表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/34

28

 1日の授業がすべて終わった放課後。

 帰宅部の私は2人を誘って一緒に帰ろうかなと思ったが、2人とも私を置いてさっさと部活に行きおった。非常に冷たい態度である。昨日まではあんなに仲がよかったのに。何だか友情が壊れてしまったようで、とっても悲しくなる。今度会ったら二人にラリアットかましたる。覚えてけつかれ。

 ・・・ところで私は今、ガラガラに空いた電車の中に1人でいる。

 いつもは4人でドアの前でペチャクチャ話して帰るのに、今日は1人でシートに座っている。こんなこと、この3日間で初めての事である。ちょっと寂しい気もするけど、まあたまには1人で帰るのもいいもんだ。のんびりできる。

 ん、でもこのまま家に帰るわけにはいかないのか。お母さんもウィルスにかかってるみたいだから、私を家に入れてくれないかもしれない。そうだった。うっかりそのことを忘れるとこだった。

 困ったな・・・このままでは家に帰れん。それじゃあ私は今日いったいどこで寝ればいいんだろうか。お隣りさんの犬小屋でも借りようかの。

 ガラッ。

 連結用の扉が開く音がする。またあの知らない生徒か。これで3回目だな。何の話をしてるのかいっぺん盗み聞きしてみるか。

 チラッと開いた連結扉の方を見ると、扉の中から緑色の液体が勢いよく飛び出して来る。

「!?」

 その謎の液体は、私が手に持っている鞄にピチャッとかかった。鞄はジュウっという音と共に溶け出し、中に入っている教科書もすべてドロドロになっていく。

「な、何これ・・・!も、もしかして・・・酸!?」

 私はドロドロになった鞄を床に投げ捨てる。するとカバンを貫通した液体が床もドロドロに溶かしていき、下の高速で動く線路が剥き出しになる。と、とんでもなく危険な液体である・・・。

「やっぱりここにいたのね、京子ちゃん」

「そ、その声は・・・由美ちゃん・・・!?」

 何かがペタペタと歩いて連結扉から出てくる。

 出てきたのは、『巨大なカエル』の姿になった由美ちゃんだった。

 彼女は全身が棘のようなイボイボで覆われており、毒々しい紫色の長い舌をペロペロさせて、まるでカメレオンがハエを捕食するかのような姿勢で私を見つめている。どうやらあのマンホールに逃げた芋虫が成長したものと思われる。

「京子ちゃん、あなたみんなに忘れられちゃったでしょ?ふふふ」

 ペッ!ペッ!と由美ちゃんは立て続けに緑色のネバっこい粘液を飛ばしてくる。

「わたたたた!」

 私はその粘液をギリギリのとこでかわす。粘液が付着してしまったシートや吊り革が次々に溶け、手すりの金属までもがドロドロに溶け出した。こ・・・こんなのをもし体に浴びたら、確実に死ぬ!

 舌なめずりをしながら、由美ちゃんは私を見つめる。

「京子ちゃん。あなたヒマワリ畑のこと、覚えてる?」

「え・・・」

 ヒマワリ畑・・・というと、私が良くんと小さい頃に歩いた、あのヒマワリの群生のことだろうか。

「な、何で由美ちゃんがそのこと知ってるの?」

「あたしもいたからよ、そこに。あたしは自分がどうしてこの世界にいるのか知ってるわ・・・。すべては、あの装置が原因なのよ」

「それって、例の転生装置ってやつ?ねえ教えて、それって一体何なの・・・?」

「ふふ。あなたの古いご友人に聞いてみたらどう?彼もそこにいたはずよ、あのヒマワリ畑に」

 私の古い友人って良くんのことだろうか。良くんも、由美ちゃんの言ってること知っているんだろうか?

 よ、よし。さっそく彼に聞いてみよう。

「ねぇ良くん、あたしの声が聞こえる?聞こえたら返事をして」

 ・・・。

 ・・・。

 ・・・・・・?

 ダメだ、返事がない。いくら待っても何も起きやしない。何でだろ。もしや居眠りをしてるんじゃあるまいな。

 ん・・・まさか。遥ちゃんと貴志くんに続いて、良くんも私のことを忘れちゃったんじゃ・・・。

 は!そうか!

