プロットを作る(後) アイデアを書き出す。
マグタイトクロニクル2のネタバレを含みます。
練習のために、お気に入りのドラマ、アニメ、映画のワンシーンを思い出してください。
それはいくつかの台詞かもしれません。風景かもしれません。シチュエーションかもしれません。何を思い浮かべるかは、人によって千差万別だと思います。
私の場合は、某映画の「色々あって憧れの人に再会する」というストーリーの構図が印象に残っています。関連して、鉱夫ゴーシュが国王フェリスに再会し、王女ナターシャのことを思い出して「あいつは軽かったよ」「母さんはお前に賭けてたぞ」等の台詞を言うシーンが思い浮かびます。共通するテーマは「再会」ですね。
・シーン
・国王フェリスから鉱夫ゴーシュへの質問
・台詞
・フェリス「ところで、母上はどんな人でしたか、父上」
・ゴーシュ「あいつは軽かったよ。軽すぎて殺すのを忘れた。そして柔らかかった。か弱かった。優しかった。馬鹿だった。しかし心は誰よりも強かった」
・ゴーシュ「死ぬなよ、フェリス。母さんはお前に賭けてたぞ」
これらをテキストエディタに箇条書きで書きなぐります。これがプロットの種、小説のコアとなるシーンです。
最近はテキストエディタが優秀なので、紙を使わないでプロットを練ることも可能かもしれませんが、必要ならノートや付箋紙も活用しましょう。
■アイデア
コアとなるシーンが決まったら、それに関連しそうなアイデアを延々書き出していく作業になります。ここでは要不要は考えず、アイデアの数を出すことが求められます。ブレインストーミングとかマインドマップとか、そういう感じの作業になります。
以下は「マグタイトクロニクル2」のアイデアの途中経過ですが、参考にしてください。
・「王族が窮地に陥ったとき、貴族は何に変えてもその命を守る」
・「くだらん法だ」「いざとなったら貴族の合議制にでもすればいい」マクシムムが吐き捨てる。
・「だが他国に付け入る隙を与えることになる」フレイズマル卿が異を唱える
・「口を慎めフレイズマル。わしが誰だか忘れたのか?」
・「義父であるあなたに……感謝はしている。だが国益は守らねば」
・合議制→多数決→議会の導入
・「フェリスを殺すべきかどうかは、俺が決める」
「ゴーシュ。いつか後悔する時が来るぞ」
「カダス。なに、その時はその時だ。なるようになるさ」
・アレク王子とサンドリア王子の独白
・黒髪のアレク王子。髪の毛はくせっ毛。
自ら謀殺に加担するも「もしナターシャが生きていれば……」と悔やむ
・銀髪のサンドリア王子。髪の毛は整っている。
「王権を継ぐべきは兄上だ。兄上に死なれるわけにはいかない」
・二人の想いは重なることなく、二つの赤い華となって散る
・国王フェリス
・ナターシャゆずりの金の髪。
・勇者コータ、白い魔法使いという二人の後ろ盾を得る
→勇者コータ、女商人ドプレクス、魔術院オールエーの三者のほうが自然か
・しかし発言権は皆無。貴族の傀儡となっている。
・剣と銃をひととおり学ぶ→特に銃をよく学ぶ。
・白い魔法使いから、自らの父が鉱夫ゴーシュであることを知らされる。
・母ナターシャが生きているという情報に踊らされ、一人街に出た国王フェリス。
・白い魔法使いからの警告「賢明な判断とは言えませんな」
・「それでも、余は行かねばならん。行って確かめなければ、一生後悔するだろう」
・「おそらく、お主は別のものを確かめることになるじゃろう」
・国王フェリスがマクシムム卿が差し向けた暗殺者ライカに殺されそうになるが、ライカはフェリスに一目惚れしてしまう。
・「透明化」の呪文でピンチを凌ぐライカ
・そこに謎の鉱夫たちが現れ国王を窮地から助ける
・裏道を駆け抜ける鉱夫たち
・なぜ長年虐げられた鉱夫が国王を助けるのか? 疑問に思いつつも退避を続けるフェリスと鉱夫
・「国王を殺そうと考える鉱夫(カダス)もいる」
・「誰も信用できない。だから俺が来た」と言う遮光ゴーグルを掛けた鉱夫(ゴーシュ)
・裏切ったカダスはゴーシュの情報を貴族に売る。
・カダス「先陣を切ったライカは始末されたと見るべきです」
・敵には相当の「使い手」がいる。
・戦闘銃兵の投入。
・銃撃戦の末に建物の影に逃げ込んだフェリスは、鉱夫が自らの父ゴーシュであることに気付く。言葉を交わすフェリス
・命を賭けた最後の戦い
・カダスも戦闘に参加し、ゴーシュに傷を負わせる。
・ヴォルフガングら傭兵集団が増援に駆けつける→ヴォルフガングは既に芸術家の道を歩んでいるので没
・フレイズマル卿らが馬車で現れ、形骸化していた貴族の金箇条「王族が窮地に陥ったとき、貴族は何に変えてもその命を守る」を発動する→お約束すぎてつまらない
これらのアイデアの大部分は没になりましたが、いくつかは「マグタイトクロニクル2」に採用されています。
