃、ボクは魔女様のいる隣町を目指して、山道をひたすら走

      っていた。

      ところがその途中、雨が降り始める。

      その勢いは徐々に強まり、身体から体温を容赦なく奪っていった。


黒猫:雨が酷くなってきた・・・うう、寒いよう・・・食べたばっかりだからお腹

   は空かないけど、これじゃなかなか先に進まないよう・・・。


大和:あいや、そこの御仁ごじん


黒猫:にゃあああ!!? っだっ、誰!!?


大和:これは、驚かせて済まぬ。拙者、ヤマトと申す。

   はるか東より武士道を極める武者修行の為、この地まで旅して参った者にご

   ざる。


黒猫:ご、ござる? さる? ぶしどう? むしゃむしゃしゅ【舌を噛む】

   っッッぐ!!

   ・・・あうぅ・・・なんだか、聞き慣れない言葉がいっぱい・・・・・。


大和:むぅ、旅をしながら言葉を覚えようと精進しておったが、やはり里・・・、

   国言葉は消せぬか・・・。


黒猫:(なんか、違うような・・・)

   っそ、それでその、ここで何を?


大和:うむ、今夜はここで野宿でもと、火を焚いていたのだ。

   して、そなたは?


黒猫:ボクはまj・・・じゃなくて、ごっ、ご主人様の所に荷物を届けようとして

   ・・・。


大和:おお、そうであったか。あるじの下まで使いを・・・お役目ご苦労でござるな。


黒猫:とにかく急いで持って来いっていうから、ここまで休まず来たんだけど・・

   ・。


大和:しかし、この雨では思うように進めまい。ここで会ったのも何かの縁。

   幸い火もある。少し休んで衣服を乾かしておれば、そのうちに雨も弱まるだ

   ろう。


黒猫:え・・・でも、急がないと・・・。


大和:雨は体から熱と活力を奪う。そなた、このまま急いで途中で倒れたら何とす

   る。それこそ任を果たせぬばかりか、あるじの期待を裏切る事になるぞ。

   確実に使命を果たす為、今は休むでござるよ。


黒猫:(うぅうん、なんだか、すごく難しい言葉を並べられたけど、言いたい事は

   解った気がする・・・)うん、それじゃ、温まらせてもらっていいですか、

   ござるさん。


大和:ヤマト、でござるよ。さぁさぁ、もっと火のそばへ寄ると良い。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



黒猫(N):ボクがござる・・・ヤマトさんという、異国の旅人の方に出会ってい

      た頃、隣町では・・・。


魔女:・・・・これで15戦7勝8敗かい。


錬金魔女:ほほォ・・・随分腕を上げたんじゃないかい? 前回はボロ負けだった

     たのにねェ・・・なら本腰を入れようか・・・!


魔女:はんっ、なんだいその余裕ぶりは!? 素直にあたしの実力を認めたらどう

   なんだい!


錬金魔女:いんやァ・・・? これでまだ3割ほどなんだが・・・ひひひ。


魔女:なん・・・だって・・・? ッ、なんなんだい、この迫力は!!?


錬金魔女:ひひっひひひ! それじゃあ今度は、8割でいってみようかねェ・・・

     !!



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



黒猫(N):雨が未だ降り止まない中、ボクはヤマトさんと一緒に焚き火を囲んで

      いた。暖かな炎が、さっきまで濡れネズミだった僕の服と身体を温め

      ていく。


大和:そうだ、名は何と申される?


黒猫:へ!? あ、う・・・その・・・(クソ猫だなんて流石に言えないよう・・

   ・。)


大和:む・・・? !おお、そうかそうか、これは失礼した。

   あるじの命を受けて使いする身、おいそれと名を明かせるものではござらぬな!

   はっはっは!


黒猫:え? あ、う・・・うん、そう、なんですよー・・・あ、あはは・・・

   (なんか、一人で納得したみたいでよかった・・・)


大和:しかし、いざという時、呼び名が無いのでは不便であるな・・・ふむ。


黒猫:あぅ・・・・?


大和:うむ! これだ!!


黒猫:わひゃあ!!? きゅ、急になんですか!?


大和:まず、その黒髪! 絹の如くに滑らかな黒髪!


黒猫:ひゃう!?


大和:そしてその猫の如きしなやかな身のこなし!!


黒猫:ふええ!?


大和:うむ! 仮に黒猫、と名乗ってはどうかな?


黒猫:くぁwせdrftgyふじこ!!??!

   【この場に合った適当に意味不明な言語を発してください】


大和:ふっふっふ、我ながら良き感性だのう!


黒猫:(まさかボクが黒猫だと・・・? いや、た、たまたまだと思うけど・・・

   )あ、ありがとう、ございます。


大和:はっはっは、なァに、礼には及ばぬ!


