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RELATE  作者: 三笠言成
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議論と能力と有宮涼

やばい、世界観が崩壊してきました。

わかりにくいところは脳内補完でお願いします。

後日作中でわかりやすく言い直すかもしれないのであきらめないでくださいお願いします

ついでにサブタイトルハル君が登場することなく涼に戻ってきましたね。

「……」

 真っ赤な瞳。

 それは間違いなく俺を殺そうとしたやつと同じ種類の人間だろう。

 雪は、雫は死んだといっていたので俺への加害者が狭山雫だとは思えないが、それでもその関係者に近いものだと思う。

「真っ赤な瞳、か。」

 千綾先輩を見ると深刻そうな顔をしてうつむいていた。何か考えているのだろう。

「そういえば雪には話していないよな。俺がどうしてこの能力を身に着けることになったのか。」

「うん、話していないよ。死の淵に立たされたとか超能力で殺されかけた、とか言っていたからだいたいの予想はついているけど。涼、きっと真っ赤な瞳をした人に殺されかけたんだよね。」

「その通り。ということはやはりお前の姉も、『見つめるだけで人を殺す能力』を持っていたということか? 」

「そう。あたしはこの力のことを『殺意』って呼んでいる。」

 殺意。

 シンプルだが、見つめるだけで人を殺す能力には最適な名前だと思った。

 するとここで千綾先輩が口を開いた。

「『殺意』は、連鎖する……? 」

「…………どういう意味だ? 」

「はじめ、『殺意』はストーカーの能力だった。そしてストーカーの最後を看取った雫さんに、それが移った。きっと雪さん、あなたは雫さんを看取ったのね? 」

「さすがですね。千綾さん。全部その通りですよ。」

 『殺意』は―移る、だと? 

「つまり、その能力を今持っている人間が、連続怪死事件を起こしていて、俺を殺しかけたというわけか。」

「たぶんそうだと思う。」

「……」

「…ふう、少し休憩。生前はここまで饒舌じゃなかったような気もするわ。」

 といって雪が黙り込む。正直に言ってとても続きが気になったが、語り手に話す気がなくなったのなら致し方ない。

 俺は暇つぶし、そして現実逃避のため、少しのあいだ千綾先輩と話をすることにした。

「なあ、先輩。」

「どうしたの?」

「人ってさ。死んだらどうなるんだろうな……」

 答えの出るはずがない哲学をぶつけてみる。

「そうね、私は死んだことがないからわからないわ。でも、今までに死んでいった人達が帰ってこない、ということは相当天国というところはい心地のいい場所なんじゃない?」

 千綾先輩の少しだけ砕けた物言いに、俺たちの周りにまとわりついていた嫌な空気が少しだけ逃げていく。

「それは違うと思いますけどね。」

「あら、涼君のくせに私に何か文句でもあるのかしら?」

「…地獄に行った人も帰ってきていませんよ?」

「‥‥‥‥‥‥‥‥」

 ものすごい無言のプレッシャーをまとった眼球で凝視された。三点リーダを通り越して二点リーダになっている…

「そっ、それはきっとね…」

 慌てて自分の説をでっち上げようとする千綾先輩。ふふふ、慌てる先輩は可愛いなあ。

「ええ、思いついたわ。」

この人今、思いついたって言ったか? 

「涼君、そもそも天国と地獄ってそれぞれどういう人が行くと言われているか知っている?」

「いい行いをしたものが天国、悪い行いをしたものが地獄に行くって聞くけど…」

「なら、中ぐらいの行いをした人は?」

「中ご……いやいやいや、そんな、小話みたいな話、しなくても。それで?俺の認識間違えています?」

 そうか、だからあそこはあんなに人口が多いのか。

「そうね、言い伝えではそう言われているわ。実際、私も小さい頃はそういうことを言われて躾けられてきたものだからね。」

 先輩が……躾けられる?

