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憧れの人
私の名前は倉木千桜緒。
私には憧れている人がいる。
その人を知ったのは中学二年生の時で、親に行きたい高校は早めに決めた方がいいと言われ、友達と一緒に高校の文化祭へ行くことにした。
いくつか行ってみたものの、いまいちここがいいというのがわからなかった私は、なるべく近場に決めたかったのだが友達に誘われるがまま、家の最寄り駅から片道一時間半かかる美凪高校へと足を運んだ。
クラスごとの出し物、食べ物や飾りつけ。今まで行ってみた高校と大した違いはなく、普通の文化祭って感じだった。
「あぁ、退屈だ。」しけた顔で歩いていた私の耳に、それは突然入ってきた。
体育館から聞こえるその音楽に、無意識のうちに惹き付けられていた。
気がついた時には、私はステージに立ちギターを弾きながら美しい声で歌う彼に、見入ってしまっていた。
他の楽器の音に劣らない存在感のあるその声、目にかかった黒くて綺麗な髪、細身でスラッとした体の立ち振る舞い、全てに心惹かれていた。
私の名前は倉木千桜緒。昨日入学式を迎えた、美凪高校の一年生だ。