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S  作者: ぼーし
第五章 【亜人】編
57/62

-48- 不気味な教会で寝泊りしましょう

途中で教会が出てきますが、何かおかしな所があればご指摘ください。

 そんな訳で港町である。海特有の香りに包まれた町に、霧裂一行は来ていた。

 早朝、霧裂が目覚めた時、外でひと悶着あったようで、何故かステラ、九埜、セレーネの三人が睨みあっていたが、霧裂は怖くて詳細を聞くことはできなかった。


 そんな事も有り早々に森を離れた霧裂たちは、セレーネの案内により港町マーレに午前九時頃、到着した。【三帝】の影響か、やけに緩い身体検査を受けた後、マーレに一歩を踏み出した。


 足早に掛けていく人々。心なしか、人の数が少ないように感じる。木で出来た建物が多く、遠くに見えるのは帆船だろうか?


 普通とはかけ離れた容姿(良い意味で)を持つ者が多い霧裂一行は、周囲の注目を集めつつ、全員が泊まれる宿を探していた。霧裂達は合計で『八』も居るのだ、全員を泊まらせる事が出来るほど空いている宿は中々に少ない。さらに途中で二人追加する。結局マーレにある全ての宿屋を回っても、そんな大人数を泊まらせるほど空いている宿屋はなかった。どうしようかとウロチョロしていると、セレーネが何故だか自信満々にない胸を張って、


「……うふふふ、ここで漸く私の出番。付いて来て、泊まれる場所知ってるから」

「なら初めから言えよっ! 何時間探してんだと思ってんだ!」


 再びセレーネの案内により街中を歩く霧裂一行。どうやら【三帝】の一角、【海龍帝】の影響か、人々の顔に活気がない。市場も殆どの店が閉まっており、崩壊した帆船などが見える。

 その全てから、【海龍帝】という脅威が見えるにも拘らず、霧裂は平然としたものだ。しかし瞬谷の方は、今頃、もしくはこれから【海龍帝】と戦う事になるであろう鎌咲とレアルタに黙祷を捧げる反面、自分が選ばれなくて良かったと心底胸を撫で下ろした。


 ――――歩く事凡そ一〇分。マーレの家々から少し離れた場所に、ぽつんと立っている一つの異色を放つ建造物。どうやらその建造物こそ、セレーネの目的地らしい。だが、霧裂は首を傾げてこう思う。


(……あれ? あれって宿屋じゃなくて……教会……じゃね?)


 そう、霧裂達の視線の先にある建物は、教会。日本に居た頃は目にする事もなく、そして王都にはあったのだがやはり見ていない霧裂は、生まれて初めて目にする本物の教会である。まるで物語の中に出てきそうな神々しい教会に圧倒されている霧裂は、ふと屋根の天辺にある十字架に目を奪われた。


 真っ白な、一見普通の十字架に見える。じっと十字架を見つめた霧裂は、次の瞬間、何かに気付いたような表情で、教会を見た時とは別の意味で圧倒された。何に気づいたかと言うと、


(うっそぉ!? あの十字架、骨で出来てるじゃん!)


 『英雄の墓場』にて数多の白骨体を魔改造した霧裂の目は誤魔化せない。教会の象徴ともいえる十字架は、数多の生物の骨を特殊な技法で十字架の形に押し固めた物。磨き上げられ光沢のある骨の十字架。


 表情を若干強張らせる霧裂は、一瞬自分だけ普通の宿に泊まろうかななどという考えが脳裏を過ぎる。流石はセレーネの知人だ。危ない方向にイっちゃってる変人なのはまず間違い無さそうだ。


 そこはかとなく恐怖を感じる霧裂の前で、セレーネが黒塗りの教会の扉を開く。

 教会の中にぞろぞろと入る霧裂たち。『わー』や『すげー』など簡単な感想を並べる仲間に囲まれながら、霧裂は他に異常なものが無いか教会内に目を走らせた。


 深い縦長の構図。天井の直ぐ下辺りに付けられた左右それぞれ一〇の窓から、太陽の光が降り注ぐ。天井は長細いドーム状をしており、凡そ縦に五〇メートルはあるだろうか。左右の、幾つもの柱で遮られた内側にある木で出来た机にはさまれた、レッドカーペットが敷かれた一本道。その道を真っ直ぐ歩けば、銀の装飾が施され真っ白な骨で出来た豪華な祭壇。


