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RELATE  作者: 三笠言成
2/8

復活と仮説と狭山雪

だいぶ前の奴の続きです。

これは構想はしっかり練ってたりするんですが。

ちなみに前回までのあらすじ

(読んでくれるのが一番だけど)

高校生有宮涼は、世間を騒がしている連続怪死事件に巻き込まれた。

その事件とは、彼の高校の校区内周辺で、二日に一人人が心臓まひで死ぬ、ということ。

涼はある日の晩、真っ赤な目をした女と出会い、その顔を見てしまう。

次の瞬間激しい胸の痛みに襲われ、気が付いたらベッドの上に。

無事退院した彼は、先輩とともに親友にドッキリを仕掛けることにする。

「死の淵をさまよったことにより幽霊が見えるようになった」というものだ。

そして彼は虚空に向けて話し始める。すると次の瞬間、目の前に突然女の子が召喚されたのだった。

誰だ、この女……いや、それより今コイツ、突然現れなかったか?

となりを見ると、ハルはもちろん、滅多なことでは動揺しない千綾先輩までもが動揺を隠せないでいた。

状況確認をしようじゃないか。

今、俺は千綾先輩に半ば無理やりだがドッキリを仕掛けさせられた。

死の淵をさまよったことにより幽霊が見えるようになったという当たり障りのないドッキリ。

俺は全力で虚空に向けて話しかけていた。そして、「ここに幽霊がいるだろう」といった瞬間、背中に悪寒が走って、いつの間にか俺の目の前に女の子がいた。

状況は確認できたが、まったくわかんねえ……

何が起きた?

すると女の子が口を開いた。

「ねえ、ここ、どこなの?ていうか、あたし、あの時に…」

 その女が口を開いた。その口ぶりから察するに、本人も何が起きたのかがよくわかっていないらしい。ええと、こういう時はまず…

「あんた、名前なんていう?」

「え?あたし?あたしは雪よ、狭山雪。」

「……そうか。ええと、ここは日本の兵庫県だが、お前はどこから来た? 」

「あたしも兵庫県民よ…というか、別に日本の、とつけなくても兵庫県が日本だということくらいわかるわよ。……あれ、よく見たらここ、あたしが住んでいたところの近くだ。」

 突然この場所に現れた雪と名乗る少女は、どうやらここに住んでいたらしい。

その回答に俺はひとつ違和感を覚えた。

「住んでいた? 過去形? 」

「…ええ。そうよ。」

「なら、今はどこに住んでいる?そして、何歳で、どうしてここに突然現れたんだ?」

「……あたしは、高校二年生だったはずだわ。」

 …はい?高校二年生だった、はず?何なんだこの女は。

「あたしさ。こんなこと言っても信じてもらえるとは思えないんだけれどさ。」

 意味深な前置きをして狭山雪はひと呼吸置く。

「たぶん…もう死んでいるわ。」


 ……通り魔に襲われた、という経験があるので並大抵の回答では驚かない自信があったのだけれど、これは無理だった。なぜなら、今までの会話を総合してまとめてみると、『突然目の前に幽霊(自称)が現れた』ということになるからだ。

「そこ、痛いものを見るような目で見ない。いやさ、確かに信じてもらえないとは思っているけどさ、あたし自身も驚いているんだよ? しんで、死後の世界…よく覚えていないけどそんな感じのところにいたと思ったら、突然あたりが真っ暗になって、次に目を開けた時にはこんなところにいたんだから。」

「いやいや、信じられないな…」

まあ、俺自身超能力のようなもので一度殺されかけたようなものなのだから、百歩譲ってそこは信じるとしよう。

「よし、百歩譲って、狭山さんが幽霊だとしよう。」

「雪でいいよ。あたしが死んでからどれくらいたったのかはわからないけど、最終的な年齢でいえば同学年だし。あなた、今高二でしょ? それよりあたしは、たった百歩譲っただけで幽霊を信じられるあなたの思考回路が気になるわ。普通、そっちにいる男の子みたいに驚いて、引くものじゃないの? 突然目の前に現れた可愛い女の子が自分のことを幽霊だ、とか言い出したら。」

