第十三話:船室にて。
ガチャ・・・キィ・・・・バタン。
甲板とは違って静かな船室にドアのしまる音が響いた。
「「「ふぅ〜。」」」
優二たちである。
「いやぁ、さ。なんだろ。こっちの世界ってよく言えばフレンドリーな、悪くいえば馴れなれしい人が多いな。人見知りって人に出会ったことが俺一回も無いんだけど。」
「いや・・・お前が来てからは私もないな。たしかに人見知りという人種は今までに数回しか会ったことがないが・・・それにしても今回はすこしひどかった・・・。」
「・・・僕はあんさ・・・」
パチィン!!
「・・・・・・・・・・!!・・・・・・・・・・・!!」
「な、なんでもない!!なんでもないぞ優二!!」
「・・・いや、お前はなんでもないだろうが・・・口に思いっきり平手されたあいつ(シュガ)が痛みのあまり涙目で転げまわってるんだが。」
それを聞き終える前にエリィはシュガの動きを止めて耳元に口を寄せた。
(あぶなかったぞ・・・!!・・・シュガ、忘れたか・・・!?)
(はぅ、す・・・すいません・・・!!)
シュガは暗殺者である。しかしそれを優二には言っていない。なぜなら平和な時代よりやってきた優二に「暗殺者」というものは「重い」だろうと思われたからである。
シュガがいままで優二にばれなかったのは暗殺者らしからぬ武器を持っているのでなんとかばれなかった。・・・その程度である。毒や数々の暗器も荷物の中にはあるし、それらを使いもする。
しかしシュガの背中にあるマントで隠された超巨大な剣―――それが人には「こいつの武器は大きな剣だ」と印象を与えるのである。
実際にシュガと剣を交わせばその印象は変わる。一合目で相手に毒のついた針を飛ばす。それだけで決着がついてしまうから。やられたほうはチクリとした痛みの後に体に力が入らなくなり、倒れる。しかしそれさえもシュガは大剣で殴り倒したように錯覚させるのである。
かといってシュガは大剣をみかけだおしのためだけに持っているかというと違う。そこらの剣使いよりかはよっぽど使えるだろう。その腕もまた、シュガが「暗殺者」だという事実を隠すのに一役買っているのだ。
(・・・頼むからもうこんなミスはしないでくれよ・・・)
(あぁ・・・はい・・・!!)
(ところでなんでさっきからお前は悶えているんだ?)
(あぅ・・・エリィ様の吐息が・・・耳に・・・僕耳は弱いんですぅ…)
(・・・・・・・・)
ゴッ!!
(す、すいません・・・)
(・・・喘ぐな・・・)
そういってエリィはすっくと立った。
「お、おいシュガ大丈夫か?」
「・・・ダメっぽいです・・・」
「おい、そろそろ晩飯の時間だ。準備をして食堂へいこう。」
「あ・・・ああ・・。」
(なぁ、一体何言われたんだ?)
(ひゃあ!・・・いえ・・・べつに・・・)
(・・・・喘ぐな・・・)
どうやら男女は問わないらしい。