第十六話:初陣・真剣で・そして・・・
「・・・ありがとう。おかげで僕は性犯罪者になるところだったよ・・・。」
そんなものは既に超越しているように思えるのだが。
「ていうか俺お前が裸なの指摘したよね。」
「・・・上半身の事だろうと・・・・」
ともかく、ジャリィーンはトランクスとジーパンを部屋に急いでとりに行き(そのうえまだ捕まっていなかった人々に見苦しいものをお見せしたうえで)着替えてきた。
「・・・やっぱり上半身は裸なんだな。」
「まぁ、別に服を着てもいいんだが・・・寒くもないので動きやすさを優先したという訳さ。」
なるほど。動きやすさと同時に相手の動きを封じる格好がアレなわけですね。わかります。
「じゃあ・・・そろそろ始めるとしようか。」
「まて。」
「・・・?」
俺が制止の声をあげるとジャリィーンは訝しげに眉を寄せた。
「ひとつ聞きたいことがある。いいか?」
「ふむ。内容によるが何でも言ってみたまえ。」
「簡単だ、何でこんなことしたんだ?」
さっきジャリィーンが服を取りに行った時のことだ。
『なんでおまえら捕まってんの?』
『それは・・・なぁ?』
『いきなり・・・襲いかかられて・・・』
『負けて、縛られて、引きずられて来たんです・・・。』
『じゃあなんであいつはマッパだったんだ?誰も言わなかったのか?』
『・・・変態には言っても無駄だと思って・・・』
とのこと。
さっぱり要領を得ない。
「簡単なことさ。ここでエクステリオル入学生を倒し傘下に入れておけば入学後の僕の地位が確固たるものにもなる。それに―――」
ジャリィーンは構えを取る。
「どれだけ強い人がいるのか・・・気になったからね。」
「・・・・!!そうかよ・・・」
・・・それは素人目に見ても無駄のない構えだった。本当にさっきまでの変態なのだろうか。
背中に冷や汗が垂れる。
「・・・そっちから来たまえ。」
その余裕な言葉にとらわれの仲間はカチンときたのか一斉に騒ぎ出した。シオ以外。
「そんなやつやっちゃえ優二〜!!」
「余裕綽々の変態なんて早よいてまえ〜!!」
「さっさとその変態を倒して私たちを解放してくれ!!」
「・・・・早く・・・!!」
早く解放されたいあいつらは言いたい放題だが・・・。
「簡単に言ってくれるぜ・・・。」
一人、呟く。
優二はこの時代に来てからというもののどうも記憶が曖昧だ。
思い出しかけたり覚えてたわけではないのに口から出てきたり・・・
しかし優二自身喧嘩をした経験はあまりないように思えて・・・
そしてこれは喧嘩などではない・・・相手が相応の力を持っていて自分の常識に当てはまらない場合、それは「死合い」となる。
さっきとはまた違った変態の雰囲気にこちらは飲まれそうだというのに。
どこから攻めるか、どんな攻撃を仕掛けてくるのか、どう動けば相手の意表を突くことができるだろうか・・・
考えるうちに時間は過ぎてゆく。
5分は過ぎただろうか、未だ動かない優二に
「フゥ・・・そちらから来ないのならこちらからいくぞ!!」
痺れを切らしたジャリィーンが襲いかかってきた!!
「ハァァァァァ!!」
大上段に構えたジャリィーンは全力を込めてサーベルを振るった。
・・・?
ブォン!!空を切ったサーベルがうなり声を上げた。
「ふむ・・・これは避けられるか。やるじゃないか・・・!!」
・・・・・・?
優二は右に少し飛ぶことによって「それ」を回避したのだが。
え・・・?遅くないか?・・・・ああ、はいはいそういうことね。
「もう一度行くぞ!!オオォォォォォオォオォ!!」
ジャリィーンがこんどは眼前に柄を構えて突っ込んできた。
・・・・速いんだろうな、あれ。まず優二はそう思った。
だが、腕輪のおかげで身体能力が上昇している優二にとってはその速度はキャッチボールほどに感じられた。
サーベルの横っ腹を思いっきり木刀で叩く。
ガィン!!
鉄の板を思い切り叩いたような音が響く。
ジャリィーンは衝撃に押し負けたようでサーベルごと吹っ飛ぶ。
ドォン!と派手な音をたてて壁に突っ込んだ。
あたりにほこりが舞い上がる。
「けほ、けほ」
「優二!!もっとおとなしくやれ!!」
「・・・・・・」
無茶言うな!!
それにしても・・・
壁のあたりはほこりが舞い上がっていて何も見えない・・・どんだけ汚いんだこの船は。
・・・・やったか・・・?
そう思った瞬間ほこりのなかからサーベルが襲いかかって来た!!
「うおっ!?」
突き、袈裟、唐竹、逆袈裟のコンビネーションを優二は後退しつつ避ける。だが・・・
ドンッ。
「!?壁・・うわっ!!」
ガキン!!
