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ムー大陸の彼方へ  作者: ずん
エピソード3 新たな6人
31/39

手がかり探し

 緑帆と錬はシーナスの行方を追って、ムドル自治国に入国した。

 シーナスが万が一の逃亡先として指定していた国である。


 ムドル自治国は、大陸に存在する他の4つの国々の総意のもとで、各国間の交易を目的として百年以上前に設立された中立的な拠点だ。

 首都ムドルカは計画的に開発が進められたため、通路は碁盤の目状に区画化されており、街全体は整然とした雰囲気を醸し出していた。


 首都ムドルカに到着した緑帆と錬は、まず宿探しに取りかかった。

 だが、自らすすんで探すまでもなかった。

 客引きが次々と寄ってきては、如何に自分達の宿屋が快適かを訴えてくる。

 緑帆たちは繁華街に近くて、情報収集がしやすい宿を選んだ。

 シーナスがムドルに亡命したのはまず間違いないが、それ以上の情報は何もない。

 ムドルが如何に小さい国だとはいえ、


 ――万が一の時はムドル自治国で落ち合おう


 というシーナスの取り決めは、今考えるとかなり乱暴だ。

 シーナス自身、計画が失敗するなど想像もしていなかったのであろう。


 この状況下でシーナスを見つけ出すのは到底不可能だと緑帆は諦めかけていた。

 だが、意外にも宿屋向かいの酒場で、シーナスに関する手がかりがあっさりと手に入った。


《ミューダ公国の魔導士シーナス》と言えば、ムドルでも知らない者はいない有名人だった。

 ミューダ公国のクーデターも既にムドルカ全体に知れ渡っており、シーナスが亡命してきたらしいという噂まで流れていた。

 あらためて、シーナスが大陸中に名を轟かせる偉大な魔法使いなのだということを認識させられた。


   ◆   ◇   ◆


「別荘とはいい身分ね」

 緑帆は眉間にしわをよせた。

 酒場のバーテンダー、オグの話によれば、シーナスはムドルカ北端に別荘を持っているという。

「そんな贅沢なもんじゃないと思うがね。魔法の研究をする時はずっと籠もるらしいのでさぁ」

 おおよその場所は教えてもらえたが、具体的な場所は現地で訊いてくれということだった。

 翌朝、二人は早速、別荘に受かってみることにした。


 それにしてもムドルカは本当に大きな都市だった。

 聞けば、ムドル自治国の国土の大半を首都ムドルカが占めている。

 街中には細い路地が碁盤の目に張り巡らされており、どこもかしこも人でごった返している。

 これだけ人が多いと、仮にシーナスとすれ違っても気づくことはできまい。

 緑帆は錬と、はぐれないように手をつなぎながら、人混みをかき分けて進んでいった。


 とはいえ、方角を見分けるのには全く困らなかった。

 道は正確に東西南北に伸びている。

 一旦北の方角が判れば、あとは道をまっすぐ進むだけだった。


 繁華街を抜けた後も、すれ違う人々に道を尋ねながら進んでいくうち、自然とシーナスの別荘に辿り着くことができた。

 オグが言っていた通り、そこは別荘というには程遠い木造の平屋だった。

 入り口には扉がない。

 かと思ったが、よく見れば扉は壊されているようだった。

 小屋の中を覗いてみると、泥棒でも入ったかのような荒らされ方で、足の踏み場もない。

 慎重に障害物を跨ぎながら、二人は部屋を歩き回った。


 シーナスの姿はもちろん見当たらない。

 少なくとも、この小屋で奇襲を受けて命を落としたということはなかったようだ。

 ミューダ公国は、緑帆たちの追跡に失敗したとみるや、すぐさまこのムドルに刺客を送り込んだ可能性がある。

 おそらく、シーナスも警戒してこの小屋には寄っていないのだろう。


「これ以上行方を追っても無駄かもね」

「そうかな」

 錬は諦め切れていないようだ。

「だって、私たちに見つけられるようなら、とっくにミューダの刺客が突き止めているはずよ。シーナスはそんなヘマはしないでしょ」


 緑帆は、落胆と疲れでしゃがみこんでいる錬の肩を叩き、出発を促した。


   ◆   ◇   ◆


 二人は昼食がてら酒場へ立ち寄った。

 オグに今日のことを報告する。

「そうかい。まぁ、これだけ噂になってるんだ。そうそう判りやすい場所にはいないか」

「えぇ。シーナスを追うのは諦めることにします」

「それが賢明だな」

「で、これからのことを考えたんですが」

「ほぉ、どうする気だい」

 反射的に聞いてしまってから、オグは後悔した。

 わざわざ面倒な依頼を招き寄せることもあるまい。

「この街で一番有名な魔法使いに会いたいんです」

「へぇ」

(そらきた)

 オグは心の中で呟いた。

「教えてください」

「ん? 何を?」

「有名な魔法使いですよ」

 錬が無邪気に言う。

「無邪気に言いなさんな。会えるわけなかろう」

「どうしてですか?」

「向こうの身になってみろよ。あんたらみたいなのが年中訪ねてきたら、いちいち会ってられるかい」

「……」

 もっともである。

 なんの肩書きも持たない二人の若者が有名人に会うのはどんな世界でも難しい。

 シーナスにしても、通常なら決してお目通りの叶わない有名人なのだ。

「それなら、隠居してる魔法使いはいないですか?」

「隠居だって?」

「例えば、昔は有名な魔法使いだったけど、いつの間にか表舞台からいなくなって、いつしか人々から忘れ去られた……みたいな人ですよ」

 緑帆は、一時流行ったが、直ぐに消えてしまったお笑い芸人の顔を思い浮かべながら言った。

「とんでもないことを言い出すなぁ~。う~ん。誰かいたかな~」

 オグは考え込んでしまった。

 直ぐには思い付かなくて当然だ。

 直ぐに思い付くようでは駄目なのである。

「思いついたら教えてね」

 緑帆は代金をカウンターにおくと、錬を促して酒場を出た。


 いよいよ当てがなくなった。

「もう、観光でもしよっか」

 緑帆が投げやり気味に言った。


「じゃあ、交易ホールに言ってみようよ」

 先ほどまで絶望に打ちひしがれた顔をしていた錬が、うって変わって生き生きとした表情に変わっている。

 そういえば、この世界に来てからというものの、積極的にこの世界を知ろうとしてこなかった気がする。

 錬や景斗はこの世界に関わりを持とうと努力をしている。

 それに比べて自分ときたら、元の世界に戻ることばかり考えて、この世界と真っ直ぐに向き合って来なかった。

「いいわね。じゃあ、見に行きましょうか」

 緑帆は錬に笑顔を返した。

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