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11)念願の混浴露天風呂

   

   

 テントから顔を出すと、強い朝陽を逆光にして、ピョンピョン飛び回る女性が視界に入った。遠めで見る限り、その人は黒いレディーススーツと短いスカート姿というフォーマルな装いだ。でもなぜか子供のようにスキップをしており、リズミカルに黒髪を跳ね上げていた。


「……誰だろ?」

 女性は背の低い雑草の広場を周回していたが、ほどなくしてテントから顔を覗かせていた俺に気づくと、こちらに駆け寄りながら明るい声で手を振った。


「おはようございまぁす。テルさまぁ」


 服装はリクルートスーツだ。しかも記憶にはっきりと焼きついている。それはさくら姉ちゃんが大学在学中に就職活動をしていた時、そのものだ。


「マジかよ………………」


 溜め息と共に、声を漏らす。

「スカートが短すぎるぜ」

 ──ということは、俺の頭の中をスキャンしやがったんだ。姉ちゃんの姿を見てそんな妄想をした記憶がある。


「これって──プライバシーの侵害だ」


 ようするにタイトなミニスカート姿の女性はクルミだった。昨日より身長が伸びており、艶かしく伸びた素足が眩しく、グラマラスなボディをギュウギュウに押し込んだスーツの胸がはち切れそうだ。でも身体に似合わない(いと)けない表情は、そのまんまクルミで、スーツの胸ポケットには、布で拵えた人形の顔が覗いていた。


「テルさまぁ~」

 長い黒髪を風に踊らせ、こっちに向かって駆けて来ると、膝からダイブ。土煙を上げて地面に正座。普通なら擦り傷だらけで流血状態だが、その女性はけろっとしている。ついでに付け加えると、ミニスカートの中が丸見えだった。


「だよな……」

 期待外れ感が半端無い。やっぱり黒いスパッツだった。


「すけべシスコン……」

 俺の脇から顔を出したサクラの機嫌が悪い。

 急いで平静を装い、大人の色気を振りまく女性に念のため尋ねる。

「あんた……クルミ……だよな?」

「そうぉ~でぇす。わたしはテルさまのインスタンスれーす」

「なんで、姿が変わってるの? 背も伸びてるし……」

 まだサクラは憮然としていた。


「そんなに変わったんですぁ?」

 長い黒髪をワサワサ振って、クルミは自分自身を眺めようと顎を引いた。

「ほんとだぁ。黒い服を着ていますぅ」


 サクラは俺にギラリとした視線を這わせて、

「こういうのが好みなんだ、テルは……」

「ち、ちがう。俺は知らん」

「だってあんたのお姉さんが就職活動してたときの、まんまじゃない」


 ちっ、憶えてやがったのか……。

 ヤツのセリフは間違っちゃぁいない。まったくそのとおりだ。しかしこの姿は度を越していないか?

 確かにさくら姉ちゃんも美人で、まぁまぁグラマーだったが、ここまではち切れていなかった。


「姫様のインスタンスはお前の潜在意識のデータが基礎になる」

 ──って、乾いた声で言うなよイチ。どこに隠れてやがったんだ。


「オマエらが寝ると精神波が途絶え、我々は再生されずに消えている。起きると再生が始まる」

 DVDプレーヤーみたいなヤツだな……て言うか、お前は何も変わらないのはどういうわけだ?