「・・・驚いたよ。君は身体能力だ高いんだね。それに力の流し方も分かっているようだ。木刀なんかで僕のサーベルを受けるなんてね。」
鍔迫り合いの中、言葉を交わす。
「そりゃあ、どうも・・・てめぇこそ化けモンじゃねぇのか?壁に思いっきり体打ちつけといて・・・」
「あれぐらいのダメージなら今までの修練で何度も負っている。辛くないわけではないが・・・ねっ!!」
ガキン!!
「しかも油断ならねぇと来やがる・・・」
もう少し遅けりゃ当たってたな・・・
「ふ・・・ここまで手こずるのは師匠と父上以来だ・・・」
そろそろこっちも反撃開始するか・・・このままじゃ・・・押し負ける。
「だが・・・私は負けるつもりなどないので」
今っ!!
ドンッ!!
「ぐっううぅぅ・・・!?」
優二の放った蹴りがジャリィーンの鳩尾に入った!!
「ふ・・不意打ちとはな・・・・」
「卑怯とかいわねぇだろ?」
「言わないさ・・・これはれっきとした『死合い』なんだからね・・・」
「じゃあ次は・・・こっちから行く!!」
・・・さっきの攻防で分かったことがある。最初の攻撃時に入ったのかサーベルにひびが入り始めている。このまま刃を交えれば勝手に朽ちてゆくだろう。
鳩尾に入った蹴りがよほど重かったのか、ジャリィーンはそこから動けないでいる。
優二が斬りかかるとジャリィーンはサーベルで攻撃を受け始めた!!
袈裟、
ガイン!!
逆袈裟、
ギィン!!ピシッ・・・
やっぱり・・・いけるか!?
唐竹、
ガァン!!ビシビシッ・・・
最後だ・・・ッこれで決まれよ!!
「突きィィィイィイイィッ!!!」
「おおおおおぉぉぉぉぉおお!!!」
ジャリィーンはサーベルの腹で受ける、が・・・
バキィィィィッッ!!
「な・・っ!!?」
「割れた!?」
「いけぇ優二〜!!」
ドスッ!!
「ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅ・・・!!?」
鳩尾に木刀が突き刺さる。ジャリィーンは悶絶しながらゆっくりと地面に倒れた。
「・・・ふぅ・・・。」
「っしゃあああああ!!ようやったで優二ぃぃ!はよほどけ!!」
「うっるっせぇわ!!寝起きにこんなことやらせやがって!!あーもー!!」
「優二・・・ロープ・・・」
「謝罪もなしか!!・・・はぁ・・・まぁいいか・・・。」
優二的には結構いい「死合い」をしたと思うのだが別にあんまり褒めてもらえなかったのでさびしかった・・・溜息をつきながら仲間のロープをほどく。そして最後にシオのロープをほどいているときにシオが話しかけてきた。
「優二、いい『死合い』だったな。」
「!!」
「まぁみんながお前を褒めないのはその身体能力への嫉妬。あと動きに無駄が多いからだろうな。・・・俺たちは少ししかもたなかったから・・・身体能力がいいのに動きに無駄が多いって言うのはやはり惜しいしな。経験を積むことだ。」
(そういうことだったのか・・・・)
「お前は素人同然のような動きをする癖に妙に洗練された動きがあった。修練次第ではかなり強くなれると思うぞ。・・・だから頑張れ。」
「シオ・・・」
「それだけだ。・・・朝からすまなかったな。昼にまたみんなと起こしにくる。」
シオとの話に夢中になっていたので気がつかなかったが周りを見ると誰も居ない。
「ゆっくり休め。・・・じゃあな。」
そう言うとシオも出て行ってしまった。
(シオも・・・もっと影が濃くなれるようにがんばれよ。)
ほとんど空気だから。・・・それにしても皆の様子はシオが言っていたことを差し引いてもおかしかったが・・・
「・・・なんだったんだいったい。」
優二はベッドにもぞもぞと入ると、腕輪を外し目をつぶった。
体力を使って疲れたのか、まだ寝足りなかったのか。
優二の意識は薄れ行く。・・・やがて部屋には規則正しい寝息が聞こえ始めた。
どうもー初の戦闘シーンでしたが・・・どうでしょうか?
それなりにイメージを持って書いたつもりですが、わかりにくければスイマセン。
さて、皆様にお詫びがあります。
前回、ジャリィーン(仮)の奴が変態的行動をとったことに関してなんですが・・・
あれを見た友人の反応がすさまじかったんです。
「お前が変態っていうのは知ってたがあれは流石に引いたぞ!?」
「ちょ、まて!!ラノベだってあれぐらいの表現はするだろう!?」
「確かにそうだが俺ら男が望んでいるのは女のサービスシーン!!俺らと同性のマッパなんざ文字を読むだけで嫌なんだ!!お前と違って!!」
「ちょ、お前俺のことを何気にモーホーにしてるよね!?」
「・・・・え?違うの?」
「・・・・・泣」
多少脚色はしてありますが容赦してください。
こちとらそんな日常的に面白いことがあるわけでもないんです。
まあお詫びとして数を投入します(・ω・`)