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習作

夜空を見上げて

作者: ネムノキ

 八十五円の紙パックのオレンジジュースを飲みながら、空を見上げる。つい五分前に見た青い月明かりが、薄い雲に拡散されて点灯しかけた水銀灯みたいな淡い虹色になっていた。

 これで良かったのだろうか? このところそんなことばかり考える。それは、大学の講義のテスト勉強のしかただったり、おかずを作りすぎたからとお弁当にしたことだったり、内容は様々だけれど、同じような問いかけを自分にしている。

 昔は良かった。単純で考え無しだった頃は、「これでいいや」と考えもせずに納得していた。でも、いつの間にかそうは思えなくなっていた。それは、何時からの話だろうか?

 大学受験で第一志望を諦めた時からだろうか? 高校で部活を辞めた時からだろうか? それとも、中学の部活の最後の試合で負けた時からだろうか? もっと前からのような気もするし、つい昨日からのような気もする。確かなのは、『今』納得出来ていないことだ。

 夜の公園は不気味で、梅雨に変わろうとする時期のせいか、風が生温かくて気持ち悪い。だけれど、風が運んで来る土の匂いは、どこか懐かしい。

 そうだ、あの時の匂いだ。

 思考は過去に潜る。高校二年生の夏、友人とキャンプを計画して、行ってきたものの、キャンプ場が閉まっていて結局野宿したときの匂いだ。潮気が無いけれど、間違いない。あの時は、公園のベンチで寝ることになったのも納得出来ていたような気がする。いや、じゃんけんで負けたからといって、何故自分だけテントの外なのだ、と納得出来なかった気もする。確かなのは、下調べをしていなかった自分達が悪い、ということだ。

 そういうこと、なのだろうか? 自分に何か足りていないなら、納得出来ないのだろうか。だとすると、何が足りないのだろうか?

 空になった紙パックを、コンビニの小さいレジ袋に入れ、ベンチの背もたれに体を預けて夜空を見る。黒い背景も、明るい星も、等しく薄い雲に覆われて霞んでしまっている。

 何かが足りないのは、間違いない。なら、それを求め、手に入れることが出来たとして、この空虚な感情は満たされるのだろうか。紙パックのジュースを飲んで渇きは癒えても、小腹は満たされなかったように、その『足りないもの』と『良かったのだろうか』という疑問は別のところ、とでも言うべき位置関係にあるような気がする。

 そう考えて、ふと思った。小腹を満たしたかったのなら、おにぎりやパンをジュースと一緒に食べれば良かったのに、そうしなかったのは、小腹が空いている、というのが自分にとって重要ではなかったからだ。なのに今小腹を意識したのは、たまたま思考に引っかかったからだ。足りないもの、というのはそれと同じではないか? だとすると、『良かったのだろうか』という思考とは無関係なのだろう。

 そうして、思考は振り出しに戻った。だけれど、収穫はあった。

 ジャージのズボンの右ポケットからスマートフォンを取り出し、時間を見る。時刻は午前二時三十一分。ブルーライトが痛い。すぐさまスリープさせ、元の場所に戻す。辺りは、月が雲の向こうにあることが分からない程暗く、とても今から歩いて帰る気にはなれない。目が慣れるまで、座っていよう。

 確か、目が暗闇に慣れるのは暗順応と言ったな、と思い出して吹き出した。そうか、『良かったのだろうか』という思考は、今の環境に納得出来ないことがあるから出てきたのだ。こんな簡単なことも分からなかったのか。

 分かった以上、対策は簡単だ。諦めて慣れるか、自分を変えるかすれば良い。良し、なら、自分の思考や行動を変えていこう、と思う。そうは言っても。

「きっと」

 明日には、諦めて慣れる方を選んでいるんだろうな。楽だし。そんな自分に何とも言えなくなって、背もたれにもたれて空を見た。

 相変わらず、月は雲の向こうで光っていた。

呼んで頂きありがとうございます。

こんな感じのものを書き散らかしては、思うよう表現出来なくて悲しくなります。

最近は特に、心象風景の良い感じの本を読んで参考にしたい、なんて考えていますけれど、それ以前の問題な文章力に頭を抱えていたり。


気が向いたら、ネムノキの小説を読んでダメ出ししてやってください。

では。

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