黒猫:あはは・・・と、ところでヤマトさんは、どうしてここまで来られたんです

   か?


大和:うむ、話せば長くなるが・・・拙者は日本という、ここからずっとずっと東

   の国から来た。国を出ることになったわけが・・・まぁ、これが笑い話でな

   。船に乗って釣りをしておったら、うっかり居眠りしてしまってのう!


黒猫:えええ!? わ、笑い話どころじゃないですよ!?


大和:目が覚めたら見渡す限り海でな。これはしまった、とやみくもに船をこいで

   おったら隣の国についてしまったのだ!


黒猫:うわあ・・・。それでもずっと海で迷わなくて良かったですね。


大和:うむ、我が祖先たちが守ってくれたのであろう!

   で、本来ならそこから祖国に戻るべきであったが・・・持ち前の好奇心が

   騒いでしまったのだ!


黒猫:え・・・それは、まさか・・・?


大和:そのまさかでござるよ、黒猫どの。

   拙者、もっとあちこちを見て回り、自身を鍛えようと思ったのだ!


黒猫:すごいなぁ・・・ボクもいろんなところを見てみたいなぁ。


大和:はっはっは! いずれ黒猫殿も諸国を旅して、見聞をおおいに広めると

   良い!

   む・・・? おお! 雨が上がったぞ!


黒猫:ホントだ・・・ござる、じゃなくって、ヤマトさんの言う通りでした!


大和:はっはっは! うむ! ではそろそろ出かけようか!


黒猫:(あれ、さっき野宿するって言ってたような・・・?)

   っこれから、どちらへ行かれるんですか?


大和:おお、この近くに街があるとは聞いていたのでな。

   やはり野宿ではなく、そこで宿を取ろうかと思い直したのだ。


黒猫:あ! ボクもその町が目的地なんですよ。


大和:なんと、そうであったか。はっはは、奇遇でござるなぁ!

   では参ろう!


黒猫:はい、ヤマトさん!



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



黒猫(N):ヤマトさんと焚火を囲んで体力と体温を回復したボクは、二人で一緒

      に、再び隣町を目指した。一方魔女様はというと・・・。


魔女:~~~~~ッ、20戦、6勝・・・14敗・・・? なんだいその鬼手札は

   !?


錬金魔女:ひひひひっ・・・だから言ったじゃないか、8割でやるとさァ!


魔女:くっ・・・なめんじゃないよ! そっちがそうくるなら・・・―――いいさ

   、もうそのカードの動きも、覚えた。


錬金魔女:(なっ、こいつ、いつの間にエールの代わりをッ!?)ひ、ひひ・・・

     この攻撃でトドメなんだ、強がってるんじゃあないよ・・・これで、

     どうかねェ・・・コール!


魔女:フン、それだ! ストップバースト!!


錬金魔女:なァにィ―――――ッ!!?



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



黒猫(N):雨の上がった山道を歩くボク達の頭上には、満天の星が磨き込んだよ

      うに瞬いていた。梟もあちこちでホウ、ホウ、と囁き始める。


大和:いやはや、先ほどまでの土砂降りが、まるで嘘のようであるな!


黒猫:あれだけ降ってたのに・・・綺麗に止みましたね。


大和:うむ! 雨雲も去った事だし、このぶんでは街へ着くのも意外に早いかも

   しれぬな! 


黒猫:はい! ーーーって、わひゃあああ!


大和:おおっと黒猫どの、足元に気を付けられよ! 道はまだぬかるんでおるから

   のう!!


黒猫:あっありがとうございます! ボク、いつもすぐ慌てちゃって・・・。


大和:なに、拙者も幼い頃は、随分と落ち着きのない奴であった。

   黒猫どのを見ていると、まるで昔の自分を見ているようでござる。


黒猫:へえー、ヤマトさんにもそんな時があったんですね。


大和:うむ。今でこそこうして、武士としての道を極めようと精進しているが、

   幼いころはやんちゃ坊主でなァ! 色々いたずらをして怒られたものだ!


黒猫:あはは! でも、なんだか目に浮かぶような気がします。


大和:はっはっは! そうかのう! ―――むっ!? これは・・・・・!


黒猫:? ヤマトさん? あっ!!橋が・・・! 


大和:むむむ、そうか・・・たもとの辺りが崩れて落ちたのか・・・!


黒猫:どっ、どうしましょう!? 他に道は無さそうですし・・・。


大和:ぬうう・・・・・!

   いや、この距離ならば・・・うむ、よし・・・!!


黒猫:?? ヤマトさん・・・?


大和:黒猫どの。


黒猫:? はい? って、わひゃああ!? なっ、何を!!?


大和:しッッッかり、掴まっておられよォ!!


黒猫:え? ええ!? ちょ、まさか、この距離を飛ぶんですかァァァア!!?


