第十二話:声をかけてきた四人。・・・これは新たな出会いの予感!!
話かけてきていたのは真後ろに居るチャラ男のようで、そいつは話を続けた。
「それでな。どうやったらあんな動きできんのかなぁ・・・なんて。思ったりして?」
「何で最後に疑問符なんだ?」
「いやぁ初対面で馴れなれしすぎるチャラ男に教えてくれる人っておるんかいな・・・って思って。」
自覚はあるのかこの男。
「全部道具のおかげさ。つーわけで・・・エリィ、俺たちの部屋いこうぜ〜。」
「うむ、そうするか。」
「ちょ、ちょっと待ちいな!!そら無いやろ!?折角俺らが勇気出して声掛けたんに!!」
「知らん!それはお前らの都合だ!俺は荷物重い!!置きたい!!眠たい!!寝たい!!こっちにはこっちの都合があるんだ!!それに―――。」
「・・・それに?」
さっき俺が目立ちすぎたせいで周りの奴らまで俺たちに話しかけようとしてやがる。十分騒ぎになっているが、これ以上の騒ぎは御免だ。
「―――。いや、なんでもねぇ、じゃあな。・・・行こうぜエリィ、シュガ。」
「ちょい待ちいて!!せめて自己紹介しあおうや!!」
しつこい奴だな・・・こいつの仲間は苦笑してるしこいつはこいつで薄い眼キラキラさせやがって・・・
・・・だが初対面でもこういうフレンドリーな奴がいるってのは嬉しいな・・・。
「しょうがないな・・・わかったよ。自己紹介終わったら解放してくれよ。」
「するする!!するからあんさん達の名前はよ聴かせてくれや!!」
・・・そういう時って普通自分から名乗るもんじゃないのか?
「・・・優二。桐谷優二だ。武器は木刀を使う。・・・まぁ、気軽に優二って呼んでくれればいい。」
ちょっと戸惑い気味の自己紹介だったが・・・
「おけーい。優二やな。よろしく!!」
気にしていないようで何よりだ。・・・ふう。
・・・次はエリィか。
「エリィ・ヴァルフォード。刃物ならなんでも使える。私もエリィと気軽に呼んでくれて構わない。」
「エリィさんね。・・・呼び捨てでええ?」
「ああ。」
「よろしくなぁエリィ!!」
おお・・・すげえ。なんだあの心に土足で入ってくる戦法は・・・。
しかしあいつがやると何故かムカつかない。あーいうのを癒し系って言うのか?
「シュガ・フォンドヴォウです。・・・武器は刃物と・・を少々・・・」
シュガってそんな名前だったのか!?・・・ていうか武器の説明の時よく聞こえなかったな・・・
なんか隠したいことでもあんのか?
「シュガなぁ。よろしく!!・・・しかし偉い綺麗な顔しとるんやなぁ・・・女かと思ったわ最初・・・。」
「え?」
疑問符が頭に浮かぶ。
そんなことはない。シュガの顔は確かに整っている・・・だが女と見紛うほどではない。
「・・・それ・・・結構傷つきますからやめてくれませんか・・・?」
あ、シュガ涙目。
「あ、ああ悪かった。ちょ、泣かんといてや〜。(ホンマ女にしか見えへん・・・)」
しかしアイツは目が悪いのか?もしくは・・・いやそれは無いだろう。
「う〜ん皆さんよろしくぅ!!・・・ところでなぁ・・・なんやらそこのお嬢さんの名前聞いた事あるようなないような・・・・」
少しヒヤッとした。そんなに有名なのかヴァルフォード家ってのは?
