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第七話:恩人、死す。

「・・・行ったか。」

フラッとシグルスはよろめいたかと思うと、そう言いガクン、とその場に膝をつき、次の瞬間には倒れていた。

「シグルス様!!」「シグルス様!?」

「・・フン・・・もう限界か・・・この体でも・・・最後に、・・・役に立てたか・・・ゴフッ!!」

ボタボタボタ・・・シグルスの口から大量に赤黒い液体が吐き出される。

つん、とあたりに鉄によく似た匂いが充満した。

「な、なんだ!?なんでシグルス様が・・・」

「黙って!!シグルスさま、喋らないでください!!」

イリアスが能力、血人形ブラッディパペットを使って血が流れ出るのを止めようとしていた。しかし、その能力に反し血液はどんどん部屋の床に禍々しい池を作ってゆく。

「もういい、イリアス。・・・俺は死ぬのだろうな。さっきから体が動かんよ。最後の抵抗とばかりに口を動かしていたが・・・」

ククッ、と実に可笑しそうに笑みを浮かべる。

「・・・この前文献を調べていて・・・。・・・ある予言者プリディクターが過去に記した一節に、目を奪われたよ。」

「・・・?」

今はそれどころではない。それぐらいシグルスは分かっているはずなのに。

しかし彼はそれこそ耳を疑うような言葉を発した。



「5011年、過去より少年来たる。少年、謎の力を宿し、戦闘術学びし後、神へ戦いを挑む。・・・だったか。」



神へ戦いを挑む・・・この世界ではそれはつまり世界への反乱を意味する。

スケールが大きすぎて言葉の意味を掴めないでいる二人にシグルスは言った。

「そんな面白いやつをな。しかもわけもわからず未来へほっぽり出された奴を死なせるわけにはいかないんだよ。・・・イリアス、服を脱がせてくれ。」

「え・・・でも・・・。」

「いいから。」

妙に力強い声・・・渋々イリアスは服に手をかけた。

そして、妙に服が濡れていることに気付く。

「・・・・!!」

いやな予感が脳裏をよぎった。

(まさか・・・!!そんな・・・・・・!!)

そして、シグルスの服を脱がせ終わる―――――。


「イヤァァァァァアアアァ!!」


彼の腹には穴が開いていた。

それも腹の半分以上がぶち抜かれている。

犠牲者サクリファイス。奴の傷は全てこの身に降りかからせた。・・・どっちにしろ三ヶ月後には死んでたんだ。変わりに人ひとり救ったって考えればかなりのプラス――――――。」

ゴフッ、・・・また血を吐いた。

今にもこと切れそうなシグルスは息も絶え絶えに言った。

「バルド。アイツを恨むな。俺が選んだことだ。イリアス。泣くな。お前は大人だろう。

2人とも、奴ら、の、留守、中ヴァルフォー・・・ド家を頼む・・・。」

「シグルス様!!シグルス様ぁ!!」

「ク、クソッ!!オイなんとか止められないのかイリアス!?」

「止まらないんです!!止まらないんですぅ!!」

彼の瞳はもう見えていない。しかし、彼は確かに何かを見ていた。

「・・・き、た・・・のか・・・」

虚ろに。

「わ・・・か、てる・・・・さ・・・。」

しかし嬉しそうに。

「フィ、・・・ーナ・・・」

「止まって・・・止まってください!!」

「シグルス様!!気をしっかり持ってください!!」

ヒュウ、と息を吸い込んで。

「止まれ!!お願い止まってェェエェェェェェ!!」

ハッキリと言った。



「今、行く。」



安らかな顔をして彼は「いった」。




「!!」

突然シュガが顔をバッと上げた。彼の顔は強張っており、それを見たエリィも顔を強張らせた。

あたりには何も注目すべきものはない。それもそのはず、彼らが居るのはヴァルフォード家が存在している『ルーディア大陸』からエクステリオルが存在する『ゼネル大陸』へ行く途中にある草原、『エルジーン草原』。辺りを見渡しても所々にポツン、と存在する木しか無い。

「・・・シュガ?なんかあんのか?」

変に思った優二はシュガに訊いてみた。だが、

「・・・いいえ。何もありませんよ。」

と言ったのでそうか、と言って歩くべき方向を向いた。

シュガとエリィはそんな優二を見て悲しい眼をしている。

明け始めた夜空にキラリ、と星が瞬いた。


まさか自分もシグルスがここで死ぬとは思ってませんでした。

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