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第十九話:最近の若者はキレやすい?嘘だッ!

「・・・さて、まぁ落ち着いたところで、だ。単刀直入に言うがアンタは誰だ?」

あの騒ぎから2時間が経った。

エリィ、誠司、理沙の上げた声は船内全ての乗員の耳に届き、何事かと寄って来る野次馬の対処を終えたのが30分前。

落ち着いて話そうという結論に至り、紅茶とお茶受け(チョコレートクッキー)を用意して、決して広いとは言えない優二・シュガ・エリィの船室でとにかく話す事にした。

重い雰囲気と好奇の目が交差する中、話を切り出したのはシオだった。

「聞いてみれば優二もアンタには会ったことがないという。俺たちもアンタの事など知らん。何の目的があってこの部屋を訪れたのか、そして何故優二の隣で寝ていたのかを話してもらいたい。」

皆が頷きネコミミ女性に顔を向けると、ネコミミ女性はひとつ溜息をついて口を開いた。

「・・・いやいや。会ったこと無いって朝のことをもう忘れてるの?アタシ一応あんたらボッコボコにしてSMよろしく縄でふんじばったはずなんだけど・・・」

「・・・・・?」

一同、首をかしげた。

「ネーチャン、アンタは妄想の世界の住人やったりするんか?確かに『獣貌ビーストフェイス』のおかげで今は獣耳なんて珍しくないけど・・・」

「朝のは変態だよねぇ?・・・いや戦闘になると強かったけど・・・」

誠司と理沙の声に頷く一同。

その中でネコミミ女性だけが項垂れていた。

「・・いやね・・たしかに忘れてたわよ。しょうがないじゃない・・・今までもそう言うことはあったけど・・・でも一応わざとってわけじゃ」


「待て。」


「そんなことはどうでもいい、アンタが言いたいのはつまり・・・あのジャリィーンとかいう男はアンタだったって言いたいのか?」

「そうよ。」

ネコミミ女性がそういうといい加減メンバーの中にも苛立ちが混ざり始めた。

「姉ちゃん・・・いい加減にせえ・・・」

「男だったら・・・殴ってるよね・・・」

それにもネコミミ女性はため息をひとつついて言う。

「今からそれを話すわ・・・だから怒らないで聞いてほしいのよね。」

「あんなぁ・・・」

手をレイピアの柄にかけようとしている誠司を止めるかのように、エリィの声が響いた。


「いいんじゃないか?」


そう言ってからこく、こく、と紅茶を飲むとカップをソーサーの上に置く。

「とりあえず話を聞いてみんと何も進まん。話を聞いてから刃を向けるなりなんなりすれば良いだけ。・・・嘘かどうかを見極めることぐらいできるだろう?誠司。」

「・・・まぁ、正論やけどなぁ・・・」

「納得しなくても良い。今は話す時だ。・・・どうぞ、話してくれ。」

それを聞いたネコミミ女性は紅茶を口に含むと話を切り出した。


「・・・まず私の名前を言って置くわ。あの名前は偽名だから・・・フェンネル・G・フェリア。これが本名よ、フェリアと呼んで頂戴。」

(・・・だからあんなにセンスの無い名前だったのか・・・)

「私は2ヶ月ほど前までガルセィアに居たんだけど・・・あるお偉いさんの怒りを買っちゃって・・・ある魔術師に呪われたの。物凄い強い呪いで同世代の人と戦って負けるまで解けない呪い・・・わたしは小さい時から武術の達人である父の指導のもと厳しい修業を積んできたの。同世代の人たちで戦い方を学ぶエクステリオルなら私に勝てる人が居るんじゃないかって思ったのよ。」

なんだか曖昧な呪いだな。

「けどそれってすぐ解けるやろ?わざと負ければええやんけ。」

「試してみたわよ。でもそれじゃあ駄目だったの・・・どういう基準かしらないけど本気同士のぶつかり合いで負けなくちゃ駄目なの。だから父に負けてもダメだったし、わざと負けてもダメだったわ。」

本当に曖昧な呪いだ。

「近くに強い人はいなかったの?」

「同世代で私に敵う人がいなかったのよ。貴方達も私と戦ったでしょ?だから優二には感謝してるわ・・・」

なんだか引っかかるもの言いだな・・・ていうかこれは・・・


ガタン!!


・・・やっぱり。

その言葉にカチンと来たのか誠司が立ち上がった。

「そらあんなもんぶら下げながら来られたら戦えるもんも戦えんわ!!男として最悪やあんなん!!ていうか気付かんとかおかしいやろ!?」

「・・・それについては・・・その・・・悪いと思ってるわよ・・・でも結局は貴方も負けたじゃない。」

「だから―――!!」

「待てよ2人とも。今はそんなことしてる場合じゃないだろ?」

俺がいさめても誠司は髪の毛を逆立てて怒っている。・・・猫みたいだ・・・。

「うっさいわ優二!!こいつは気づいとらんのかも知れんが俺らは弱いって言われたんや!!こんなあからさまな侮辱初めてやで!?おい、もう一回やってもええんやで!!」

フェリアは誠司がなぜ怒っているかもわからずに次の言葉を出した。

「よ、弱いって言ったわけじゃないのよ、だからその、わ、私が強かっただけで・・・」


ブチッ。


あ、切れた。

しかし今の音は一つじゃなかった気がする。

俺は嫌な予感がして他のメンツを見渡した。

・・・ヤバイ。


エリィはナイフを数本取り出していて、

シュガは背中の大剣に手をかけ、

誠司はもちろんレイピアに手を添えているし、

理沙はガチン、ガチンと拳を突き合わせていて・・・

結花に至ってはモーニングスターをブンブン振り回している。


シオは優雅に紅茶啜ってた。ごついくせに。


「お、おい皆落ちつけよ。悪気があったわけじゃなさそうだし―――」


しかし俺の言葉はシオとフェリア以外の声に遮られた。


「「「「「表ぇ出ろぉおおおぉおぉぉぉお!!」」」」」


結花まで大声出してた・・・やっぱりこーなんのか・・・はぁ。


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