 骨と言う部分に慄きつつ、視線を上げれば銀色に輝く美しい長髪を持った、本物かと見間違えるほどの女神像。その女神像に、何故だか見覚えが有るような感覚を覚えた霧裂だが、頭を捻ってもこんなグラマスな美女など記憶に無い。


 頭を振って霧裂は机の先、柱を見上げる。天井を支える柱の、その柱頭にも細かな装飾が施されていた。それは、幾人もの黒髪の人間が膝を付き両手で上部分を支えている彫刻。そこらの職人を遥に超える装飾に、舌を巻く霧裂は、柱の向こう側へと歩く。


 真っ白な壁の細長の通路。どうやらこの教会は、左端の通路、柱を挟んで中央の通路、再び柱を挟んで右端の通路という三段通路に加え、左端と右端の通路にはそれぞれ五つの扉、即ち一〇の小部屋で構成されているようだ。左端と右端の通路の奥には、幻想的なステンドグラス。黒髪の裸の人々が跪き、銀の長髪を持った女神を崇めている。


(うっわ、すっげぇ)

『なんじゃこれ、なんじゃこれ!! 綺麗じゃのー凄いのー。主主っ! 主もこうゆーの造らんのか!? 当然我を主役に! 神々しい我! そしてその我を裸で崇める主! ぐへへへへへへーっ、妄想の加速が留まるところを知らないぃぃぃっ!』


 骨を所々に使っているのが不気味だが、霧裂は最初に見たときよりも恐怖の感情が少なくなっている事に気付く。やはり、この様々な芸術を見せられたせいだろう。瞬谷たちも、それぞれ小部屋の中を覗いたりと中々にテンションが上昇中のようだ。


 と、ここで。

 不意にステンドグラスを眺めていた霧裂の背後から声が掛かる。


「すみません、なにかごようでしょうか?」

「うわっ!」


 驚き慌てて振り返った霧裂の前に立っていたのは、青白い肌、光の無い双眸という、どこか生気を感じさせないシスター服に身を包む一人の女性。シスター服は、黒では無く、銀色なのを覗けば、特にオカシナ様子は無い。


「……ああ、見つけた。あの男はどこ?」

「せれーねさま。おはようございます。しきょうさまは、げんざいとなりまちまで、しょくざいをこうにゅうしにいっています。なにぶん、【かいりゅうてい】のえいきょうで、このまちではしょくりょうもまんぞくに、とることができませんから」

「……そう。まぁ、どうでも良いか。私達、泊まる場所を探してる。泊めてくれない?」

「はい、せれーねさま。どうぞ、ごゆっくり」


 シスターは一旦口を噤み、霧裂や瞬谷、九埜という『転生者』たちを見つめ、


「――きっと、しきょうさまも、およろこびになるでしょう」


 意味深な視線に気付いた霧裂と瞬谷は眉を潜める。シスターは最後に頭を深々と下げ、一つの小部屋に入っていった。その後姿を見ていたセレーネは、シスターがドアの中へと消えるのと同時、振り返って霧裂たちを見て、


「……それじゃぁ、自由行動にしましょう。私には、やる事があるから」

「うん大賛成! アタシも兄貴とヤることがあるんだぜ!」

「……駄目。九埜も一緒に来て」

「え、そんなっ!」


 この世の終わりだっ! という表情を浮かべる九埜だったが、セレーネの有無を言わさぬ視線に、身を縮み上がらせる。最終的にセレーネに腕を引かれ、『うがーっ! 兄貴と朝から晩までイチャコラにゃんにゃん作戦が行き成りの頓挫だよーっ!』という捨て台詞と共に教会を去る。