「そこ、喉を鳴らさない。―でもね、私が今思いついた案によると、」

 思いついた案によるとって…

「普通の人は天国に行く。けれども、涼くんのようなドМの人だけが地獄に行く、らしいわ。針山で刺されるだとか、灼熱の風呂だとかそういうところを楽しめる人だけ、地獄に行くのよ。」

「…………」

「…」

「はい。」

「せめてつっこんでよ!」

 絶叫する先輩。

「じゃあさ、先輩。もしそのアイディアが正しいとしたらさ。」

「ええ? 涼君そんなこと信じているの? あんなの、冗談に決まっているじゃない…」

 ……俺は無視して続ける。

「そんな面倒くさい方法を取るってことは、死者は生き返ってはいけないから、だよな。」

「そうね、ドМの話は抜きにして、いい行いをしたものが天国に行き、悪い行いをしたものが地獄に行く、というのは、地獄の楔でつないでいなかったら悪人は帰ってきてしまうから、という説もあるくらいですから。」

「それならさ……いや、それならじゃないな、うまい接続詞が思い浮かばないのだが、もし死後の世界がそういうシステムで動いているのだったら―えらく人間目線じゃないか?」

 それを聞いて微笑む千綾先輩。

「私と哲学を語る気なのね、いいわよ。乗ってあげる。」

 千綾先輩は、きっとこういう話が好きだろう、という俺の目論見は見事的中した。

 これですこしでも、真っ赤な瞳の殺人者のことを忘れることができたらいい。

「そもそも涼くんが何を言いたいかっていうと、『天国と地獄というシステムがあるとして、それは本当に神様が作り出したものなのか』ということね。」

「ああ、まあそんな感じだ。もし神様という存在があったとして、たったの七十億人ほどしかいない人間のために、天国と地獄なんて作るのか? 昆虫なんてそれこそ何十倍も存在しているけど、彼らはたぶん感情を持っていないから、いいことをする悪いことをする云々の観念はないはずだろ。」

「作ってないわ。」

「え?」

「仮にこの世に神様がいたとしても、天国と地獄を作ったのはそれじゃない。天国と地獄を作ったのは、人間よ。っていう話、本当にいろいろな漫画やアニメやライトノベルやノベルゲームで取り上げられているけど、あなた今まで何して生きてきたの? 」

「…………」

「ただでさえそんな生死の話なんて私みたいな先輩キャラとしているんだから、私にその話振らないでよ…パクリだと思われるじゃない。」

「天原さん、今のセリフもう一回。」

 ハルが久々に口を開く。

「え? そんな生死の話なんて」

「もう一回。」

「死ね。」

 久々の出番がそれかよお前。

「じゃなくて先輩。人間が天国と地獄を作った話について詳しく。」

「はあ……あなた、死後の世界について考えたことって、ある?」

「ある。中学生の頃なんて、夜になるたびにそれを考えて怖くなるから、毎晩がしんどかったくらいだ。高校に上がった今でも時折考えて怖くなるな。」

「そう。死について考えない人間はいない。なんでだと思う?」

「…自分の存在がなくなるのが、怖いからだろ? 俺は死ぬことなんて全く意識していなかった小学校の頃でさえ、大人になったら教科書に名前が乗る人になりたい、って言っていた。」

「きっと、無意識のうちに死の恐怖を感じ取っていたのよ。では涼君。さらにもう一問。どうして人は死ぬって知っているの?」

「…質問の意味がよくわからないな。」

「言い換えるわ。どうして、自分が死ぬって知っているの? 」

「…周りの、人間とか、有名人たちが……死んでいくからだろ? 」

「そのとおりよ。」

 ふふ、と問題に正解した小さな子を見つめるように小さく笑う先輩。

 俺はだんだん千綾先輩が何を言いたいのかわかってきた。

「何が言いたいのかわかってきたようね、涼くん。じゃあ、私が何を言いたいか言ってみてくれる?」

「死ぬのが怖いのは人間だけ、ということか。」

「素晴らしい。よくわかりました。そう。私たちがなぜ死後にいついて考えるか、それは自分がいずれ死ぬから。なら、どうして自分がいずれ死ぬということを知っているか。それは、記憶力があるからよ。記憶力がもしなかったのなら、人間は死に怯えることなんてなかった。ここまではいいわね?」

 異議なしだ。

「そして多くの哲学者たちが出てきた。その哲学者たちはね。」

 さらに先輩は続ける。

「死の恐怖から逃げるために死後の世界を作った。」

死の、恐怖から逃げる、ため…

「だから天国と地獄があるのよ。死後の世界なんていう突拍子もない存在なんて突然言い出しても誰も信じない。だから、それにもっともらしい理由をつけた。まあ、そんな理由なんてなくても私たちは信じていたでしょうけどね。だって。」

 

死が怖いのはみんな同じですもの。

 

やっぱり、この先輩とこんなトークをするのではなかった。すこしでも重い空気が盛り上がればいいなと思って始めたはずだったのに、いつの間にか始める時よりも重くなっている気がする。

「涼さ。」

 喋り過ぎたと言っていた雪が口を開く。

「どうした? 」

「あたしね、一つ思い出したことがあるの。」

「……なに? 」

「今朝、あたしが召喚されたときね、頭の中に声が響いてきたの。」

 声? 

