しぬな
「しぬな」
起きた瞬間、もう分かっていた。記憶がある。
僕は死んだ。何回も。死んで、死んで、やっとこの境地に辿り着いた。
今の僕は明確な記憶を持っている。外に出れば死に、家にいても死ぬ。その記憶を持ったまま起きたのは初めてだった。
誰がこのループを仕組んだのか。いや、そもそも人間の仕業なのだろうか。こんなことが人間にできるはずがない。このループから抜け出す方法があるのか、それを知るすべは分からないが、やってみる価値があることは頭に浮かんでいた。
ベランダに立つ。あぁ八時半だ。本来なら入学式に向かわなければ。でもそんなことはもういい。目を瞑って、スマホを握って、何か変わることを信じて。
僕は自らの身を投げた。
『あぁ〜こうなっちゃいましたか。このパターンは初めてですね。』
『記録消去を受けてるにもかかわらず行動が変化するとなると、やはり消去システムの不備かもしれんな。一応、もう少し実験を続けてみよう。』
『あ、このスマホどうします?ベコベコですよ?まだギリギリ電源つきますけど。』
『じゃあ残しておけ、新しいものを用意するのも面倒だ。それにこのスマホは、あれの記録に何らかの影響を与えるらしい。』
ブッーブッーブッー
『あ、そろそろですね。外に出ましょう』
《続けて一万五千四百九十八回、AI行動シュミレートを開始します。係員はすぐに準備を始めてください。繰り返しますーーー》
最後の数字にも一応意味があります。
気になる人は調べてみてください。