そうだ、映画を観よう。
前もって、読書も写経も役に立たないと言いました。ですが、簡単にプロットの勉強ができる方法があります。
映画を観て参考にする。これです。
参考にするといっても、いわゆる著作権侵害のように、全部を全部パクるわけではありません。原作から抽出された120分前後の、エッセンスというか、あらすじを参考にするのです。このとき、原作小説があって、一作でいちおう完結しているものがよいです。ハリー・ポッターの一作目なんかもいいですね。原作がいくら長くても、いくら蛇足が含まれていても、映画は120分前後の尺に収まっています。その「対応関係」を参考にします。
映画を見た後でもいいので、ネタバレサイトを覗いて、あらすじの全文を確認しましょう。自分の頭にまだ記憶が残っているうちに、あらすじを読むことが大切です。
例えば、あらすじを起承転結に分割してみましょう。あらすじをもっと短く要約することはできるでしょうか。起承転結の四行に、あるいは一行のコンセプトに変換できるでしょうか。
その逆に、あらすじから映画のワンシーンを思い出すことはできるでしょうか。もっと詳しく内容を書き下すことはできるでしょうか。実際に原作小説を開いて、ここがその記述だと範囲指定することはできるでしょうか。
この対応関係を学習すれば、名作と呼ばれる映画を十~二十数本観ただけで、こういうあらすじはこういう映画になるんだ、というある程度の「察し」がつくようになります。こういう「感覚」や「センス」を磨くための手法はあまり体系化されておらず、学ぶことが難しいのですが、たぶん映画が最短ルートだと思います。次点はラノベ原作のアニメでしょうか。
映画は、映像と音声です。イコール小説ではありません。ですが、あらすじを片手に何度も繰り返し見られること、ビジュアルがあるので色彩豊かな、情緒たっぷりな文章化が容易なことなど、「練習」する上で利点が非常に多いです。
あらすじ――映画――原作小説。この対応関係を知ることで、プロットを作る上で重要な能力、物語を短く簡単に表現する「あらすじ化能力」と、長く詳細に表現する「小説化能力」を、両方とも獲得できます。
「あらすじ化能力」……物語をあらすじにまとめる能力。あらすじや起承転結、一行コンセプトを作るために必要。
「小説化能力」……あらすじやプロットから物語の全体像、各シーンをイメージし、小説を書き上げる能力。
図書館の視聴覚コーナーやDVDレンタル店などを利用し、もし可能ならば、ノートにメモを取りながら映画を観るといいでしょう。
一度ノベライズ作家になりきって、映像と音声の全てを文章に落とし込むことをイメージして観る。そういう姿勢で映画に取り組むと、学ぶべきことが本当に多いことに気付かされます。