とにかく話をそらさなきゃな。
「う〜ん・・・そうか?気のせいだろ。・・・で?」
「うん?」
こいつ・・・。
「・・・まさか俺たちにだけ名乗らせるわけじゃないだろうな。」
「・・・あーあー!!ハイハイ!!ごめん忘れとったわ!!」
うわぁ殺意湧くわぁコイツ。マジで。
「じゃあ自己紹介すんで!!俺は佐古誠司!!武器は見ての通りレイピアや!!せいちゃんって呼んだって!!」
「せいちゃん」
「早速!?うわぁフレンドリーやねんなぁ、よろしくなぁゆうちゃん!!」
「ゆうちゃん!?」
「ほな次〜。」
優二の優から取ったんだろうが・・・センスがイイとは言えねぇな。
それにしても初めて日本名の奴と出会ったな。ちょっと親近感が湧く。
そんなことを思っていると佐古が大男に何か言っていた。
「・・・ホラ!!お前や!!自己紹介しんかい!!」
・・・?ああ、大男のターンか。
「菅島シオクマだ。斧を使う。」
「すがしま・・・し、白熊?」
「シオクマだ。桐谷さんとやら。」
「そ、そうか。悪かったな間違えて。」
「間違えられるのには慣れている。呼びにくければシオとよんでくれ・・・よろしく。」
「ああ、よろしくなシオク・・・シオ。」
今のは違う意味で親近感が湧くな。あいつは良いやつだと俺の第六感が言っている。
しかしいやに存在感のある斧だな・・・腕一本でにつきあの大斧ひとつを振り回すのか?
そう思うと敵にはまわしたくないと思った。
「次や。」
佐古がそう言った。
「僕は理沙・シングウ。見ての通り格闘術が専門なの。」
「へぇ、そうなのか。やっぱり女〜って舐められたりするときってあるのか?」
気が強そうなのに僕っ子か。おまけにポニテ。う〜ん・・・ストライク。
「そういう奴は誰だろうが構わずぶん殴ってるけど・・・もしかして君もそうなのかな?」
ジロリ、と疑惑の目で見られる。
「まさか。俺の知り合いにだって女で強いやつが居るからそんなこと言えないよ。実際自分で勝てないんなら弱いとか言えないし・・・女がどうのこうのなんてのは言い訳だと俺は思う。男にとっても、女にとってもな。」
男尊女卑は馬鹿げてると思ってたけど・・・男女平等だよな。そのかわり女に力仕事さっせるなんて〜、とかワケのわからない言い訳は聞かないけどな。ウン。
「そう・・・そう言ってくれて安心したよ。」
「え?」
俺はただ自分の考えを言っただけだが。
「だってエクステリオルへ行くってことは同級生になるかもしれないんじゃん・・・同級生にそんな差別意識持っている人がいるなんていやだから・・・さ。」
と、時折見せる気弱な態度!!ストライクツー!!
「・・・大丈夫だよ。そんなこと言う奴がいたら思い知らせてやればいいのさ。もちろん、俺や佐古とかのチカラじゃ意味がないからアンタのチカラでさ・・・。」
「・・・そうだね!!ウン、ありがと!!・・・あっ!!」
「?」
あっちへ戻ろうとした彼女は何故かこっちへまた戻ってきた。
「どうしたんだ?」
「いや、そのさ、アンタって呼ばれるのなんかいやだからちゃんと僕の名前呼んで欲しいなって思って。・・・いいよね?」
身長が高いといえども少し俺より背が低い彼女。必然的に俺を見上げる形になる・・・
少し日焼けした肌、大きな目、・・・上目がちって言うのはどうしても睨みと変わらなくなってしまいがちなんだが・・・これは・・・ダメだ!!
俺は必死で目をそらす。
「うっ・・・い、いいよ。うん。また後でな、シングウ。」
「うん!!じゃね!!」
あの意味不明な色気には勝てん!!ノースリーブから谷間覗いてたし!!
三振バッターアウトだ畜生!!
「・・・エリィさん・・・?僕何かしたでしょうか・・・」
「・・・・シュガは悪くない・・・・」
なにやら後ろからとてつもなく大きな殺意を感じる・・・・。
振り向くのも怖いだと!?背筋がぞくぞくするぜ・・・この俺が・・・恐怖を覚えるなんて・・・!!クソッ、なんだってんだ!!
