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第十七話:優二就寝後、食堂にて。

「さて話そうか。シオ、優二は休んだんやな?」

ああ、とシオが答える。

「そうか・・・あの事については俺が主に話を進めるけどええな?」

ああ、とまたシオが答えた。

ここは食堂。優二を抜かしたメンバーが勢ぞろいしている。

ジャリィーンは気を失っていたので手当てをして船倉にぶちこんでおいた。

皆が縛られたロープ―――エリィたち以外にも被害者はいた―――で手足といわず全身を縛っておいたので心配はいらないだろう。

おもむろに誠司が口を開いた。

「さて・・・エリィとシュガ・・・。わかっとんのやろ?」

「「・・・・」」

「もちろん聞きたいのは優二のことや。・・・たしか記憶喪失やねんな?その前のこと・・・お前らは知っとったりするんやないか?記憶喪失の少年っつーとこで訳ありな気はしとったが・・・あれ、能力なんか?」

「「・・・・」」

「黙秘か・・・まあこれには関してはええよ、別に。錬金術師アルケミスト魔術師マジシャンが能力で作った武具っちゅーもんもあるのは知っとる。負傷による筋力の増加・・・超能力サイコキネシスの使用・・・優二も道具の力や言うとったからそうなんやろ。大方・・・身体能力の増加やろな。・・・でもなぁ。いくら道具がすごかったってあの動きは只もんやとできひんっつーことはわかるんや。あいつ何かしとったんか?」

「「・・・・」」

「・・・また黙秘かい。まぁええわ。これらについても優二自身に聞けばええんやからな。」

一拍待って誠司は口を開いた。

「・・・なあエリィ。」

「・・・なんだ。」


「なんで俺らが優二を抜かしたこの場を作ったと思う?」


ビクリ、とシュガが震えた。

誠司は続ける。

「あの明るい様子やと優二は知らへんみたいやからな。けどお前らは知ってる。これについて聞こうかと思ってな。」

そういうと誠司は紙の束を机の上にほうりなげた。

バサッと言う音と共にエリィの視界にそれが写る。


『ヴァルフォード家当主、シグルス・ヴァルフォード氏急逝!!暗殺か?』


「―――!!」

「そう言うことや。全貴族に行ってるでこの紙。俺だって一応貴族の息子やからな、こういう情報がまわってくるんは速い。で、下の紙も見てみい。」

そう言われエリィは急いで1つ下の紙を見る。そして、凍った。

シュガがそれに目を通して、口をパクパクさせた。


『ヴァルフォード家は謎の少年と暮らしていた模様』

『暗殺の場合犯人は彼か!?』


「な・・・そんな・・・」

「俺は優二と話してちゃうんやてわかったけどな。貴族は確証がないにせよ容赦はせえへん。・・・狙われるんやないか?」

「・・・そんな・・・。違う・・・」

「あのな。俺らは優二の味方でおりたい。でも得体のしれん奴の味方に、それも守ってやる対象やなんてありえへんやろ?人殺しはしていない。それは分かった。でもこの状態やと信用できへん・・・やから話してほしいんや。」

「・・・・・。」

「エリィ様・・・」

「・・・・・」

「・・・いえ、話しましょう。」

「シュガ!?」

「・・・このままでは彼らも納得しませんし、この状況がいつまでも続くのは嫌です。それに味方は多い方がいい。」

「だが・・・・」

「エリィ様は彼らが信用できませんか?・・・僕は話してもいいと思ってるんですが。」

「・・・・・わかった。話そう。だが・・・」

そういうとエリィは立ち上がって言った。

「長くなる。飲み物を取ってこよう。」

「わかりました。待っています。」

「では、待っててくれ。」

そういうとエリィは行ってしまった。

「なあシュガ・・・」

「はい?」

「何で行かせたんや?そんなことしとる場合やないやろ。」

「・・・エリィ様は自分の心に整理をつけているのです。少しばかり時間をあげましょうよ。」

「・・・そう言われると何も言えんやないか・・・。」


10分後―――


「待たせた。」

そう言ってエリィは戻ってきた。

「飲みモン取って来るにしては遅かったな。」

「優二が眠っているか確認してきたのだ。すまんな。」

そういいつつ飲み物を全員に配ると椅子に腰かけて言った。

「・・・では聞いてくれ。まず優二を保護した理由からだが―――。」


30分後。


「「「「・・・・・」」」」

食堂にはもうエリィ達しかいない。

そのためエリィ達が黙ると食堂は静寂が支配した。

「なんやら話がえらい事になってきたなあ・・・時間跳躍タイムスリップやて?」

「ああ。あいつが話すこと―――特に政治関連は全てが2000年前のことだ。おかしすぎるし辻褄も合わん。」

「・・・ただ単に・・・歴史が大好きで・・・記憶喪失で・・・とかは?」

「あいつは今もケイタイデンワやらあいぽっどやらを後生大事に持っている。最近買ったものだと言っていた上に傷一つなかった。時の経過につれてああいうものは劣化するものだと思うが。」

「そうか・・・記憶も曖昧なものだというしな。」

「どういうことなんだろうね・・・」

「・・・・まあなんにせよぉ話してくれたわ。こんな重いとはな。」

実の兄を亡くし、このような重い問題を抱えていたエリィの心労はどれだけあっただろうか。

「いや・・・聞いてくれてありがたかったよ。感謝する。」

「そか・・・ん?もうこんな時間かいな。」

誠司が時計を見ると11時だった。あと1時間で昼食の時間だ。

「まぁまだ時間もあるし11時半に優二の部屋に集合でええか?」

皆がコクリと頷いた。

「じゃあそれでええか。俺すこしやすむわ〜。」

「ボクもそうしようかな。すこし疲れちゃったよ。」

「朝から色々あったしな。」

「・・・ふぁ・・・ねむ・・・」

誠司達は部屋に戻っていった。

「私は甲板に行くが・・・シュガはどうする?」

「僕は・・・そうですね、部屋に戻って読書でもしてますよ。」

「そうか。ならまたあとでな。」

「はい。」

シュガとエリィは反対方向に歩きだす。

コツ、コツと足音が静かな廊下に響く。朝の騒ぎのせいかほとんどの乗客は部屋に居るようだ。

(・・・・)

部屋に戻る途中、シュガは考えていた。

(確かに身体能力は上がっていた。だが誠司さんの言うようにそれだけではあそこまで動けない。能力らしきものの発現はバルドさんから聞いているけどそんなものがあったわけじゃあない・・・)

何故かはわからないが背中に悪寒が走る。

(何度も自問自答してきた・・・一体優二さんは何者なんだろうか・・・・?)

コツ、コツと靴音を響かせて部屋へと向かう。

疑問を胸に抱きながら。そして、


―――――何が待っているかも知らずに。


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