 イチに尋ねたのにサクラが答える。

「あたしの精神が安定してるという、確固たる証拠よ」

 なんだ、偉そうに……。

「俺だっていつも冷静だ。動じたことなど無いワ」

 と言いつつも、ちらりとクルミの胸の谷間を覗いて、ドキドキしてしまう俺だった。


 説得力ねぇ~な。


「しっかし、ひと晩で育ったなぁ……いでででで。やめろサクラ、耳が千切れるってばぁ!」

 へんな妄想が立ち昇る俺を覚醒させるべき、サクラが耳をぐいぐい引っ張る。

「このヘンタイオヤジ。ちょっと色っぽいからって鼻の下伸ばして……こっちおいで、反省させてあげる」


 それを見てクルミがニコニコ。

「うふふ。楽しそうですね。テルさまぁ~」

「どこ見て言ってんだ。楽しくなんかねえぞ。いでででで」


 悲鳴を上げる俺を面白そうに見ていたクルミは、ピョンと立ち上がり、草っ原でスキップを始めた。


 裾の割れたタイトスカートでスキップをして踊る女性を初めて拝んだ。長い黒髪も一緒に跳ね上げて、俺の頭の中で浮かんでくるワードを次々と暴露していく。

「すんごい。あたし大人っぽいの? ねぇテルさま。色っぽいの?」

 ごめんなさーい。もう考えませんので、やめてくれ。

 その言葉はとても火に油を注ぐわけでして……。


「よからぬ考えをすると、思考波となって姫様に届くぞ」

 とか、イチもくだらんことを言うもんだから。


「あんたが変な妄想を続けるから、クルミちゃんがおかしんじゃない。その根性、成敗してあげるわ」

「あででででで……って、サクラ……許して……」

 格闘技の師範代の腕を持つこいつから受けるヘッドロックはプロ級の痛みが脳天に走る。ただしオマケとして肩にはプリンみたいなやたらと柔らかい物体がポヨンポヨンと……。


「サクラさんのおっぱいが柔らかいそ~で~す」

「ば、ばか。クルミ! 痛ぇぇぇぇぇぇぇ」

 さらに締め上げられた。




「朝からうるせぇなぁ」

 クルミが跳ね回っていた向こうの茂みから藤吉が背筋を伸ばした。


「そんなところで寝ていたのか……」

 それにしてもこの男、野武士の頭領だけのことはある。クルミのこの変貌振りを見てもちっとも動じていない。

 それともこいつもバカなのだろうか?


 少しして遠くの茂みから耳をピンと伸ばし、銀色に光る毛並みを風になびかせた狼の顔もぬんと出た。太い肢で立ち上がると、とすとすとイチの前へ歩み寄り。ちょんと、尻を落としてお座りをした。


「──────────」

「そうか。リロード完了したか」


 今日もイケメン忍者野郎は、その容姿とは似合わない英語を、しかも狼に向けて発しているし、狼はピンと立てた耳を左右に向けたままこくりとうなずき、その向こうでは藤吉とサクラが棒切れ使って素振りを始めていた。

 バリバリ現役、しかも実践派の師範を得たんだ。サクラにしたらこの上もないチャンスだとは思うが──にしたってよ。

「どいつもこいつも、能天気なヤツばっかりだ。状況を把握してない」

 俺は落ちていた石を拾い、サクラめがけて投げながら叫んだ。

「こら~。ここは剣道部の夏季合宿じゃねえ!」


 かんっ!