 その様子を苦笑気味に見送った霧裂は、瞬谷たちを見て口を開く。


「んじゃ、まぁ……俺たちは勝手にそれぞれ行動するか」


 適当に言って、教会を去ろうとして霧裂だが、不意にハクが霧裂の肩を引っつかむ。


《待てオーマ、お前にはやるべき事があるだろう?》

「? なんだよ、やるべき事って?」

《魔道具造りだッ! 俺様は一体いつになったら昔の姿に戻れる!? 【豪商】に既に材料は貰っただろう、さっさと造らんか!》

「あ……、いや、でも……ほらっ、鎌咲たちに連絡入れないといけないし!」

《でもじゃない! アイツラに連絡を入れながら、造ることだって可能だろう! 今日は一日中監視させてもらうからな!》

「そんな殺生な! ちょっと観光ぐらいしたって良いじゃん!」

《それが本音かキサマ! よくないに決まっているだろうッ!!》


 うわーっ! と叫び声をあげる霧裂の足を引っつかみ一つの小部屋まで引き摺るハク。その霧裂の後をとてとてとキューを抱えたシャルロットが追う。シャルロットが小部屋の中に消え、最後に扉が閉められた。


 静寂。残ったのはサリアナと瞬谷、それにステラだ。

 瞬谷は少しだけ気まずそうにサリアナを見て、


「あー……観光でもしよっか」

「そうね、キューちゃんも居ないし。瞬が私と行きたいなら別に行ってあげても良いけど?」

「オレはサリィと行きたいよ」

「ッ! じゃ、じゃぁ仕方ないわね。ほら、行きましょ、瞬っ」


 上機嫌なサリアナに手を引かれ、教会を出る瞬谷。最後、教会を出るとき、ふと背後が気になった瞬谷は後ろを振り返った。背後、女神像の傍に、ステラは居た。無言で女神像を見上げるステラ。

 ステラの、どこか悲しげで、それでいて怒っている様な、不思議な表情。目を奪われた瞬谷の動体視力は、ステラの唇が僅かに動くのを見た。


「――――何故、アナタは……あんな事を……ねぇ『    』」


 最後の言葉だけが、何故だか分からなかった。唇がおかしな、複雑な動きをしたのだ。瞬谷は、あんな動きをして発音する言葉を知らない。そして何より、僅かに聞こえたその言葉は、おかしな事に雑音のような不快な音。


 まるで脳がその言葉を理解するのを拒むように。

 まるで脳のデータベースではその言葉を理解するのが不可能だと言うように。


 瞬谷は確信を持った。あれは、人の言葉ではない。『神』の言葉だ。

 一体ステラが何を言ったのか気になった瞬谷だったが、詳しく確かめるよりも早く、教会の扉が重苦しい音を立てて視界を閉ざした。



◆ ◆ ◆



 場所は離れて、サリアナの村の近くの森。

 昨晩霧裂とセレーネとの激突により、一部消滅したあの森である。

 その森に、とある冒険者の一行が向かっていた。先頭を歩くのは、白銀の鎧を着込み、一六〇センチほどの長さを持った大剣を背負った青年。彼の名は【聖騎士】。亜人殺しである。


「さて、皆さん。これより先は私一人で進みます。皆さんは先にマーレに向かってください。大丈夫、直ぐに追いつきますから」


 にっこりと安心させるように【聖騎士】の背後を歩く冒険者たちに笑いかけ、一人森の中へ入ろうとする【聖騎士】を止める者が居た。金髪に猫目の少年と青年の中間辺りの男である。後ろ腰に四本の小剣を刺し、上半身には魔道具に分類されるベストを羽織った、比較的軽装備な彼は、肩を竦めながら【聖騎士】に言う。


「なにかあるならぼかぁ手伝うけどぉ?」


 一見普通の冒険者に見えなくも無い彼は、しかし一族最強の一角、SS級冒険者【閃影】である。猫目を細めつつ笑う【閃影】に、【聖騎士】もまた笑い、


「いやいや、貴方の手を借りる必要なんて無いさ。私一人で大丈夫だ、心配無用」

「そぉっかぁ、君がそういうならぼかぁ安心だねぇ。それじゃぁ、マーレに向かうとするよぉ」


 最後まで笑みを絶やさずに森の中へと歩を進めた【聖騎士】。

 背後を見守る【閃影】に、集まった冒険者の一人が話しかける。紺色のぶかぶかしたローブ、手には一六〇センチ大という自分の身長よりも高い、先に丸い宝玉が備えられた杖を持った少年。少女と言われればそのまま信じてしまいそうな程、愛らしい顔つきの少年の名はケートゥ。かつて、アラン、ジークらと共に【狂月】に付き添ったS級冒険者だ。


