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僕と彼女が生きた日々  作者: 柚葉
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お互いの事

次の日、僕は仕方なくまた彼女の病室へ向かった。


「お!風雅くん!昨日ぶりだね!来てくれたんだ!嬉しいよっ!」


僕を見るなりわざとらしく満面の笑みで言うみやびに呆れ顔で返す。


『みやびが脅したんだろ。』


「脅しただなんて人聞きの悪い!!」


ぷんすかと怒ったようにしているみやびを一瞥する。


何が人聞きの悪いだよ。


実際ここに来るかも悩んだ。


だけど、みやびなら本当に先生に言いかねないから仕方なく来たのだ。


『で、今日は何?』


どうせどうでもいい事だろうけど。


そう分かっていながらも一応聞いた。


「私達はさ!お互いの事を知らなさすぎるんだよ!友達なのに!」


『別に必要ないと思うのは僕だけ?』


「風雅くんだけ。」


「じゃあさ、私が質問するから答えてよ!私も言ってくからさ!」


『……』


「えーと、誕生日は?私は3月28日。」


『……12月9日。』


僕が告げるとみやびはノートに何やら書き始めた。


『何してるの?』


「書き留めてるの。風雅くんの事もっと知りたいからさ。」


僕なんかの事をなんで知りたいんだろう……。


色々疑問に思ったけれど、素直に質問に答える事にした。


「血液型は?私はAB型。」


『同じく。』


「わー!やっぱり!だろうと思ってたよ!」


『大分失礼だよ?てかみやびもAB型だろ。同じじゃん。』


「私はよくAB型ぽくないねって言われるのでーす!」


『絶対嘘だろ』


みやびはかなり、いや物凄く変わっている。


言動もそうだけど、人間として他の人間と全く違うところがある。


僕の生きてきた中で、こんな人間に出会ったのは初めてだ。


改めてみやびを見る。


見た目は普通の高校生なんだけど……中身が大分ヤバい。


「好きな事は?」


『……本を読む事……?』


「何で疑問形なのさ。」


『好きな事ってあんまり無いというか……』


僕は大抵、休みの日は勉強をしたり本を読んだりして時間を潰している。


特に趣味も無いし、部活にも入っていない。


「えー!もったいない!」


『そういう君はどうなのさ。』


「私の好きなことはね……絵を描くことと、読書かな!」


『へー。』


驚いた。みやびはそういう文化的な事はあまりしなさそうだったから。


まぁでも、入院してるからそれ位しかやる事無いのか…。


『好きな作家はいるの?』


「うーんとね、太宰治かな。今太宰治の小説読んでるの。」


太宰治。有名な作家だ。僕も読んだ事はある。


内容は暗いしあまり好きになれなかったけど。


だけどまたしても彼女が太宰治が好きなんて意外すぎる。


しかも、人間失格……みやびが見せてきた本の表紙にはそう記されていた。


「風雅くんは?」


『……江戸川乱歩…かな。』


特別好きって訳でも無いんだけど江戸川乱歩の小説はよく読む。


主に推理小説で、読者が考えもしない事を奇想天外に書いてあって、凄く面白い。


「おおー!私読んだ事あるよ!難しくてよく分かんなかったけど。」


『だろうね。』


「失礼な!」


みやびとのこういう会話にも慣れてきた。


みやびは話しやすい。


まだ会ってから日数は経っていないけど、今まで出会った人間の中でも一番話しやすいかもしれない。


本当の自分で、思っている事をそのまま言えるから。


「風雅くんの好きな食べ物って何?」


そう聞かれると同時に、脳裏に浮かんだ顔。


咄嗟に掻き消して答えた。


『カ、レー、かな。』


「……そうなんだ。私はね、アップルパイ!」


何かを察したのかみやびも触れては来なかった。


今だけは、それがありがたかった。


きっと僕達は、お互い知られたくないものを持っている。


だからお互い、何も聞かない。


『……意外。』


みやびはどちらかというと肉!って感じだからアップルパイが好きなんて驚いた。


……まぁ、女子だったら普通かもしれないけど。


「んん?どういう事かな?風雅くん?」


『……別に、女子っぽいって思っただけ。』


「女子だけど!まぁ、今は言われてるから食べちゃだめなんだけどね。」


そっか。体が弱いだから食べれる物も制限されてるのか。


改めてみやびか体が弱い事を感じらせられる。


みやびはそんな入院しているなんて考えられない程元気なのだ。


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