 短い音を上げて、投げた石をサクラが打ち返してきやがった。

「うぉぉ危ねえ」

 こっちへ向かってストレートに飛んで来る石から、急いで身を()ける。


「なんちゅう運動神経してんだあいつ……」

 遠くからおちょくってくるような、サクラの高笑いに肩をすくめていると、

「朝食の準備ができたぞ」

 何の抑揚もない忍者野郎の声に、ゆるゆると首をねじって視線を合わせた。


「なぁ。これからどうすんだ? 早く家に返してくれよ」

 反政府ゲリラの人質になった要人の気分だ───あ。要人の部分は各自で削除しておいてくれよな。


「お……」

 風に乗って何ともいえない美味そうな香りが漂って来た。

「おい。この匂い……」

 焚き火のそばに駆け寄って、湯気を上げる俺のアルミ製のコッヘルの中を覗き込む。

「味噌汁じゃないか!」

 ついでに……。

「美味そう──」

 さらに。

「腹減ったぁ」

 だいぶ経って、

「味噌なんてどうしたんだ……あっ」

 俺のリュックが開けられていた。


「ど、泥棒みたいな真似しやがって……」

「気にするな。ある物は使わせてもらった」

「ということは……」

 味噌汁と共に漂う純日本風の香り。

「米を……あぁぁ。全部使いやがって」

 怒り心頭に発するちゅうものだ。

「バカ野郎。考えも無しで食料全部使ったのか! お前もサクラ並みに脳天気な、」

 と言いかけて声を飲み込んだ。


 サクラの分身だから、そのままんま極楽トンボなんだ。

「ぁぁぁぁ……このトンボ野郎。明日から何を食うんだ」

 一気に脱力して、ぺたんと焚き火の前で尻を落とした。


 そこへ、

「わぁぁ。お味噌汁よ~」

 もう一人のトンボ女が手を出した。

 そして陽に焼けた太い腕にもアルミのコッヘルが、

「おぅ、これは美味(うま)そうだ。いい匂いがしておるな」

 当たり前だ。21世紀製の無添加熟成味噌だからな。16世紀の田舎味噌とは香りが違うワ。


「このお肉も美味しそうぉでぇぇす」

 焚き火の横では、黒猪の肉塊がシズル感的な音を上げていた。

 白米と味噌汁。なぜか朝からステーキだ。ある意味豪華といえば豪華だ。遭難中に味わえる食事ではない。


「では頂きましょう」

 リクルート姿のクルミの声に合わせて朝食が始まった。

「美味しいー」

 満足そうなサクラの叫びに続けて、こくりとうなずいた藤吉が、

「うむ……コクは堪らなく深く、香りも芳醇(ほうじゅん)だ。だが塩気が少し濃すぎるな。これではせっかくの大豆の味を殺しておる」

「いや……」

 忍者野郎は小さく頭を振り、

「……この野生の芋の味を美味く引き出すにはこれぐらいの塩気は必要だ。それより鼻を抜ける香りと、このシャケの身の旨みを楽しまなくてはいけない」

「シャケとは? ほう、この桃色の魚か。こんなのは食ったことが無い」


 お前らは美食倶楽部の会員か!!


