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2.幽霊現象

幽霊ゴースト現象?」


 耳慣れない言葉に、俺は思わず聞き返した。

 もちろん幽霊ゴーストはわかるが、現象ってのがイマイチわからない。

 ただ単に幽霊が出る、ということでは無さそうだ。


「うん。まずは理解してもらうために⋯⋯『スキル』というものが何なのか、から説明しなければならない」


「スキルですか? 多少はわかりますが⋯⋯」


 スキルは大別すれば二種。

 『天授型』と『取得型』。


 天授型は十五歳の成人の儀式で神から授かる。

 『取得型』は、例えば神父の『託宣』スキルのように、普段の行いによって取得するタイプのスキル。

 

 そしてそれぞれに一段上となる『覚醒型』がある。

 というのは誰でも知っている、いわばこの世界の常識だ。

 

「実は⋯⋯キミたちが『天授型』だと思っているスキルの大半は、『取得型』だ」


「えっ?」


 シロの言葉は、いきなり常識の否定だった。


「一例として言えば、キミたち『竜牙の噛み合わせ』で、現状、天授型スキルと言えるものを持っているのは、レナとニックの二人だ」


「じゃ、じゃあ俺の『剣聖』は?」


「十五歳までの、キミの努力が生み出した結果だ。それが成人の儀式で示された、それだけだよ」


「エレインの『会計』は?」


「彼女の生まれ持った頭の良さや、才能さ。そういう意味では『天授』とも言えるけど、別に成人の儀式で与えられたものじゃない」


「生まれ持った才能?」


「そうだね。つまり『成人の儀式』自体、本人たちのそれまでの行いや、生まれ持った才能から『君はこの分野に向いているから、この道に進むのが良いんじゃない?』という指標を与える役割、という側面が強いね」


 となると⋯⋯シロの説明が正しければ、ファランの『豪槍』もそうだ、ということだろう。

 

 

 と考えていると、俺はまた強烈な違和感に襲われた。


 俺は、彼から自己紹介なんてされていない。


 なのに、俺は気が付かないうちに、自然と⋯⋯目の前の人物を「シロ」だと認識している。


「それだよ、エリウス」


「それ、とは?」


「キミは今、ボクの事を『シロ』と認識しているはずだ」


 心の中を見通すような言葉に、驚きながら問いを投げた。


「⋯⋯あんた、何者なんだ?」


「取りあえず専門家さ、こういう事の。話を戻すと⋯⋯レナの『聖女』やニックの『飛竜眼』と、君たち『取得型』の三人には大きな違いがある」


「違い?」


「『法則システム』の存在を感知、看破し、それを運用できるかどうか、だ。」


 ⋯⋯法則システム

 意味不明の単語だ。 


「⋯⋯サッパリわからん」


「わかりにくいよね、この話⋯⋯そうだな、例えば、レナの治癒魔法。本来、人に光を生み出し、傷を癒やす力なんて備わっていない」


「まあ、そりゃ、誰でも使えるってわけじゃないな」


 確かに魔法というのは、生まれ持った才能が物を言うスキルだ、とされている。

 極々稀に成人の儀式で魔法に関するスキルを与えられなかったとしても、その後しばらくして魔法に目覚める者もいるらしいが⋯⋯。

 驚きや不信感から俺が敬語をやめても、シロは気にした様子もなく言葉を続けた。


「だが、レナにはそれができる。それは彼女が聖女として『法則システム』を利用する資質を持っているからなんだ」


 ピンと来ないが⋯⋯つまりレナの『聖女』は、法則システムとやらのおかげで、本来人間が持つ力を越えている、ということだろう。


「ニックの『飛竜眼』もそうだ。本来人間に備わっている機能を凌駕した視力や動体視力、彼はこれを『法則システム』の支援により可能にしている⋯⋯とまあ、ここまでの話は、キミがあまりピンと来ないだろう、ということはわかっていて話している」


「あのな⋯⋯」 


「取りあえず理解して欲しいのは⋯⋯この世界には、人智を超えた『法則システム』がある。それを利用すれば、人としての限界を超えられる、ということなんだ」


「まあ、そうなんだろうな⋯⋯。専門家が言うなら」


「そして本来なら『法則』を一部のスキルが利用しているんだが⋯⋯強力過ぎるスキルは、逆に『法則』に影響を与えてしまう」


「⋯⋯というと?」


「天授型スキルってのは『法則』の効果的な運用だ。独自の船を持ち、川の流れを利用して歩くより速く、効果的に川を下る、みたいな感じの⋯⋯ね。だが、影響が強すぎると川の流れそのものを変えてしまう、ってな感じさ」


「つまり⋯⋯強力なスキルってのは、『法則システム』とやらを歪める⋯⋯って事か?」


「その通り」


 俺の言葉に頷くと、シロは更に説明を続けた。



「実は、今キミがいるこの世界は、強力なスキルにより新たに生み出された世界だ」


「⋯⋯はっ?」


 話が急に、荒唐無稽になった気がした。

 だが、俺の理解を待たず、シロは話を続けた。


「この世界の『法則』には、強力なスキルによって打ち込まれた『楔』がある。それがさっきの話で言えば、川の流れを堰き止めた結果、歪みが表出している、って感じさ」


「楔?」


「ああ。その『楔』が⋯⋯本来なら失われたはずの世界、その残滓を君やエレイン⋯⋯あとはレナに僅かに見せている。それこそがボクが言った『幽霊ゴースト現象』さ。ボクはそれを取り除きに来た」


 うーん、よくわからないが⋯⋯。

 つまり、俺やエレインが最近おかしいことと、因果関係のある何かがある。

 シロはそれを取り除きに来た、ということ⋯⋯か?


「その通りだ」


「何、アンタ、心でも読めるのか⋯⋯?」


「いや、特定の条件を満たさない限り、心は読めない。だが、今キミが考えている事に行き着くように話をした、それだけだ」


 変わらない気もするが、違うのだろう。


「うん、違うよ」


「やめろ、それ、もう⋯⋯」


「うん、やめる。この方が話は早いけど、これ以上やるとキミが怒るからね」


 全部手のひらの上、か。

 ⋯⋯やりにくい相手だな。

 だが、変調を解消してくれる、という提案を断る理由はない。


「じゃあ、その『楔』とやらをさっさと外してくれ」


「いや、外すのはキミたちだ」


「俺たち?」


「うん。これからボクが指定する場所に向かって欲しい」











お知らせ


コミカライズ版の第一巻が1明日発売となります!

小説版を読んだ方にも満足頂けると思います、是非ご予約を!


あと、カクヨムに再編集版を載せてます。

カクヨム版はコミカライズ版に名前を合わせたり、少しエピソードを追加(イグニス再登場とか)してますので、ご興味ございましたら是非ご覧ください。


明日も更新しますので、よろしくお願いします。

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