 指を差されたハルは、引いてない、引いてない、という風に首を振る。

 というかこいつ今自分のこと可愛い女の子って言ったな……

 確かにかわいいところがまた腹が立つ。俺は千綾先輩のほうが好みだけど。で、俺が驚かない理由か。それは簡単な一つだけの理由。

「ちょっと前に超常的な力で殺されかけたからな…ははっ……」

 呟いて自虐的に笑う。しかし、この話をした瞬間に雪の目の色が変わった。

「ちょっと、あなたっ、超常的な力で、殺されかけた、だって?」

「な、なんだよ。どうした急に。そうだよ。笑うぜ?目が真っ赤に染まった女性に睨まれて心臓麻痺を起しかけたんだ。」

 少し何かを考え込むようにうつむく雪。

「ライトノベルの主人公みたいな人だね。」

 それだけかよ。てっきり何か関係しているのかと思ったよ……

「こっちは、死ぬ思いをしているんだから、勘弁してくれよ。」

そこでふと千綾先輩を見る。退屈そうにしていた。

そうだ、よく考えてみたらまだ何一つ謎が解決していない。

導入部分でどれだけ雑談しているんだ俺たちは。……これは、長くなりそうだな。

「ちょっと待ってって。長話になりそうだから、コーヒー買ってくる。」

 そう言って俺は、少し歩いたところの自動販売機まで歩いて行った。

 日本の自動販売機普及率は侮れない。こんな道端にもあるのだから。

「あ、涼。僕コーラで。」

「久しぶりの出番だな、ハル。」

 そう嫌味の一つを飛ばしながら、コーヒーを買いにいく。

どうせ千綾先輩はいつも通りお汁粉だろう。俺は歩き出す。

 …………

 ……………………

「別にいいんだけどさ、なんでついてきているんだ? 雪。」

 雪が俺についてきた。なんだろう、荷物持ちでもしてくれるのだろうか。

 それとも驚かせた謝礼とか言って俺に何かおごってくれるのだろうか。

 いや、まったく驚いていないのだが。

 と、そこで狭山雪が驚愕したような顔で口を開いた。

「あのさ……体が勝手について行ったんだけど…」

 は?なんだその、体が勝手に踊りだす某子供向け番組のエンディングみたいな発言は…

「いや、だからさ……ああ、もう。口じゃ説明できないわ。見ていて。」

 そう言って、俺の体から離れていく雪。ちなみに雪は、自称幽霊なのに、足がある。そして浮いてもいない。自称幽霊の美少女とかすでに浮いているようなものだが。クラスとかで。

「ほら。」

 すると何故か俺の五mほど離れたところでパントマイムをはじめる雪。目の前に壁があって前に進めない、みたいなやつだ。

 素直に感想を言う。

「おお、雪、お前パントマイム上手だな。」

「違うっ。ここから先には進めないのっ。目の前に壁があるみたいで。」

「進めない?そんな馬鹿な。」

 俺は雪から五m以上離れようとした。

「……」

「……」

「…………」

「なんでついてくるんだよっ。」

 すいすいーっという擬音とともに―いや、実際には出ていないけれどそんな雰囲気とともに、雪は俺についてきた。慌てて彼女も弁解する。

「知らないよ、体が勝手に動いていくだけだよ。」

 えーと、つまりどういうことだ?