「美味しいねぇ、クルミちゃん」

「はぃ~。生まれて初めてですぅ」


 どいつもこいつも……。


「みんなして脳天気に食通ゴッコをしてる場合じゃねえだろ! 食料を全部使い切りやがって……。イチ! これからどうすんだよ」

 サクラがきょとんとした目を俺に向け、イチは黙々と白米を噛んでいた。

 視線だけは俺から外さずに、「……………………」だった。


 黙秘かよ───。


 焚き火が爆ぜる音だけになった。

「なんで全員で黙り込むんだ!」


 焦っているのはお前ひとりだ、とでも言いたげな視線の集中砲火を痛く感じながら、口の中に残っていた白米を飲み下した。


「……それよりさぁ」

 と切り出し、何やら文句を垂れるサクラ。

「テル。臭いよ」

「なんだよ、こんな時に?」

 サクラは自分の腕やら、クルミのさらさらした頭を嗅いでは「臭い臭い」と連呼した。


 クルミも臭いなんて分かるのかどうだか知らないが、一緒になって可愛い鼻をくんくんとさせ、風に黒髪をはためかし顔を上げて、告げるかのように、

「テルさま、くさ~い」

「な、何言ってんだ。デリケートな問題だぞ。そう連呼するなよ」

 と言い返すが、やっぱり気になり自分の身体を嗅いでみる。


 なるほど臭いな。二日間風呂に入らず、焚き火の煙を浴び続けると、人間も燻製になる、ということに気づいた。

「──ほんとだ。炭臭いな」

「どこかでお風呂入りたい、テル」

「入りたぁーい」

 クルミも声を揃えた。


「拙者も湯船に入るのは十日ぶりだ」

 堂々と宣言する野武士。

「きたねぇなぁ」

「何が汚い。お主、考えが短絡的過ぎる。湯船に入ったのは十日前と言ったが、日々毎日、川の流れで身を清めておるワ」

「じゃテルが一番バッチィね」

 サクラめ、人をバイ菌みたいに言うんじゃない。


「はっ、そんな悠長なことを言ってる場合じゃない。俺たちは遭難した上に、大事な食料を全部使い切られたんだ。もう風呂どころじゃねえ」


「───────────」

 無言でテツが立ち上がり、シダの林の奥をギンッと睨んだ。

 まぁ狼がペラペラ喋ったら、それはそれでとても困るわけで──。


 イチもぐいっと、その細身の体を直立させた。

「いいところがあるらしい。食事が済んだら移動するぞ。早く食え」


「いいところってどこだろね、テル」

「知るかよ。でも話題からいって、風呂屋じゃないか」

「え? お風呂屋さんですか。クルミ初めてでぇす」

「いやいや。紀元前400万年に風呂屋は無いから」

「時代を飛ぶの? クルミちゃん」

 尋ねるサクラに、クルミはポカンとしている。その気はないらしい。空は晴れ渡り、とうぶん霧が降りてきそうな気配は無かった。



 小一時間して───、

 21世紀の高校生男女ペアと、16世紀の野武士の頭領、そしてリクルートスーツ姿の少女と得体の知れない忍者。先頭を切るのは銀のたてがみも勇壮な狼。という、とっても素敵なパーティを組んだ俺たちは、ジャングルを一列になって進んだ。


 まるでRPGの移動シーンだと?

 ばーか。ゲームばかりやってんじゃねえぞ。こっちはマジでリアリティだからな。バーチャルじゃねえぜ。


 もちろん先頭はテツで、二番手が藤吉、そしてサクラとくるみ、少し離れて俺。しんがりから全体を見張るように忍者野郎だ。テントはテツが首に掛けているので、サクラはまた手ぶらで口笛を吹いて、気楽な散歩気分だ。


 鬱蒼と茂るシダのジャングルを抜け、山を二つ三つ登り下りする。周りは緑一色で、さすがにここまで来ると飽き飽きしてくる。たまには赤色とか黄色とか原色を目に流し込みたくなる。


「おい。どこへまで行くんだ。黙って付いて来たけど、さっきの場所からだいぶ離れたぞ。これって広野ダムの方角へ戻っていないか?」

 いいかげんくたびれたところで、俺が頭をもたげた。


 その声にテツが振り返り、イチが代わりに答える。

「もうそこだ」

 さっきの場所よりも、さらに蒸し暑く感じるのは気のせいか?

 それとも、まさか……。


 ──そのまさかだった。


「温泉よ、テル!」

 そのとおりだ。時おり鼻をきつく刺す硫黄の臭いが漂い、いたるところか湯気らしき蒸気が立ち込めていた。


「お風呂屋さんですかぁ?」

 クルミもダッシュで先頭のテツに駆け寄り、一言二言会話すると、ピョンピョンと跳ね戻り、そのまま俺に飛びついてきた。


「お風呂に入れますよぉ。嬉しいですねテルさまぁ?」

 どうもその大人びいたボディでしがみ付かれると、無性に鼓動が高鳴る。ここでよからぬことを考えるとクルミが口に出す。あるいは先にサクラに感付かれるので、とりあえず引き離し、

