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晩ごはん

夜、私はバイトで疲れて帰ってくる。家では待っている黒猫がいるから、帰る早さは前より格段早い気がする。餌をあげる…じゃなくて、ごはんを一緒に食べるのだ。黒猫もとい、黒音くんと。


「ただいま」

私は一人暮らしということになっている、しかし現状は「おかえり」待っている人がいる。それは、黒音くんだ。

「着替えてきて」リビングのドアを開けるとこちらを見て黒音くんは言う。私のファンシーなエプロンを身につけて、お玉を手にして。………うん、なんだかシュールだね。

長い前髪は、私のゴムで一括りにしておでこを惜しげもなく出している。やっぱり、綺麗な顔をしているから私は、負けた気持ちになる。


「…手伝う」エプロンを身につけようとすると、制止の声があがり一瞬行動をやめた。「…もう、並べるだけ」見てみると美味しそうな料理たちが並んでる。最低でも、3品は作る私のモットーを黒音くんはちゃんとならって3品以上を用意してくれる。その腕前は凄まじく、私よりもかなり上手い。「ありがとう、黒音くん」お礼を言うと、ううんと首をふって顔をそらす。照れている証拠だと、最近知った。


2人向かいあって座り、同時に手を合わせいただきます。を言う。その後、お茶で乾杯をするのが当たり前になった。

「この、ビーフシチューおいしい…私、好物なんだぁ」何気なく言うと、黒音くんは目を見開いて「そうなんだ」とぽつり呟いた。「覚えておく…また、作る」と照れて言うから思わず頭を撫でてしまった。手が届いてしまったから、悪い。もう、こっちの方がなんだか恥ずかしくなってしまった。



「…雹、冷める。食べよ」

小首を傾げて、彼は言う。まるで猫のようで、私は少しいやされた。「うん、そうだ。冷蔵庫の奥見た?」「見たよ。食後に食べよ」

その言葉の通りに、美味しい晩ごはんを食べ終えた後…冷蔵庫の奥から取り出したプリンを二人で食べる。

先に食べ終えた黒音くんはチラリと私を一瞥した後ゲームに手を伸ばす。「おいしかった」「うん、今回は上手くいったの!」

私を嬉しくて、はにかむ。「いつ、…?」

「私、部活入ってるの言ってなかったね。料理部に入ってる」

「しらない。教えててよ」

ジィッと問いつめるように見られて、肩をすくめた。

「ごめん、…も、お腹いっぱい!」

結構大きめの容器で作ったからか、半分で満腹になる。その前にビーフシチューを食べ過ぎたからかもしれない。

「もったいないよ、…食べる」

ゲームの手は休めずに、こちらを見た。

試しに、ひとすくいして口元に持っていくと一瞬、びっくりした後に口を開いた。…あ、食べた。

一回すれば、なれてしまうみたいで咀嚼したあと僅かに口を開くのでたべさせる。



*****


そして、片付けて、お風呂に入って、2人でベッドに潜り込んで私はハタと気づいた。


…………私って、なんて恥ずかしいことを!


カップルたちがする、『はい、あーん』をやってしまっていた!


うん、あれだ。猫に餌付けしてる気分だったんだよ。と、言い訳紛いなことをしてみる。誰に言うでもなく。



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