「その声は自分のこと、俺は死をつかさどる大魔王だ、って言っていたんだけどね。」

 なんだその胡散臭い奴は。だいたい死をつかさどるのは神様の役目ではないのか。なぜ大魔王がそんなことをしている。

「人間はみな例外なく、超能力と呼ばれるものを持っている。ていう冒頭から彼の言葉は始まったんだけど。」

 例外なく超能力を持っている、ねえ。

「その能力はあまりにも危険であり、現世で人間に好き勝手させたらこの世のバランスが崩壊してしまう。だから過去にある神様が『生きている間はその能力が目覚めないように人間を改ざん』したらしい。まれに生きているうちに偶然その能力が目覚めてしまう人もいるみたいだけれど。そしてここが大切なところなのだけれど、君たちは死んだ。だから超能力が使えるのさ。俺は便宜上『幽罪』と呼んでいるけれど、本来死んだ人間に体はないので幽罪を使う機会はない。しかし『生き返ってしまった』君たちは別だ。ぐだぐだ述べたが要するに、『人間界で目覚めさせてはいけないはずの特殊能力を使うことができる』のだ。」

 話が大きくなりすぎだろ。

 つまり、俺が偶然目覚めさせてしまった変な能力は、本来人間全員が持っているものだが、世界の崩壊を防ぐため、生きている間は発動しないようになっている。

 しかし雪は一度死んだので、好きに変な能力が使えると。

「あたしの能力がなんなのかは聞いていないんだけどさ……よって千綾さんの言った死後の世界は人間が組み立てた説は間違い、ということになります。」

「なるほどね。」

 ここで納得したのはハルだった。何がなるほどなのだろうか。

「雪さん。死後の世界が思ったより適当だということはわかったのだけれど、その大魔王……大魔王って。」

「バリバリの日本人でしたけどね。砥崎って名乗っていました。」

 砥崎って。思いっきり日本人の上に俺の知り合いにいるぞその苗字。

「……世界観めちゃくちゃね………まあいいわ。砥崎さんが言ったセリフの中に『君たちは生き返ってしまった』とあるんだけど、雪さん以外にもだれか生き返ったの? 」

「きっと、『殺意』のオリジナル……継承されていくおおもとの人間は生き返ったんだと思います。」

「ああ。そういうこと。」

 またもや空気が重くなった。

 俺は打開策を練る。よし。

「でも、死んでも自分は消えないってことが分かってよかったよな。」

「わからないわよ、雪さんたちが特別なだけかも。」

「いやいやそれはないですって。だってほら。」

 俺は笑顔とともにその冗談を吐く。

「『耳をすませたら死者の声が聞こえてくるでしょ? 』」


 ゾクリ、と悪寒がした。

 周りを見渡すと千綾先輩や時雨、幽霊のはずの雪までそれを感じたようだった。

「まさ、か…」

 待ってよ、今の冗談だよ! よく考えたら何が面白いのかいまいちわからなかったけど冗談だって。

「あんたねえ。不用意な発言は控えなさいよ!どうするの? 」

「おい、涼…まさか僕たち、死者の声でも聞こえたりするのか?」

「ちょっと、そんなの嫌だよ、あたし。死者とか怖い。」

「お前が言うな。」

 全員からツッコミを受ける雪。しかしこの場合悪いのは完全に俺である。どうすればいいものか。

「ま、まずは本当に発動したかを調べるために、耳を澄ませてみよう…」

「あなた、なんか偉そうね…自分が悪いって分かっている?」

 もちろんわかっている。そして俺たちは耳を澄ませる。

「……」

「……」

「……ほら、やっぱり聞こえないじゃないですか。悪寒は偶然で」

「殺してやる」

「偶然じゃなかった! なんだ今の物騒な言葉。絶対殺された幽霊だろ!」

「あ、今のあたし。」

「雪かよ!お前かよ!確かに死者だけど!なんだ今の冗句!すごい焦ったわ!」 

 まだ心臓の鼓動が高まっている。待てよ?死者の声が聞こえる、というのは雪の声のことか?