「あ、あの、本当に一人で行かせて大丈夫だったでしょうか? ひっ、あ、いえ、べ、別に、【聖騎士】様の力を信じて無いとかじゃないんですよぅ? た、ただ、僕は心配で……」

「分かってるさぁケートゥ、君は心配性だからねぇ。でも、彼が大丈夫といったんだぁ、ぼかぁそれを信じるよぉ」

「そ、そうですね。わ、分かりました。じ、じゃぁ、早くマーレに向かいましょぅ」


 にっこりと笑って頷き【閃影】は幾人もの冒険者を引き連れ、マーレに続く道を歩みだした。






 森の中を一人歩く【聖騎士】は、確かな目的を持って迷わず進む。背負った大剣は、つい最近までは持っていなかったものだ。良く見ると大剣は薄っすらと濁った七色を光を宿している。その大剣を、まるで宝を扱うように優しく扱いつつ、【聖騎士】は森の中を歩く。


 木々が密集した森の中。土を踏みしめ、枝を折りながら進んでいた【聖騎士】。

 不意に、パンッ! と破裂音が炸裂した。続けざまに破裂音が森の中で響く。【聖騎士】の額や、心臓に密集して破裂音が響いていた。


 一体何が起こっているのか。明らかに異常な現象が起きているにも拘らず、【聖騎士】はなんら気にした様子もなく余裕の表情だ。【聖騎士】は今まで動かしていた足を止め、周囲を見渡す。暫し間が空いた後、ある一点の方向へ視線を向けた。


「ふむ、成る程、こっちか。くくくくくっ、案内ご苦労」


 口元に浮かべるのは、先ほど冒険者たちに見せた柔和な笑みとは全く逆の、悪質な笑み。彼の本性が僅かに顔を覗かせる。その事に気付いた【聖騎士】は、片手で口元を覆うが、本性は隠せていない。喉の奥でくつくつと笑いつつ、歩みを再開させた。


 何度も、何度も。森の中では破裂音が響き渡っている。だがそれも、唐突に終わりを告げた。【聖騎士】がナニカした訳ではない。もう、なにかをする必要がなくなったからだ。【聖騎士】が辿り着いたのは、一つの洞穴。入り口は屈まないと入ることが出来ないが、中は存外広く、そして、生活感が溢れている。


 そこらに転がった空の酒瓶。剣や槍などが無造作に散らばっており、僅かだが異臭が鼻につく。【聖騎士】はぐるりと洞窟内を見渡し、今度は隠そうともせず満面の悪意の笑みを浮かべた。


「くくくくくく、今、そちらに行きますから、待っていてくださいね?」


 宙に投げ掛けた言葉に、当然反応は無い。だが【聖騎士】は笑みをさらに濃くするばかり。肺一杯に洞窟内の空気を吸い込んだ【聖騎士】は、背負った大剣を抜き放つ。


 両手に持った大剣の刃を慈愛の篭った動作で撫でた【聖騎士】は、ゆるりと目の前に敵が居るかのように構えた。大きく吸った息を吐き出し、静かに、肩の力を抜いた【聖騎士】は――――構えた大剣を無造作に振り下ろす。


 ズドンッ! と轟音が炸裂した。大剣から放たれる七色のエネルギー。刃の形をしたそれは、洞窟を削りつつ一直線に突き進む。あらゆる障害物を切り裂き、破壊したその先に、一人の青年が立っていた。


 昨晩、霧裂の頭を打ち抜き、瞬谷たちに夜襲をかけた青年と全く同じ格好で、同じ顔をした青年だ。彼は迫り来る破壊の刃を睨みつけ、両手に一つずつチャクラムを握り締める。


 青年はチャクラムを構えたまま七色の破壊を油断なく睨み、射程範囲に入ったその瞬間、青年の手を離れたチャクラムは刃のエネルギーとぶつかった。ゴバッ!! と鼓膜を破れんばかりの轟音が轟き、特大の爆発が起きた。爆炎と爆風が七色のエネルギーと相殺しあう。


