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僕と彼女の、絵空の話。
窓の隙間から、パタパタと黒い翅に一筋エメラルドグリーンの様な色の入った
綺麗な蝶が入ってくる。
その蝶を見て、彼女は綺麗…と静かに口を零した。
そして、その蝶に向かって手を掲げると
蝶は、さも当然と言う様に彼女の指に止まった。
その一連の行動はまるで、映画のワンシーンの様だった。
きっとそう思わせるのは、彼女の浮世離れした美しい、
なんて言葉では言い表せない程の容姿と、
彼女その一つ一つに深い意味を思わせる様な優雅な行動。
それに伴って、変化する彼女の表情。
今考え直してみると、僕は彼女に恋をしていたのかもしれない。
もう、二度と彼女と話す事は出来ないかもしれないと言うのに…
そこまで考えて、彼女との馴れ初めは何だっただろうと
目をゆっくりと閉じて思い出す。
こうして思いだそうとすると、まるで昨日の事の様に鮮明に思い出せる。
彼女の言葉、表情、仕草…
目をまたゆっくりと開くと、少し視界が潤んでいた。
それを認識した頃、僕は泣いてしまったのか、と自嘲の笑みを無理やり作って
一人暮らしの部屋に、はっ、と響かせる。
その声が妙に虚しく感じて、今度は深い溜め息を零した。