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始まり

なぜ、私が黒音孤麻と同居するようになったのか。これはほんの少し前の話である。


高校入学してもう3ヵ月目に突入しかけたある日。それは大雨の日で、バイト先からトボトボと傘を差し帰路についていた。傘を差しているのにも関わらず濡れてゆく私は張り付く制服にイラつきながらマンション前に辿り着いた。そこで、気づく。


ずぶ濡れの同じ学校の制服を着た、男子生徒がうずくまっているのに。


一瞬、見なかったことにしようとしたが私的に捨て猫とかに弱い。一瞬、ほんの一瞬捨て猫に見えてしまったら放っておけなくなってしまったのだ。


「…あの、」声をかけたら、のそりと顔を上げた彼に驚く。「…っ、………あ、黒音くん…」長い前髪が張り付いてホラーテイストになってるよ、黒音くん。

「……あ…んー、」なにやら、考えているらしい。しかも、なんかキョドってる?「私、同じクラスの白井雹」

「あ、シロヒョウ…」おおい、それ言う?「それやめて、雹でいいよ」「ヒョウ?」「うん。で、…黒音くんはこんな所でなにしてるの?家、帰らないの?」


「……………家、なくなった…」

ちょっと?それ、どういうこと?え、事件に巻き込まれたの?と考え込んでいたら「大家さんに追い出された」




……………うん、何をしたんだろうね?君は


「追い出されたって、ご両親は?」「海外」「同居人とかは?」「1人暮らし」「親戚は?」「飛行機乗って行くような県」いや、普通に何県でいいじゃん。「なんで追い出されたの?」「家賃……滞納?」そこ、疑問符じゃない!あんたは、家賃滞納者か!

「生活費とかアルバイトで?」「ううん、必要最低限の金額は貰ってる、家賃とか…」私と一緒か。私も最低限の金額は貰ってる。家賃と、生活費を。ちょっと贅沢したら足りなくなる程度に計算された金額が毎月送られてくるというか通帳に入る。日数も完璧に計算され、毎月違う額なのは当たり前、贅沢したけりゃアルバイトしなさいと言われている。社会勉強にもなるし、一石二鳥なのだ。


「なのに、家賃滞納?」「…うん。気づいたらなかった」この、計画性のない奴に1人暮らしさせるのか?だめだよ!「いつから1人暮らし?」「入学と同時に?」


うん、速攻で追い出されたのね。「とりあえず、どうするの?ああ、とにかく体冷える。家、寄っていってお風呂貸すから」「ここ?」「そうここ」君がいたのは私のマンションの前です。


******


「ちょっとまってて」

「……うん」キョロキョロと視線をさまよわせ、玄関に佇む彼を置き去り。タオルを持って、玄関へと向かう。

「べちゃべちゃでしょ、拭いて?」素直に頷いた彼を見届け脱衣所でささっと着替えを済ませると戻る。

「拭いたー?」「うん」「お風呂こっち、お湯貯めてなくてごめんね?シャワーで我慢して」

頭を揺する彼に、「わわ、っちょっと水っ飛んでる」「ごめん…」「あ、これ着替え。ヨレヨレだけど」そう言って、渡すのは私の部屋着…ではなく、男物のTシャツとハーフパンツ。ジッと見つめ、顔をあげると「………彼氏の?」と、居たたまれない感ありありで訊ねてくる。「違う違う、兄の」「お兄さん…の。いいの、勝手に」


「いいの、いいの。この前勝手に泊まりにきたときのだし」「泊まりに?」「あ、うん。私、ここで1人暮らししてるの」「………うん」

その顔は、1人でこの広さって思ったね。本人でもそう思ってるし。そんな彼を浴室へ押し込み私はキッチンへと向かう。


おなかすいたし、ご飯作ろう。そういえば、「黒音くんはご飯食べたのかな?」もう、9時だし…どうかなぁ。そう思いつつ、手を進める。「雹?」ひょっこり現れた彼は、私を探したみたいで私を見つけ安心した表情を浮かべた。おお、小動物って感じ!

「温まった?もう、ちゃんと拭かないと風邪引くよ」

頭に被せただけのバスタオルを奪い頭へ手を伸ばす。高い、背伸びはきついなぁと考えてたらしゃがんでくれた。素直だな、本当に猫みたい。背は高い方だけど。


「くすぐったい」「サラサラの黒髪羨ましい」「……なんで」「私、黒髪が好きなんだ。」「ふーん」

いつもの彼からは想像つかないくらい、私の行動を受け入れる。いつもは、目立つのが嫌いだし人が苦手、ゲームをしてる彼なのに。

「ご飯食べる?」「……うん」


一緒にご飯を食べて、私もお風呂に入る。そして、寝ようと思ってハタと気づく。

「黒音くん、家どうするの?」

「あ…」


彼は今更思い出したようで、というかなんで私の隣に寝ようとしてるのさ。まあ、広いよ?私のキングサイズのベッドはね。これは、父の寝具には惜しむな精神で父が奮発してくれた物だ。うん、なにちゃっかり寝ようとしてるのさ。


「……住ませて」

「……」

「…ねえ」

「………」

そんなぁ、捨て猫みたいな目をしないで!


と、私が折れてしまって同居生活がスタートしたわけである。

同じベッドも幾度の攻防のすえに、………あっさり折れて一緒に寝る仲になっちゃいましたよ。ええ、貞操はばっちり守られてますけど?というより、黒音くん先に寝ちゃってますけど?



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