 これは元々、良くんと私の以心伝心を遮断するためのウィルスだったんだ。

 良くんが私の事を忘れてしまえば、良くんは私の事を助けようとしなくなる。そうすれば、私を守ってくれる人は誰もいなくなる。そういうことだったのか、このコンピュータウィルスの目的は。いま気がついた。

「顔が青ざめてるけど、どうかしたの京子ちゃん?ふふふ。あなたまさか、あなたを唯一守ってくれる人にも忘れ去られたんじゃないわよね」

 目の前にいる由美ちゃんが口をクチュクチュしている。粘液を飛ばすための唾液を集めているのだろう。私は後ずさりながら、彼女から目を離さないようにする。

 良くんが助けに来てくれないとなると、由美ちゃんに対抗できるだけのものがもう何も無い。あるとしたら、この自慢の体重ぐらいである。だがその体重すらも、今の怪物となった由美ちゃんには勝てそうもない。私にはもう彼女に勝てる要素は何1つ残されていない。

 ・・・ここにいては危険だ。別の車両に逃げなきゃ。

 私は後ろに振り返り、全力で走って隣りの車両に移る。

 由美ちゃんが追って来れないよう、すぐにドアをピシャッ!と閉める。振り向かずに次の連結扉までダッシュし、またドアを閉める。それを何度も何度も繰り返し、先頭の車両まで辿り着く。

「はぁ・・・はぁ・・・ふぅ・・・疲れた・・・かなり走った」

 息を切らしながら最後に閉めた連結扉を警戒する。

 ・・・追ってこない。

 もしかしたら私が閉めてきたドアを開けるのに苦労してるのかもしれん。よかった。いい時間稼ぎになる。

 さてどうするか。この先に移動することはもうできない。電車の窓から飛び降りて逃げるか。いや、このスピードである。そんな勇気あるわけない。

「京子ちゃん、こっちよ」

 呼ばれた方を見ると、由美ちゃんが電車の外側の窓にヤモリみたいにへばり付いていた。彼女は腹を車内に向け、顔をこちらに向けて笑っている。

「ど、どうやってそんなとこに・・・?」

「言ったでしょ?どこへ逃げてもムダだって。わかるの・・・あなたのいる場所が」

 逃げてもムダか・・・。くっ、どうする!

「怖がることはないわよ。あなたがドロドロに溶けたら、駅員さんが酔っ払いのゲロと一緒に綺麗に掃除してくれるだろうから。うふふふ・・・ギャッ!」

 笑っていた由美ちゃんが悲鳴を上げてどこかへ吹っ飛んでいく。どうやら駅の構内に入ったため、ホームに設置してある柵か何かにぶつかったと思われる。

 彼女が私の視界から消えたあと、電車はどんどん速度を落としていく。しばらくして電車はゆっくり停まり、ドアが開く。

 どこの駅だろ。すごく大きいな。察するに、かなり栄えた街と見たぞな。

『京子ちゃん、ここで降りよう』

『うん』

 聞いたことのある声がしたのでそっちの方を見ると、そこには良くんと私がいた。

 ?

 何で2人がここに・・・?そうか、またあの映像か。まさかこのタイミングで2人を見るとは思わなかった。

 呆気にとられている私を置いて、良くんと私の2人はさっさと電車を降りて遠くへ消えてしまった。考えてても仕方ない。とにかく2人を追いかけよう!何か分かるかもしれん!

 私は電車を降り、すぐに巨大な駅のホームをくまなく見渡す。誰も歩いて無い。不気味なほどガランとした駅である。

「2人は・・・。おかしいな、どこにもいない。出口にでも向かったのかな・・・」

 私は迷いながらも、駅の構内をくまなく捜す。

「あ!いた!」

 予想した通り、2人は駅の出口に向かって歩いていた。誰もいないので見つけやすい。

「良くん!」

 私が呼びかけても2人はこっちを振り向かない。2人は私を無視して、駅の改札口を抜けて外に出て行ってしまった。まずい、見失う!

 私は猛ダッシュで自動改札機まで行き、走ってる勢いのまま改札扉を通り抜けようとする。

「おっとと!」

 あちゃー、しまった。そういえば定期もお金も入った鞄って、さっき由美ちゃんに溶かされちゃったんだ。

 どうしよ・・・。改札口を抜けられなくちゃこれ以上2人を追うことができない。くそー。悔しいがしゃあない。諦めるか。

 パカッ!

 目の前の改札口が何故か開く。

「え・・・どゆこと」

 目の前の改札扉が勝手に開きおった。・・・??・・・何で?

 まさかダウンロード型ヒューマノイドの仕業だろうか。でもどこにも彼の姿はない。まだ私は彼を呼び出してはいないのである。

 じゃあ誰が?

 ・・・ま、まぁいい。とにかく今は、2人を追うしかあるまい!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