 土煙が上がり、【聖騎士】と青年、二人の視界を覆い尽くした。【聖騎士】は口角を上げつつ、土煙の中を進む。邪魔だといわんばかりに、一振りした【聖騎士】の大剣が、土煙を消し飛ばした。


 二人の視界を邪魔するものはもう何も無い。

 青年と【聖騎士】は破壊された洞窟の中央で、真正面から相対する。


「やぁ、こんにちは――――【賊王】。探したよ」


 【賊王】と呼ばれた青年は、無言を貫く。

 【聖騎士】は肩をすくめながら、


「貴方の部下達は何処かな? 【賊王】には何百人も部下が居ると思ったんだが……」

「……」

「まぁ良いでしょう。貴方が警戒するのも分かる。私はSS級冒険者で、貴方はSS級賞金首だ。貴方の認識によれば、私は敵と言うことになる。だが……それは間違いだ」

「……」

「私は味方ですよ。貴方の力が借りたいのです。どうか、『正義』の為に、力を貸してくれませんか?」


 さぁ、と手を広げる【聖騎士】は、さながら新たな友人を迎え入れるようだ。事実、その通りなのだろう。ここで【賊王】が頷けば、【聖騎士】がありとあらゆる手段で【賊王】の罪を消し、味方へと引き入れるだろう。


 だが、今まで無言を貫いていた【賊王】は、口を開くと同時に首を横に振った。

 つまりは、拒否。


「悪いが……アンタの誘いには乗らねーヨ」

「何故です? 私は正義、この誘いを蹴れば貴方がどうなるかは分かる筈ですが? 正義は絶対勝つ、貴方は死にたいのですか?」


 心底不思議だというように、首を傾げる【聖騎士】に、【賊王】は忌々しそうに吐き捨てる。


「『数』は『力』、その通りだとおれぁ思う訳ヨ。お前は勝てねぇ」


 数といっても、【賊王】は一人だ。言葉の真意を読み取ろうとした【聖騎士】だったが、答えが視界に映し出された。

 目の前に、【賊王】が居た。それも一人や二人ではない。


 全く同じ姿をした【賊王】が、ゾロゾロと、その姿を現す。

 一人二人、一〇人、一〇〇人。圧倒的な数で、瞬く間に洞窟内を埋め尽くす。


「まだまだ増えるぞ。これがおれの力で、おれの自信ヨ」

「なるほど……ふむ、私からも貴方に言葉を送ろうか」


 数百人の殺気を放ち凶器を持つ男達に囲まれながら、【聖騎士】は変わらず余裕の態度で【賊王】に嘲笑と共に言葉を投げ掛ける。


「『ゴミ』が幾ら集まろうと、私の前では等しく無だ」


 絶対の自信。その自信の源は、【聖騎士】に宿る『神の力(チート)』。そして、『神の武器(贈り物)』。その二つの自信に加え、彼の信条となっている『正義は必ず勝つ』と言う言葉と、事実今まで負け知らずという経験。計四つの自信が、【聖騎士】の中に折れることの無い絶対の柱を作り上げている。


 余裕の【聖騎士】に対し、【賊王】もまた余裕。

 口角を吊り上げながら、挑発を返す。


「『塵』も積もれば『山』となるっつう言葉を知ってるか? 知らねぇからそんな口が聞けるんだとおれぁ思う訳ヨ」

「くくくっ、最後だ。私の前に平伏し忠実な奴隷となれ。それがお前の生き残る道だ」


 【聖騎士】は大剣を構える。

 【賊王】もまた、右手にクロスボウを、左手に短剣を構える。


「無知なお前に教えてやろう。俺が体現してやるヨ」

「正義は我が下にあり」


 【聖騎士】と【賊王】。SS級冒険者とSS級賞金首。『転生者』と『転生者』。

 二人の怪物の決戦は、人知れず森の中で火蓋が落とされた。

うーむ、なんだろう。この小説、主人公が絡まない場所で知らない間に強者同士がぶつかるの多い気がする……。

ともかく、【聖騎士】VS【賊王】、勝者はどっち!?

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