大和:【間髪入れずに助走をつけて走りながら】

   そ の ま さ か で ご ざ る ぅ !

   ぬぅぅぅおおおどりゃあああああーーーッッッ!!!!!


黒猫:ぎにゃあああああああああああああ!!!


   【四拍】


   はひぃ、ひぃ・・・し、死ぬかと思った・・・。


大和:はっはっは! いや、人間死ぬ気になれば何とかなるものだのう!


黒猫:ホントに死んだらどうするんですかぁ!!(ボク人間じゃないけども!)


大和:まぁまぁ、こうしてお互い生きておるし、立ち往生もせずに済んだし、

   何も問題はないでござるよ!


黒猫:ええぇえぇ~~~~~・・・・・何の解決にもなってないような・・・。


大和:おおっ、これが目的地の町か! 中々に大きい街であるな!


黒猫:あっ・・・ほんとだ・・・お昼だともっと賑わってそうですね・・・!


大和:うむ。

   さて、名残おしいが拙者は今夜の宿を探すゆえ、ここでお別れでござ

   るな。


黒猫:はい! ヤマトさん、いろいろありがとうございました!


大和:なァに、こちらも良き旅の話し相手になった!

   ではさらばだ! 達者でのう!!


【三拍】


黒猫:さてと・・・ええと、魔女様に言われたお店の名前は・・・・・、

   ! あ、あった!


魔女:ふふふん、どうだい! これで前回の借りはきっっちり! 返させてもら

   ったからね!


錬金魔女:ひ、ひひ・・・今日の所はこれくらいで勘弁してやるさね・・・何せ

     、まだ10割の全力全開じゃあないからねェ・・・!


魔女:はん! 負け惜しみはいい加減にしな!


黒猫:(あっ、いた!)

   魔女様ぁ! ただいま着きましたぁ!!


魔女:あん? !! こんのクソ猫ッッ!!! 【拳骨】


黒猫:ぎにゃあァッ!!! い、痛いぃぃぃ・・・・・!


魔女:ぅ遅いッッ!! いつまで掛かってんだい! それに! 外であたしの事

   を魔女様って呼ぶんじゃない! ご主人様と呼びな! まったく・・・、

   教会の連中にでも聞かれたらどうするんだい!


黒猫:あぅぅうう・・・す、すみませぇん・・・、あ、これ、頼まれた魔法薬で

   す。


魔女:どれ・・・、ん、ちゃんと頼んだやつに間違いなし、と。

   ・・・ごっ、ご苦労だったね。


錬金魔女:(ひひ・・・なんだい、初々しいねェ・・・見てるこっちがニヤニヤ

      しちまうよ・・・) その子が、話の使い魔かい。


魔女:そうだよ。 魔法もろくに使えない、駄猫だけどね。ほら、約束の物は揃

   えたんだ、代金は貰うよ!


錬金魔女:はいはい・・・ひひっ、毎度ありィ・・・。


魔女:さて、用は済んだし、帰るかね。ほら、クソ猫! 行くよ! 


黒猫:はっ、はいぃ!!


錬金魔女:おやなんだい、もう行くのかねェ?

     あと一杯くらい、茶でも飲んでいかないのかィ?


魔女:こちとら、あんたみたいに暇じゃないのさ。このとおり、手のかかる使い

   魔もいることだしね。

   また魔法薬が足りなくなったら連絡よこしな。


錬金魔女:はいはい・・・――あァそうだ、森の・・・ってもう行っちまったの

     かィ?

     せっかちだねェ・・・、せっかくこの錬金の魔女様が、ひとつ忠告し

     てやろうとしたのに、勿体無い勿体無い・・・ま、それも運命さね・

     ・・・ひっひっ。


     【二拍】


黒猫(N):帰りを急ぐボク達の頭上には、いつしかまた、真っ黒な雲が広がっ

      ていた。


魔女:やれやれ、また雨が来そうだね・・・ついてないったらありゃしない・・

   ・・・急がないとね。ほら、クソ猫! さっさとおいで!


黒猫:は、はぁい、魔女様ぁ!!


黒猫(N):なんだか胸の中がざわざわして、すごく不安にさせるような黒雲だ

      った。



END



はい、黒猫シリーズの外伝と言うか、怪物黒猫に至るまでの間にあったお話として書きましたが、いかがでしたでしょうか?


最初、これを書いたのは実に二年近く前でして、その時試読もしてもらい、更に問題点をいくつかご指摘いただいて直しているうちに三国志台本のお話が入ってきてしまい、【三国志演義・街亭の戦い~泣いて馬謖を斬る~】を書いているうちにいつしか頭の片隅に追いやられ、街亭が書きあがった後も次々三国志台本を書いてしまったがために、実にそれだけの間が空いてしまってからの公開というわけです(;´・ω・)

また何か外伝書こうかなァ・・・。


ではでは!



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