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私はアイドル

 

 るんるん♪ 私はトップアイドル! 

 みんなの為に、みんなに夢を見せる為に、今日も笑顔でがんばるの!


「今日もアイドル☆出動で~い!」


「……おやや~?」


 トコトコトコトコ、道を歩いていると……

 なんという事でしょう! 小さな女の子が泣いています! 

 これはアイドルとして見逃せません!

 でもも~、このままだとライブに遅刻しちゃうよぉ~。どうしよ~!


「うぇ~ん」



「むむむ……」


「……泣かないで!」


 マネージャーさんごめんなさい! やっぱり私はこの子を見逃せません! 

 だって私は……アイドルだから!


「泣かないで、お嬢ちゃん。一体どうしたのかな?」


「パパ~! ママ~!」


 なるほどなるほど……どうやらこの子はパパとママとはぐれちゃったみたい!

 よ~しわかった! ここは私がひと肌脱ぐの!


「お姉ちゃんが一緒に探してあげるよ!」


「ひっく……ひっく……」


 かわいそうに。涙をいっぱい流して……

 はやくこの子を、ご両親の所へ連れてってあげなくちゃ!




――――




 いっけない! もうすっかり遅刻だぁ! 

 マネージャーさん怒ってるかなぁ。怒ってるだろうなぁ。

 でもしょうがないわ。迷子の女の子、助けてあげたんだって言ったら……

 きっと許してもらえるよね!


「おやや~?」


「みんな~! 応援ありがと~!」


 まぁびっくり! こんな所で同業者さんに合うなんて! 

 あの子はどうやら、新人さんのようね。

 私にもあんな頃があったなぁ~。しみじみしちゃう。

 よし、ここは一つ、先輩としてエールを送ってやりますか!


「よっがんばっとるかね新人クン!」


「あっあなたは!」


「こうしてがんばってれば……いつかきっと夢は叶うよ!」


「だから、がんばれ!」




――――




 新人ちゃんは勇気が沸いたよう。

 私の一言でより一層せかせかと頑張り始めたわ。

 もしかしたら未来のライバルを育てちゃった? 

 でも大丈夫。私だってアイドルよ!

 はやく私の元まで駆け上がってきなさい! なーんてね♪


「おやや~?」


『新発売! おいしいいちごジュース!』


 ここまで走ったらのどが渇いたみたい。

 むむむ、おいしそうないちごジュース! 飲みたいよぉ~!

 でもでも! 今お財布の中には小銭が少し……トホホ、アイドルなのにお財布はさみしいよぉ~。

 どうしよう、飲みたいな。でも、お金がない。

 う~ん……どうしたものか……


「そうだ!」


「いらっしゃいませー」


 私、ひらめきました! 

 お金がないなら、お金の代わりになる物を払えばいいのよ!

 我ながら名案ね! ほんとはこういう営業みたいな事は事務所を通さないといけないんだけど~。

 背に腹は変えられない! さっそく店員さんと交渉よ!


「ええ!? 新商品の販促ですか?」


 私の作戦はこう。

 アイドルの私がお店の前でこのジュースを「買ってくださ~い!」ってお客さんにお願いするの!

 そのご褒美にあわよくばジュースを一個もらっちゃおうっていう作戦よ!

 我ながら天才ね。さすがトップアイドル! 

 これからのアイドルは世渡りも上手じゃないとね♪

 って、自分で言うな~!



「ジュースいかがですか~! ジュースいかがですか~!」




――――



 なんか、悪いなぁ。

 一個でよかったのに、こんなにたくさんジュースもらっちゃった!

 うーん、私のがんばりを評価してくれたのかな? 

 ふふふ、さすがトップアイドルね。

 でもでも、この恩は忘れないよ! こんどお友達のみんなを呼んで、いっぱいジュース買ってあげるね!


「おやや~……げ!」


「……」


 うう……またきたぁ……アイドルやっててイヤな事その1。

 ファンが増えるのは良いんだけど、なんていうか、こう……

 たまにこういう、変な人がくるのよね。

 勝手に盗撮したり、抱き着こうとしたりとかさ……今回はなんだろう。

 ううっ! 無言で後ろをついてくるよぉ……


「ふええ~~~!」


「…………」




――――



 なんとか撒いたようです! 全く、ああいう人は困った物です。

 応援してくれるのはありがたいけどぉ~、迷惑になる事は、やっちゃいけないよ!



(ブブブブブブ)



 んん? なんかポッケがフルフル震えてます。

 なんだろう……ああ! これ!


「しまったぁ~~~~!」


 いっけない! すっかり忘れてたぁ! 

 マネージャーさんから怒涛の着信履歴がぁ!

 うう……もう完全に遅刻確定だよぉ~。

 これ、でなきゃダメ? 怒られるのヤダァ~!


「も、もしもし……」


「……ひう! ごごごごめんなさい!」


 やっぱりマネージャーさんはおこでした。

 耳元ですっごい怒鳴り声を上げてます。

 私、怒られるのは嫌いだよぉ……褒めて伸びるタイプなの!

 って、今回ばかりは私が悪いんだけどね……


「すいません! すいません! すぐ行きますぅ~!」




――――




「ハァ……ハァ……ハァ……」



 色々あったけど、なんとか会場にたどり着きました! 

 ファンのみんながいっぱい集まってます!

 みんなごめんね~、こんなだらしない私で。

 

 でもでも、お待たせしました! 

 トップアイドル、今ここに到着で~~す!



「みんなー! いっくよー!」



『オオオオオオオオオ!』




――――次のニュースです。先日未明、逮捕されたのは住所不定無職、島田加歩容疑者(38)。島田容疑者はインターネット上に犯行予告と取れる書き込みをした後、少女誘拐、婦女暴行、コンビニ店強盗の三つの犯行を行い、警察の追跡を逃れた後しばらく行方をくらませ、その後自分から最寄の警察署に出頭してきたとの事です。


 取り調べに島田容疑者は、「私はアイドル」「アイドルは夢を与える」「アイドルは舞台に立たないといけない」等と意味不明な供述をしており、警察は精神鑑定も検討しており――――




「みんな~! いっくよ~!」




――――おわり


完全に思い付きです。ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 拙い文章で書かれた作品だなと思いつつ、最後の最後でブラックなオチが待っていました。ただ、Twitterで作者様のお人柄を知っていると、ちょっとオチが読めてしまうのが残念な部分です。    …
2017/07/15 19:59 退会済み
管理
[良い点] とても読みやすいです。 [一言] ラストのどんでん返し。 きっと何か来るとは思っていたけど、これはまた… とても、何だかわらってしまいます。
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