友達
朝の身支度を終えた私は急いで家を出た。
「おっはよ〜!ちさちゃん!」
笑顔で元気な声をかけてきた彼女の名前は橘月実。
ふわふわとした明るい色の髪の毛、垂れた目、おまけに左目の下には泣きボクロ。
私とは真逆とも言えるタイプで、同じ女である私ですら抱きしめたくなるような可愛らしい女の子だ。
彼女とは小学生の頃からの幼馴染で、家が近いこともあり何年もの間毎朝私を家まで迎えに来てくれている。
「おはよう、月実」
私も笑顔で応えると、さらに彼女は嬉しそうに笑いかけてくる。
「じゃあ、行こっか」
私がそう言ったと同時に二人で歩き出した。
最寄りの糸町駅まで徒歩十分程度。
糸町駅から電車に乗り一時間半かけて、美真城駅に着く。
美真城駅から五分程歩けば、私たちの通う美凪高校だ。
教室に着いた私たちはホームルームが始まるまでの間、雑談をして時間を潰すことにした。
「いやぁ、にしても慣れるまで通うの大変だね〜」
「そうだね…私もう帰りたい…」
「何言ってるのちさちゃん!もしかしたら今日、ちさちゃんが言ってたあの人に会えるかもしれないんだよ!」
「そんな簡単に会える訳ないよ。」
弱気になっている私に、彼女は頬っぺを膨らませた。
「もう、そんなんでいいの?せっかく同じ高校に入学したのに!」
「そうだけど…あの人と友達になりたい訳じゃないし、私はファンみたいなものだから彼が歌ってる姿をまた見れればいいんだよ」
「ふーん…そうなんだぁ。ちょっと安心しちゃった」
「え?なんで?」
ガララッ。教室の扉が開き、先生が入ってきた。
「はい、じゃあそろそろチャイム鳴るから席ついてなー」
そのまま流されるように席についた私たちは先生の話を聞き、ゆるい感じの校内見学をしてその日の学校生活は終わった。
帰りも月実と一緒に帰ったのだが、学校でした話なんて忘れてしまった私たちは全く違う話で盛り上がり家に帰った。