そんなバカなことを考えてる間にいつの間にか目の前に眼鏡っ子が来ていた。
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
ダメッ耐えられない!!もう私この空気に耐えられないのよっ!!
「・・・初めまして。」
はうあ!!
突然の声に体が震える。そ、それにしても低い・・・いわゆるハスキーボイスだったぞ!?
かわいらしいお声かと思いきや・・・・だがその差がイイ!!
「エリィさん・・・」
「・・・・・大丈夫、まだ。・・・大丈夫だ。」
心なしか後ろの殺気が増大したような気がする。背筋がチリチリしやがる。クソッ・・・エリィの奴は一体何にキレてんだ!?
ここからじゃあいつらの会話が聞こえない!!
「は・・・初めまして・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
また!?また沈黙なの!?なんか言って、じゃないと俺の心がブレイクしそう!!
「・・・鈴浜結花・・・す・・・ず・・・は・・・ま・・・ゆ・・・い・・・か。」
な・・・なんでこんなゆったり口調なんだ?
もしかしてマジで無口キャラ?・・・ハッ!!俺も自己紹介しないと!!
「・・・お、俺は―――。」
「桐谷・・・・優二。」
遮られた。・・・そういえば自己紹介もうしてたや・・・。
「お、おー。優二って呼んでくれな。」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・武器。」
(話とんだ!?)
そういって彼女はモーニングスターを取り出した。床に鉄球が当たり、ゴトリと重い音を響かせる。それは鈍い光沢を放っており、ところどころ色が違うのはこれまで餌食になった犠牲者のものだと思われる。
何かって?言えない!!言ったら俺足の震えとまらなさそうだもん!!
「・・・重そうだな・・・。」
「・・・・・潰すの。」
・・・今さりげなくグロイ事を言った・・・
「・・・。」
「これで、潰すの。・・・グシャッ・・・とか・・・ゴキッ・・・とか・・・頭に・・・こう・・・グルンって・・・そしたら・・・」
「あーーー!!いやぁぁぁ!!やめて!!俺そう言うのダメ!!やめてよぉぉぉぉぉ!!」
たまらず俺は絶叫をあげる。ヘタレって呼んでくれてもいい、でも俺はあれに耐えられなかった!!あんな虚ろで、それでいて楽しかった思い出を見るような眼ぇされたら俺にはもう耐えられない!!
ホラ、後ろで何故かキレてたエリィもそれを宥めてたシュガも若干引き気味じゃないか!!こんな戦いが普通の世界で育ってない俺があいつらでさえビビる恐怖に耐えられるわけがなかったんだって!!
そんなちょっと涙目の俺をみて彼女は笑う。
「・・・クス。」
そこに先ほどのような腹黒さは微塵も無くて。
「・・・・バイバイ。」
優二が笑顔に見とれている間に、彼女はとてとてともといた位置に戻って行ってしまった。
「・・・・・。」
「ハハ、優二!気にせんほうがええで!!」
誠司が少しうざい笑い声を上げつつ誠司が話しけてきた。
「・・・・?・・・・・?な、なにが?」
俺は少し混乱していた。・・・なんでこいつは大して親しくもない相手にこんなふれんどりー?
まぁ、そこが魅力なんだろうが。
「からかわれたんよ。まぁ、結花がからかう奴は好意持った奴だけや。仲間内では理沙きゅんぐらいしかおらへん・・・言っとることはグロても、あれはあの子なりの愛情表現なんや。仲良くしたって・・・。」
(理沙きゅん?)「・・・うん・・・。でもさ。」
「?」
「グロイのが愛情表現ってのは嫌だな・・・」
「・・・・・。」
とりあえず全員の自己紹介が終わったので、約束通り優二たちは船室へ荷物を置いてくることになった。せっかく仲良くなったので「晩飯時に」と約束していったん別れることにした。