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私とダウンロード型ヒューマノイドは、別のホームで待機している電車に乗り込む。チラホラとうちの生徒が乗っているのを見ると、どうやらまだ学校には間に合いそうである。
まさかこんな形で学校に通うことになるとは・・・やれやれ、とんだ1日が始まったの。
溜め息をつきながら、私は適当に空いてるシートに座る。相方は座ろうとせず、周囲をしばらく見渡していた。まだDr.ボマーとかいうのを警戒しているらしい。
「座ったら?」
私はシートをポンッと軽く叩く。
「ん・・・ああ」
そう言うと、ようやく彼は私の隣りに座った。それでもまだいろんなところをキョロキョロさせている。
ドアが閉まり電車が動き出してもずっとダウンロード型ヒューマノイドは車内のいろんな所をジロジロ見ている。よっぽどあのDr.ボマーというのが気になってしょうがないのだろう。
うーむ。しかしこのダウンロード型ヒューマノイド、横顔も良くんにそっくりだな。何だか良くんと一緒にいるような気がしてくるから不思議だ。おっと、そんなことより、
「ねえ、由美ちゃんはどうなったの?」
「由美はあのDr.ボマーとかいうやつのチカラを借りて、どこかでパワーを増幅させている。彼女は今、危険な存在になりつつある」
会ったときからすでに危険な存在なんだけどな由美ちゃんは。
にしてもDr.ボマー、あれはいったい何者なんだろうか。あいつの顔・・・映画館で会ったあの山田悪夫ってやつの顔に似てた気がする。山田悪夫とDr.ボマーって同一人物なんだろうか。
そういえば、Dr.ボマーの話し方は亜規ちゃんに似ていた気がする。うーむ、わからん・・・。
「どうした、何かあったか?」
私が悩んでることに気づいたらしくダウンロード型ヒューマノイドが声をかける。
「あ、ううん・・・。ちょっと考え事してたの。さっきのDr.ボマーってやつ、中村亜規って子に話し方が似てたなって思って・・・」
「中村亜規?誰だそれは」
「そっか、あなたにはまだこのこと話してなかったんだっけ。亜規ちゃんは私が見た夢に出てきた女の子よ。その亜規ちゃんとDr.ボマーっていうバケモノのしゃべり方がそっくりだったわ」
ダウンロード型ヒューマノイドは何か考えている。そしてまたこちらを見る。
「その亜規っていう子のことをもう少し詳しく教えてくれないか?」
「亜規ちゃんの事?私もよく知らないわ」
「覚えてる範囲で構わない」
彼は真剣な目で私を見る。しょうがないので私は夢のことを必死に思い出そうとした。
「・・・えっと、その夢に出てきた子はうちの学校の生徒らしいの。彼女、良くんと顔見知りみたいだったわ。それにすごく親しそうだった・・・」
「京子ちゃんはその子に見覚えはあるのか?」
「ううん、まったく知らない子よ」
「良から聞かされたことも?」
「ええ、1度もないわ。それにその夢、すごく違和感があったの」
「違和感?」
「うん。その良くんは、高校生になって初めて私と会う感じだったの。おかしいでしょ?良くんと私はずっと同じ住宅地で育ったはずなのに」
「京子ちゃんの知っている良と食い違うわけか。確かにそれは妙だな・・・」
ダウンロード型ヒューマノイドは腕を組んで再び考え込む。
「あ、それともう1つ気になることがあるの」
「気になること?」
「うん。あのDr.ボマーってやつの顔、映画館で襲ってきた山田悪夫って男にそっくりだったの。もしかして2人は同じやつなのかなって」
「山田悪夫っていうのはトイレに現れた黒服の男のことか?」
「うんそうよ。あら、よくそんなことまで知ってるわね。良くんとあたししか知らないはずなのに」
「まあ、俺の体は良の想念でできてるからな。良の見たことは大体わかる」
「ふーん、そっか」
良くんか・・・。今頃彼はどこにいるんだろう。元気にしてるんだろうか。
「ねぇ。あたし良くんとはもう会うことってできないの?」
「今はわからない・・・。だが大切なのは、その日が来ることを信じることだ。信じていれば、いつか会える日が来るかもしれない」
信じる・・・か。そうね。あたしができることって、それだけだもんね。
「わかった。信じてみる。あたし良くんと会える日が来ること、信じてみるわ」
「・・・そうか」
私の元気が出たのを見て、彼は安心した様子で、でもどこか哀れむように窓の景色を眺める。
「でも不思議ね」
「何がだ?」
「その良くんが、もういるみたいだから」
「ん、俺のことか?」
「うん」
そのことに触れると彼は何も答えず優しく微笑み、また窓の景色を眺めた。




