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誰でも分かる!小説の書き方入門  作者: 青い鴉
最初のステップ
18/56

アルシャマとカリュカ(三人称単視点)

 以下はおまけです。読まなくてもいいです。

 カリュカに視点を移して書いてあるので、普通の「三人称単視点」ですが、参考になれば幸いです。

 課題1として、「カリュカ」を「私」に置き換えてもだいたい話が成り立つこと(一人称と三人称単視点の互換性)を確認しましょう。課題2として、最後の「カリュカが眠りに落ちるまでの間、」が必要な理由を考えて見ましょう。


挿絵(By みてみん)


 アルシャマは冒険者であり、カリュカは女暗殺者であった。

 アルシャマは赤毛の上にターバンを巻いて、マントを羽織っており、カリュカは青い髪をゴムで縛り、暗視ゴーグルを頭の上に被っていた。アルシャマの服は白く、カリュカの服は黒かった。

 そしてカリュカはいつもの通り、頭痛を抱えていた。というのも、暗殺のターゲットであるはずのアルシャマと、今日も今日とて冒険の旅を繰り広げていたからである。

 巨木の生い茂る森の中で、根の上をタタタと走りながら、カリュカは思った。一体いつからこういうことになったのだろうか。カリュカは、いつも必死でアルシャマを追いかけている。放っておくとアルシャマはどこまででも行ってしまうのである。根本からして、そういう男なのだ。だから暗殺者であるカリュカがアルシャマを追いかけるというのは、仕方が無い、自然のなりゆきであった。

 仲間とか恋愛とか、男だとか女だとか、そういう話ではない。追いかけねば見失ってしまう。見失ってしまえば己の立場が無くなる――それでは、自分は己の立場が無くなるのが怖くて追いかけているのか。自分が用済みになることを恐れているのか――カリュカは思案するが、答えは出ない。

 赤毛のアルシャマは青髪のカリュカのことなどお構い無しに、ずんずん進む。ひどい男である。歩幅の小さい女に追われていても、足を止めるということを知らない。繰り返すがひどい男である。

 アルシャマの脳内マップは広く、およそ迷うということが無いようだった。一方カリュカは、元の拠点に戻れるのか、日が暮れるまでに新しい拠点を作れるのか、戦々恐々とついていく。そしていつも、アルシャマの寝首をかこうと決めるのだが、くたくたに疲れて先に眠ってしまうのである。

 カリュカは数日前、まどろむ意識の中で、アルシャマに自分の頭をなでられていたことを思い出す。「アルシャマ殺す」なぜだか殺意が充填されて、カリュカはアルシャマに追いつくべく大地を駆けた。牛乳を飲めば、もう少し歳をとって背丈が伸びれば、いつかアルシャマと肩を並べて歩ける日が来るのだろうか。アルシャマと同じものを見て、アルシャマのように考えられる日が来るのだろうか。いや、別にそうなりたいわけではないのだが。

 カリュカがようやくアルシャマに追いついたとき、泉の脇には既にテントが設営され、火が灯され、アルシャマが背負っていた二人分の寝袋が敷かれていた。「早く寝ろよ。そしたらまた髪の毛なでてやるから」カリュカは顔を真っ赤にして「絶対そんなことするなよ!」と言い放って、泥のように寝た。

 カリュカが眠りに落ちるまでの間、アルシャマは樹木の間に垣間見える星空をずっと見ていた。ふてぶてしくも、いつか自分とカリュカが神話に、星になった暁には、だいたいあそこらへんに輝きたいものだ、とでもいう風に。

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