「そんなわけないじゃない涼くん。」

「ですよねー」

「……が……ま…………」

「聞こえた!今絶対聞こえた!なんかわからないけれど今の人絶対探偵だった!」

「どちらかというと今の、死者というより死ぬ間際の言葉だけどね。」

 チラと横を見るとハルが耳を塞いでいた。

「ハル? どうした耳なんか塞いで。」

「ダメだ、聞こえてきた。」

 ……マジかよ。

「神社、だな。」

 ハルが呻くようにつぶやく。そういえばこいつ、目もよければ耳もいい、色々とステータスが高い人間だった。

「神社ね、行ってみる?」

「もちろん。」

 俺たち四人は俺の家から飛び出してお向かいの神社へ向かった。さすがに家を出ると、死者の声は聞こえてきた。

「あ、悪いみんな。僕、これ以上行けないわ…待たせてもらう。」

 ハルはどうやら本気で気持ちが悪かったらしく、神社の入口で一人待たされることとなった。

「とはいえ、私も結構きついわね。」

 そう、俺もしんどくなってきた。明確に何を言っているかはわからないのだが、頭に直接ノイズが流れているような気持ちの悪い感覚。

 ただひとり、雪だけ不快そうな顔を見せず、神社への階段を軽々と上り続けていった。


「ここが、発声源のようです。」

 雪が指をさしたのは、祠というのだったか、それだった。

「妙ですね。」

 さらに雪が続けた。そろそろ不快感がマックスに近くなってきたので、俺は早く帰りたかったのだが、原因を突き止めないとどうすることもできない。

「この祠、神様が祀られていません。」

 雪がつぶやいた。

「なら、何が祀られているんだ?」

「祀られていません。憑いています。人間の呪いが。」

 …なんだって?

「人間の呪いが、憑いている?」

「うん。思い返せば涼、あなた確か死者の声が聞こえるって言っていたもんね。」

「ああ、たしかそう言ったと思う。そうか、神様の声は聞こえるわけがないのか。」

「この呪い…殺された人間の呪いなんだけど、おかしい。」

「おかしい?何が。そもそも呪いなんていう理不尽なもの、合理的に説明する方が無理だぞ?」

「この人の呪いが誰に向いているのか調べてみたら、この呪い、殺人犯に向いていません。」

「殺されたのに、殺した人以外を呪っているのか?」

「はい。まあ、それは今、関係ないですね。」

 その通りだ。今はとりあえずこの声をやめてくれたらいい。

「で、雪よ。どうしたらこの声が止むんだ?」

「…簡単ですよ。お供えをするんです。」

 ふっ、と雪の顔がほころんだ。


「焼きそばパン買ってきました、先輩。」

 少し時間が経って、俺はスーパーのビニール袋を持って再びここに戻ってきた。

「ああ?私が頼んだのは焼き鯖パンだっつーの、間違えてんじゃねーよ、パシリ。」

「茶番やめてもらっていいですか? 」

「ああ。えーと、とりあえず、酒と、饅頭。」

「お酒?どうやって手に入れたんですか?未成年にお酒販売していないでしょ。」

「そこはノーコメント」

「あなたねえ……」

「まあそれは置いておいて。そして雪、これをそこに置いてくれ。」

「さりげないダジャレが鬱陶しいわね…」

「はい、これで、死者の声も止むはずだわ。」

「あ、本当だ。これでもう大丈夫だな。」

「定期的にお供え物を変える必要はあるのかしら?」

「それはわかりませんけど、涼くんの言葉の支配がいつまで及ぶのかによりますよね。」

「ああ、そうね、まあいいわ、帰りましょう。ハルくんが心配だわ。」

「さっきすれ違ったときはゲームしていたけどな。」

「あらそう。」

 そうして俺たちは階段を下りようとする。

「ところで雪、死者にお酒をお供えするのってなんか意味あるのか?」

「ああ、お酒はね、酔っぱらいが鬱陶しいからあまりそう思われていないけれど、本来とても神聖なものなのよ。だから、死者にお酒をお供えするのはとてもいいこと。」

「あら? 雪さん、そういえばよくドラマとかで、お墓にビールを添えていたりするシーンがあるけれど、アルコールがつまりは大切なの?」

「はい、アルコールですね。」


 ん?アルコール、だって?

「りょ、涼くん?もしかしてあなた、さっきのお酒……」

「ああ……ノンアルコール………………」


『アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア』


 背後からものすごい叫びが聞こえてきたとさ。ああ、耳が痛い。

ありがとうございました、日本語もっと勉強します。

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