「涼くん、あなた自分の発言くらいには責任持ちなさいよ。」

 ここで、何か悟ったような顔をしたエアライカーが久しぶりに口を開いた。

「えあ・・・らいかあ?」

「おう、前置詞のライクにerをつけて、『空気のような人』っていう意味だぜ!」

「最高の笑顔で何を言っているのよあなた…ぶっ殺すわよ。……じゃなくてさ。あなた、雪さんが現れる直前に、なんて言ったか覚えていないの?」

 物騒な言葉が聞こえてきたがそこに突っ込んでいるような空気ではなかったのでおとなしく正直に答える。

なんて言ったかな……

「……」

 思い出せないのでふと隣を見ると、雪が千綾先輩を凝視していた。

 おいおい。

「雪よ、確かに千綾先輩は美人だが、俺は百合展開なんで認めないからな。」

 俺の冗談を華麗にスル―し、とてもシリアスな顔で彼女を見る彼女。

「……あなた…………あなたが今の…」

「え? なに? あなたが今の……? ああ、あなたが今の涼くんの嫁ですかって? ええそうよ、私が有宮涼のお嫁さん。だからあなたは涼くんを諦めてね。」

「冗談でも嬉しいぞこのやろう」

「あはは、やあねえ、冗談の訳ないじゃない。」

「え?もしかして……」

「察しがいいわね、そうよ。今のは伏線よ。」

「伏線っ、絶対回収されないと思うんですけど。」

「この世には回収されない伏線の方が多いのよ。安心して。最終話で私があなたに告白したりは、するわけないんだから。」

「ツンデレ口調なのに全くデレていない…だと。」

 それただ単に俺のことなんとも思っていないよ、と白状しただけじゃないか。

 さっきの伏線云々の話はなんだったんだよ。実は千綾先輩は俺のことが好きだって話じゃないのか。

「それは置いといてね、涼くん、あなたはたしかこういったのよ。『…ここに幽霊いるだろ』って。」

「…確かに言いましたね。ていうかあなたに言わされたんじゃなかったですか? 」

 またもやスルーし言葉を紡ぎだす天原千綾。

「私のブッ飛んだ仮説はこうよ。あ、前提として、雪さんは幽霊ということね。ここで雪さんが生きている人間ならまた別の仮説が登場するから。」

「はい、聞きましょう。」

「あなたの言動が、現象に干渉された。」

 ……は?言動が、現象に、干渉された?ものすごく語感はいいが、いまいち理解できない。

「そうね、わかりやすく一から説明するわ。とは言っても、一から三くらいまでしかないのだけれど。」

「…お願いします。」

「あなたは、ここに幽霊がいるだろ、という超絶痛くてバカみたいな発言をしたわね。」

「……はい…」

 説明を受けている身なので、お前が言わせたんだろというツッコミは我慢しよう、けして俺はドМではないぞ。

「その言葉がね、どうしてかはわからないけれど、現実に反映したのよ。語感を意識するのなら、現象に干渉した、っていうところね。」

「えっと、それはつまり……俺の言ったことが現実になった、ということですか?」

「そのとおりね。ものすごく中学生の妄想やありふれたライトノベルみたいな感じだけれど、私の頭じゃこれ以上に最善の回答は見つからないわ。そして、雪さんが半径五メートル圏内から出られない理由というのは、私の案によると、『ここに』という部分が忠実に干渉しているからよ。」

「つまり、『ここ』というのはこの場所ではなく、有宮涼のまわり、というように解釈されたということですか。」

 誰に解釈されたのかは見当もつかない。

「私のラノベ脳のアイディアが正しければ、だけどね。」

 そして彼女はつまり、とひと呼吸置いてから

「あなたは一度死の淵を彷徨ったことにより、『幽霊を見る能力』ではなく、『言動が現象に干渉する能力』を身に着けたみたいね。私やハルくんも雪さんが見えていることからその効果圏内は、あなたの声が聞こえるところ、といったところかしら。」

 ものすごくぶっ飛んでいるかつ合理的な説明だった。

 しかしそれが合理的に聞こえたのは超能力攻撃を浴びたことのある俺だけだったようで、ハルは全く納得していない様子。

「まだ僕ついていけてないんすけど。」

「確かになかなかファンタジスティックな話ですもの。だけど、雪さんが幽霊であること、涼君が超能力により一度死にかけたこと、半径五メートルルール、私のラノベから得た知識を総合するとこういう結論以外導けないのよ。あきらめて。」

 最後不純な知識が混ざった気がしたが。

「ちょっと待ってください、千綾さん。」

 さっきまでほうけていた雪が久しぶりに口を開く。しかも何やら焦っている。

「あなたの仮説が正しければ、この人。涼くんの言葉が現実になったからあたしが半径五メートルから動けないのは能力が切れるまで…つまりあたしが消えるまで有効だということですよね。」

「ふふふ、察しがいいわね。能力がいつまで続くかはわからないけれど、涼君は『幽霊がいる』『俺の周りに』といったのではなく『ここに幽霊がいる』といった。それすなわちあなたは消滅するまで涼君のそばに居続けないといけないということ。」


「つまり。」

 なんだ、この人たちは何を言っているんだ? 


「あなたは、有宮涼と同棲しなければならないわ。」

…………………え? 


ありがとうございました。

続きはなるべく早く。

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