第十話:暴食降臨!!
朝。それは一日の始まり。
町の人々は鳥の声に目覚め、今日一日を生きることに気合を入れる。
そして顔を洗い、服を着替え、朝食を摂るのだが―――。
ここには朝食を食い尽くすことに気合を入れている者の姿があった。
「やっべぇ、んぐ・・・ゴクッここ料理美味ムグムグいなぁおい!!」
「優二、お前の時代にはマナーと胃袋の限界いうものがなかったのか?」
そう、桐谷優二。彼こそは宿屋の食糧庫の中身を食い尽くさんとする人であり、魔物だった。
「ダメです!!在庫持ちません!!」
「おい、奴の追加注文だ!!ガレアノスパゲッティとベルセルクポテトフライ!!」
「なにぃ!?どれだけ食うつもりなんだアイツは!!」
「ク、クソッ・・・買い出しは何をしている!!」
「もう買い出しの体力持ちません!!限界です!!」
戦場よりも忙しい厨房にまた悪魔の声が響き渡る。
「スイマセ〜ンウィングバードのからあげとビッグビッグピッグの丸焼き一つづつ〜。」
「あぁぁぁぁ!!悪魔だ!!もう俺が代々継いできたこの宿屋は終わりなんだぁ!!」
「て、店長しっかりしてください!!」
「チキショウ、お前らぁ!!買い出しが戻るまでもたせるんだ!!」
「「「「おぅ!!」」」」
店長のターイセーツヤ・ドーヤが壊れた後も戦争は続く。
「・・・う〜ん恐ろしい方ですね優二さん・・・」
「一時期屋敷の食糧が猛スピードで減っておったのはまさか・・・」
「あぁ〜わりぃ俺だわそれ多分・・・ムグッハンッ・・・ゴクッ」
「ガレアノスパゲッティとベルセルクポテトフライ、ウィングバードのからあげとビッグビッ
グピッグの丸焼きになります!!」
「お〜来たぁ!!ガツガツガツ・・・」
料理が運ばれてきた瞬間すごい勢いで食べてゆく優二に若干引きながら、エリィは店員に言った。
「おい、注文は以上でいいぞ。で、これは会計だ。・・・すまんな。あいつは腹が減ると見境がなくなるのだ・・・」
「ありがとうございました・・・チッ。」
物凄い眼で優二を睨みつけ舌打ちをした後、店員は去っていった。
ふぅ・・まったく・・・兄上にもらった金は足りるだろうか・・・
「ご馳走様〜。」
「「もう!?」」
エリィが優二の暴食をどうにかして直そうと決意した瞬間であった。
「あ〜食った食った!!」
「食いすぎだろう・・・というよりあの量の料理がその体の何処へ消えたのか疑問なのだ
が・・・」
確かに俺の体はあれだけの量を食ったのにいつもと変わらない。だがしょうがない。あの宿屋の料理がうまいのが悪いんだ。そのせいで俺の体には桐谷マジックがかかっているんだろう。
「まぁ桐谷マジックのせいだろう。世の中不思議だよなぁ。」
俺の言葉に二人は頭を抱えた。しょうがない。あいつらには生命の神秘というか俺の高尚な言
葉というか、まぁそういうのが理解できんのだろう。
「朝っぱらからあんなに食べて・・・胃もたれになってもしれませんよ。というより朝っぱらからあんなに料理を作らされた方々がお可哀そうです。」
「うっ・・・」
「それに優二さんのせいで船にも遅れそうなんですから反省してくださいね。」
「うう・・・。」
確かに俺のせいで出発時間が大幅に遅れてしまった。それについては反省している・・・だが・・・そこまで言わなくてもいいんじゃないか?
なんだか俺は肩身が狭くなってきたぜ・・・。
「ううぅ・・・あっ!!船が見えてきたぞ!!」
強引に話を逸らし、俺は船着場に駆けだしていた。
「あ!!待たないか優二!!もうあんなに食うのは許さんぞ!!」
風が俺の頬を叩く。・・・冷たいぜ。しかし逃げると言うのはそれに勝る魅力がある。
あんな絶対零度領域にいてたまるか!!
「優二さん!!話はまだ終わってないんですよ!!」
「優二!!約束だぞ!!破ったら簀巻きだからな〜!!」
そしてその言葉は風に乗ってくるには少しロマンが無さすぎだ。2人とも。
描写不足が嘆かれる今日この頃でございます。