「シャンプーもあればいいんだがな」

 その長い黒髪を見て言う。

 キャンプにそんなモノを持ってくるヤツはお子様キャンパーだけだ。などと自分の漏らしたひとりゴチを慌てて取り消し、シダの林を掻き分ける進軍を追った。



「やっぱりこいつ何があっても動じないな」

 俺の前を進むちょんまげ姿へ、呆れの視線を向けた。

 長い刀を差した藤吉は、手ぬぐいを肩に掛け、銭湯へ向かう時代劇映画の大部屋役者みたいな顔をして歩いている。


「その手ぬぐいどうしたんだよ?」

「武士たるもの身だしなみも大切なんじゃ。肌身離さず持っておるワ。ほれ、これでヒゲも剃れる」

 小さな短刀も懐から出して見せた。


 ───トンボ野郎め。


 そこから数分後、小高い登り斜面を越えた辺りでテツが立ち止まり、長い鼻面をこちらにひねった。

「着いたようだ」

 狼は何も言わないが、イチに言われなくても解かる。それほどにテツの表情からは感情が溢れていた。代わりに、忍者野郎からは何の気配もうかがえない。

「つまらねぇヤツ……」

 クルミはほがらかに微笑んでテツの頭を撫で回すというのに、イチの野郎は相変わらずの無表情で、さらにつまらなさそうに、

「そこに川が流れている。うまくうめながら利用するといい。まずは姫様とサクラ殿からだ。テツ。お供をするんだ。それがしはコイツを見張る」

 銀狼は大きな頭で俺の腰をぐいぐいと押して二人から引き離すと、尻を地面につけた。

 鋭い目でこっちを睨み上げるテツ、イヌ科特有の裂けた口には、真っ白で鋭く尖った牙が見える。それ以上クルミたちに近づくと容赦しないと、言いたげな眼光で俺を串刺しにすると、二人を護衛するかのように振る舞い、茂みの奥へ歩み出そうとした。


「ふんっ。命まで賭けてノゾキをする気はねえぜ……」

 苦言を漏らしつつも、俺はリュックの中から石鹸とタオルを取り出してサクラに放り投げた。


「エロテル! 見に来ないでよ」

 両手で受け取り、そう言い捨てるサクラと一緒にクルミも可愛い声を上げる。

「こないでくださぁーい」

 口調は小学生、容姿は就職活動の女子大生、その正体はタイムトラベラーという、何だかよくわらない少女に苦笑いを向け、やるせなさに肩をすくめた。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 




「はぁ~い、こっちですよぉ」

 一時間ほどして、茂みの奥がガサガサと揺れ、湯上がりのタオルを旗代わりに振ったサクラが先頭になって出て来た。

 二人とも頬を赤く染めて、髪をしんなり下ろし、濡れた髪から湯気をほこほこ昇らせていた。サクラはともかく、幼げな面立ちのクルミには似合わない色気が漂っており、息を詰めた。


 連中が湯を浴びて来る間に、俺は気になる案件がふつふつと溜まっていくストレスを無性に感じており……。

「サクラ、サクラ。ちょっと来い」

 腕をぐいぐい引っ張り、こっちへ寄せる。

「なによテル。あんたも早く入ってきたら? いいお湯よ」

 何を温泉気分でいるんだ。というか、温泉だったな──なんてことはどうでもいい。


 引っ付けた人差し指と親指をほんの少し離して、不埒(えっち)の尺度がとても低いことを示してから、一応念を入れる。


「サクラ……よぉ~く聞けよ。俺は科学的興味から訊くんだ。やましい気持ちなど、これっ、ぽっちも無いからな」

「なによ?」

「いや。俺は連中がどこまで人間を忠実に形成して……どうかを……だな」

 サクラは何かを嗅ぎつけたように、すんっと鼻を鳴らし、

「イチさんと入って来ればいいじゃない」

「バカヤロ。男なんか興味あるか!」

「科学的興味じゃないの?」

「────っ! まぁそうだが、俺は生物学的にだな……異性学というか……そんな学問ねえ……のか?」

 サクラは呆れた風に、かつ淡白に答えた。

「すごくツルツルしてて、綺麗いだったよ」

「ツルツル?」

 気になる……。とても気になる。ツルツルとは? 何が? どこが?

 サクラの怖い顔を見ていると、それ以上訊くことが出来なかった。


 すまん同士よ。

 ……後は想像に任せる。

  

  

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