ある程度アイデアがたまったら、今度はジャンルやテーマを確定させます。ジャンルやテーマが不明なままだと、意味不明な作品になりがちです。なるべく早めにジャンルやテーマを決め、作品の方向性をしっかりさせましょう。
・ジャンル……ファンタジー
・テーマ……父と子の再会
■ストーリー
ストーリーが全く思い浮かばない時にはどうすればいいでしょうか。
1.テンプレの活用
「~は、~のため、~を決意する。立ち塞がるのは、~。~は~と共に困難を乗り越え、最後は~として~する」
みたいなライトノベルのテンプレを埋めていくのが簡単です。
「国王フェリスは、母の情報を得るため、王宮を出ることを決意する。立ち塞がるのは、女暗殺者ライカと兵士たち。フェリスは仲間となったライカと共に困難を乗り越え、最後は父ゴーシュの息子として母がどんな人だったかと質問する」
比較的すっきり埋まりました。こういう感じにストーリーがしっかりしていると書きやすいです。
2.タロットカードを使う
他のストーリーの作り方としては、多少オカルトめいてきますが、タロットカードを使う方法もあります。タロットカードには多くの意味が含まれているので、多様な解釈が可能です。自分で何を書きたいか全く分からない時や、ストーリーの作成の訓練をしたい時、参考に何枚か引いてみるのもいいでしょう。
四枚引いた例)
『剣のキング』の逆位置。意思を押し通す、厳しすぎる、苛烈、情が不足している、感情に乏しい、無表情
『聖杯のキング』の正位置。年長の男性、芸術に造詣が深い、多芸多才、手先が器用、コントロール、落ち着いた物腰、信頼感。
『剣の7』の正位置。気まぐれ、信用できない、思いつき、利用しようとする、自分の利益を優先する、悪知恵、打算。
『金貨の3』の正位置。伝統、組織、受け継ぐ、培った技、職人、社会的地位、保存、保管、由緒正しい。
起:自分に厳しすぎる、感情に乏しい男が安アパートに住んでいた。彼は絵画を独学する。
承:絵画に造詣が深くなるにつれて、彼は周囲の人々の信頼と尊敬を勝ち得てゆく。
転:だがその信頼を利用し、彼の特殊な技法を秘匿して儲けようとする絵画商が現れる。
結:しかし彼は技法を誰かに売り渡すことはせず、自分の技法を無償で公開する。
それによって彼の名は廃れても、彼の培った技法は後世に受け継がれるのだった。
こんな感じで、タロットカードを用いて、それっぽいストーリーをでっちあげられます。
■キャラクター設定
キャラクター設定が思い浮かばない時にはどうすればいいでしょうか。キャラクター設定を決めるためにダイスを振るのをおすすめします。
ファンタジーRPG風なキャラクター設定を作ったーver2
http://shindanmaker.com/213831 (※作者のサイトではないです)
ナターシャは女で王女。波打つ金髪。ゴーシュの妻です。誘拐当時16才。保護者タイプです。
貴族たちの謀略で殺害されかけましたが、ゴーシュによって誘拐されます。
ゴーシュの子フェリスを妊娠します。マグタイト戦争終結のために尽力します。
フェリス出産後、鉱夫の労働条件改善を訴えましたが、流行り病で帰らぬ人となります。
【体力9】【敏捷17】【魅力18】【幸運11】【精神10】体力が無いです。
ゴーシュは男でラッダイトのリーダー。黒い髪。今は鉱夫の20代後半です。
ナターシャと離れて以来、彼は自分のことを僕から俺と言い換え、
ラッダイトの指導者に生まれ変わりました。遠くを見通すタイプです。
フェリスの成長と英断を信じていますが、ラッダイトには反対意見も多くあります。
【体力16】【敏捷14】【魅力11】【幸運10】【精神14】全体的に能力があります。
フェリスは男で王女ナターシャと鉱夫ゴーシュの子。金髪。今は国王の10代前半です。
世間知らずですが賢く責任感のあるタイプです。貴族の傀儡です。
銃をよく学んでおり、実戦でその腕を試されることになります。
【体力13】【敏捷11】【魅力18】【幸運4】【精神4】超絶美形です。
ライカは女でアーサーの妹。緋色の髪。今は暗殺者の20代前半です。
兄アーサーの影響で「透明化」などの初歩の魔法が使えます。
叶わぬ恋と知りつつも、フェリスに一目惚れします。
【体力12】【敏捷9】【魅力6】【幸運15】【精神10】幸運です。
カダスは男でラッダイトのサブリーダー。黒長髪。今は鉱夫の20代中頃です。
国王フェリス擁護派であるゴーシュを軟弱者と断じ、容赦なく裏切ります。
ナルシストな面を持ち、自らが救国の英雄となることを信じて疑いません。
【体力12】【敏捷15】【魅力16】【幸運3】【精神11】不幸にも裏切りは失敗します。
みたいな感じでキャラを量産します。気に入らないステータスは一個くらいなら交換したり、再度ダイスを振り直してもいいでしょう。ちなみに3D6というのは、六面ダイス三個という意味です。職業を変更すれば、ファンタジーだけでなく、現代物にも流用可能です。
長くなったので今回はここまで。